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風と炎⑤

 部下達が魔物と切り結ぶ中を俺とアデル陛下は駆け抜ける。

 時折り抜けて来る魔物を一蹴し、モーリスに肉薄する。

 しかし、今のモーリスは物理も魔法もほとんど効いていなかった。

 すれ違い様に【鋭き火種】を振るいモーリスの黒い肌を斬りつけるが、まるでミスリルでも斬っているかの様な感触だった。


「……硬いな」


 入れ違いになる様に飛び込んだアデル陛下はそっとモーリスに触れる。


「【風華:木枯し】」


 アデル陛下の触れた場所に強い衝撃波の様な物が放たれた。

 アレは確か南大陸の体術の一種だっただろうか。

 体内で圧縮した魔力を撃ち出す技が有ると聞いたことがある。

 周囲の建物や石畳を砕く程の衝撃だが、モーリスにはその巨体を僅かに揺らしただけであまり効いている様には見えない。


「硬いと言うのは違うね。まるで中身が詰まった砂袋を攻撃したみたいな感触だ。重いって言うのかな?」


 アデル陛下の言わんとしている事は何となくだが理解できる。


「蚕は、あのモーリスの成れの果ては神器を生成する際の魔力の凝縮過程を利用して作られたと言っていた。

 つまり生物の様に見えるが、その性質は神器に近いのかも知れません」

「どう言う事だい?」

「神器は魔力を扱う者の到達点です。その強度や性質は魔法と同じく術者の精神力に依存します。

 同等の練度の術師同士の神器を単純に比較すると、より精神力の高い術者の神器の方が強靭になると論文で読んだ事があります。つまり、あの体表の魔力構成は……」

「長い! もっと簡単に!」

「奴を形作っている魔力より強い魔力で攻撃すればダメージを与えられるかも知れません」

「わかった!」


 俺の推論を聞き、アデル陛下は突風で地面を巻き上げてモーリスの視界を遮った。


「グォォォオオ!」


 モーリスが滅茶苦茶に腕や足を振りまわし暴れ回るが、俺とアデル陛下は既に距離を取っているので、当たる事は無い。


「焼き尽くす猛火 真紅の吐息 命を飲み込む溶撃の熱波 炎熱纏いし我が名は火蜥蜴【灼熱の息吹】」

「打ち砕く疾風 斬り裂く吐息 命を飲み込む破撃の突風 旋風纏いし我が名は嵐鳥【暴風の息吹】」


 俺とアデル陛下は土埃が晴れると同時にモーリスを挟み込む様に上級魔法を放った。

 真っ赤な炎と荒れ狂う暴風を受けてモーリスの黒い表皮は融解し、斬り刻まれる。


「効いてる! ルーカス卿、このまま畳みかけるよ」

「お供しますとも、アデル陛下」


 貴族として、領主として生きてきた俺だが、今はまるで冒険者の冒険譚の様だ。

 仲間と共に強大な敵に立ち向かう。

 不謹慎だが、俺はアデル陛下と共闘するこの瞬間を楽しいと感じていた。


お久しぶりです。

ゆっくりですが、活動を再開したいと思います。

よろしくお願いします。

_:(´ཀ`」 ∠):

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