風と炎②
俺は手にしたフランベルジュ型の神器【鋭き火種】を手にアデル陛下や騎士達と共にオーキスト殿下達に群がる魔物の群れに切り込んだ。
【鋭き火種】は神器としてはスタンダードな物だ。
貴族が一族に伝わる秘伝で会得する神器は、画一的な効果になりやすい。
Aランク冒険者のエルザやエリー殿の様な特殊な効果を持つ神器とは違い、身体能力の上昇と魔法適性が有る属性を強化する様な効果を得ることが多いのだ。
俺の神器も例に漏れず、炎の強化と操作、身体能力の上昇の効果を持つ。
だが、それがエリー殿の神器に劣るのかと言うとそんな事はない。
要は神器をどれ程使いこなせるかの問題なのだ。
貴族の多くは神器を習得したと言う看板を得たらもう修練なんてしない。
身を護るのは護衛の仕事なのだから貴族本人が強くなる必要など無いと言う考えだ。
勿論、それは間違いなどでは無い。
だが、俺は常に修練を続けた。
木っ端貴族でしかなかった俺が栄達する道は武勲を上げるのが1番可能性が高い。
ハルドリア王国との国境の領地を任される様になってからは尚更鍛錬を積んだ。
その努力は決して俺を裏切らない。
【鋭き火種】の波打つ刃から立ち上る炎が剣を振り抜く度に剣線に乗って魔物を焼いていく。
更にアデル陛下が拳を放つと暴風の様な風が魔物を吹き飛ばす。
そしてその風を受けて俺の炎が更に勢いを増し、火災旋風となり魔物の群れを焼き尽くした。
「はっ!」
硬い攻殻を纏った魔物を焼き切った時、建物の影から不意に飛び出してきた悪魔の剣が迫る。
「む⁉︎」
咄嗟に【鋭き火種】の柄を上げて剣を弾き、刃を翻して上段から振り下ろす。
しかし、悪魔は身を捻り燃え盛る波刃を躱す。
「レッサーデーモンではないな」
「我は子爵一位、モーリス・バルトだ」
「エリー殿が言っていた爵位持ちの悪魔か」
視線だけを向けると、アデル陛下や騎士達の多くも爵位持ちらしき悪魔と対峙している。
オーキスト殿下は距離を取れた様だが、俺たちは悪魔達に囲まれてしまった。
俺はアデル陛下と背中を合わせて構える。
「なかなか危険な展開になってきましたね」
「ふふ、ボクは少し楽しいかな」
アデル陛下は楽しげに笑う。
まぁ、その気持ちも分からないではない。
俺はアデル陛下と同時に動き出し、目の前の悪魔へと剣を振り下ろした。




