辺境からの急報
誤字報告ありがとうございます。
m(_ _)m
商会の支部を兼ねる帝都の私邸で次々に書類を仕上げていた私は、キリの良い所でグッと伸びをした。
「エリー様、珈琲をお持ちしました」
「ありがとう、ミーシャ」
機嫌よさそうに尻尾を揺らしながらミーシャが珈琲を淹れてくれた。
「ルノアとミレイも休憩にしましょう。
ミーシャも休むと良いわ」
私はそれぞれ書類と格闘していた2人と追加の珈琲を用意していたミーシャに声を掛けた。
「帝都での商いも順調ですね」
「そうね。事前にパーティで影響力のある人達に宣伝出来たから、随分と楽が出来たわ」
新興であるトレートル商会の弱点である生産力に関してもある程度解決の目処が立っている。
それとなく生産力の不足を口にしていた事で、複数の貴族から資金提供の話が来たのだ。
コレは正直助かる。
帝都に出てきて大きな買い物が続き、かなり資金が減っていたが、この資金提供のお陰で更に事業を展開することが出来た。
レブリック子爵領の東側の田舎にトレートル商会の生産の拠点となる場所を作る事が出来たのだ。
狩猟と僅かな農耕で暮らしていた小さな村をまるまる雇い入れて、化粧品の材料となる植物の栽培、加工を一手に行う生産拠点を作っている。
これが完成すれば生産コストを抑えて庶民用に安価な化粧品を作り出す事も可能だ。
「ふぅ、さてミーシャ、この後の予定はどうだったかしら?」
「は、はい、この後はブレン商会のブレン会長と会談、その後は商館の視察、夜にはナッバ子爵様との会食の予定です」
ミルクと砂糖をたっぷり入れた珈琲をふーふーと冷まして飲んでいたミーシャが慌てて手帳を取り出して答えた。
「ブレン商会ですか。そろそろ保たなくなって来たのでしょうか?」
ルノアが小首を傾げて聞く。
ミーシャと同じ歳である少女だが、意外にも彼女はブラック派らしく、ミルクも砂糖を入れずに美味しそうに珈琲を飲んでいる。
「そうね。ブレン商会は主に口紅を作っている商会だけどそこまで大きくは無いわ。
私達と競合して売り上げが激減している筈よ」
「では後は何時もの様に?」
「ええ、恭順するのなら傘下に加えましょう」
帝都に来てからそれなりの暗闘が有った。
早々に白旗を揚げて傘下に加えて欲しいと言ってきた商会や自身の商品の品質向上やサービスの強化に努めた商会は正統派だ。
中にはトレートル商会の商館改装を妨害しようとしたり、商品にクレームをつけたりして来る者、酷い物だと私の暗殺を企てていた者も居た。
前者は別として、非合法な手段でトレートル商会に攻撃して来た商会には消えて貰う事になったが、その販路やまともな従業員はしっかりと回収、それによってトレートル商会が更に大きくなった結果、努力によって対抗しようとしていた商会もトレートル商会の傘下に加わったり、拠点を帝都から別の地方へ移したりと言った対応をせざるを得ない状況となっていた。
今日のブレン商会もおそらく降参宣言だろう。
「ナッバ子爵との会食は私とルノアの2人でいくわ。
ミレイ、手土産の用意をお願いね」
「はい」
「畏まりました」
最近では地方に領地を持つ貴族から自領にも支店を置いて欲しいと言われる事が増えた。
受ければ税や商館にする土地なども優遇してくれると言う話も多い。
今は帝都の足場を固める為、断って居るが、将来的には大きな貴族領には支店を置いておきたいと思っているので、貴族との付き合いも保っておかなければならない。
「あの……本当に私が一緒に行って良いのでしょうか?」
「ええ、ルノアは将来はトレートル商会の幹部として活躍してもらうつもりだから、今の内に貴族への対応に慣れておきなさい」
私は残りの珈琲を喉へと流し込む。
「さぁ、残りの仕事を終わらせましょうか」
こうして、帝都で順調に勢力を増していた私達だったのだが、その知らせは唐突にやって来た。
「エリー様!」
執務室の扉を慌てた様子のミレイが飛び込んで来た。
その様子にルノアとミーシャも目を丸くする。
「ミレイ?何かあったの?」
ミレイが息を切らせてノックも無しに入室するなんて、余程の事が有ったに違いない。
「さ、先程の急報が入りました。
サージャス王国が帝国に宣戦布告、軍を率いてレブリック子爵領へ侵攻を始めました!」
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