前哨戦⑤
なんとか人の形の体を成してはいるが、見る者に生理的嫌悪感を抱かせるフリードのその姿は、正に異形と呼んで然るべき物だった。
体躯が一回り程大きくなり、身に着けていた物は腰布以外が千切れ飛んでおり、そこだけギガンテスの物と付け替えたかの様な左腕が、大きくなった筈の体躯を小さく見せる。
右腕は常に帯電しているのか、時折紫電を走らせながら自らの皮膚を焼き尽くし、焼けた端から回復していた。
そして……。
「うぅ……な、なんでこんな事に……すまない……許してくれ……エリザベート……俺は、俺はどこで間違えたのだろうか……」
ずっと嘆きと後悔を口にしているブラート。
そのブラートの顔が有るのがフリードの胸の辺りだ。
「な、なんだよ、アレ……」
「人間同士を合成したって事ッスか。女神様に代わって神罰を下す必要があるッス」
その不気味な姿に息を呑むシスティアと、命を弄ぶ行為に怒りを見せるティーダ。
「すまない……エリザベート、俺たちを殺してくれ」
「嫌だ!馬鹿な事を言うな!俺を元の姿に戻せ!早くしろ!エリザベート!」
「もう無理だ、フリード。諦めろ……あの蚕とか言う者が言っていた。もう元には戻れん。このまま苦痛を受け続けるくらいなら死んだ方がマシだ」
「だまれぇぇええ!!!俺は王子だぞ!王太子だ!何故こんな目にあわなければがぁぁあ!」
「うぐぅ……」
何かしらの痛みを感じたのか、フリードが悲鳴を上げ、ブラートが奥歯を噛んで堪える。
「はぁはぁはぁ、エリザベート!お前の所為だ!お前が居なければこんな事にはあぁぁあ!!!」
「くっ、みっともないぞ、フリード。これしきの苦痛で悲鳴を上げるな!」
「黙れれれれれれれ!!!!!おおおおおおまお前もだぁぁあ!!お前が余計な事をしなければ帝国に勝てたんだ!」
「ぐごぉ」
フリードは自らの胸に有る父の顔を全力で殴り付けた。
顔だけしか無いブラートは抵抗する事など出来る筈もなく、すぐに血塗れになってしまう。
しかし、ブラートの顔はブラートで有ると同時にフリードの胸でも有る。
帯電する拳で全力で殴り付けた事で、フリード自身が感電し、身体を傷つけて行く。
胸のブラートを散々殴り付けたフリードだったが、僅かに拳が止まると、まるで時を戻したかの様に傷が消えていった。
「くそ!くそ!くぞぉぉお!!!」
地団駄を踏むフリードを冷たく見ながら私は言う。
「邪魔だから退きなさい。今は貴方達ごときに構っている暇は無いのよ」
「うるさい!早く助けろ!そうだ!俺を助けたらお前を俺の妾にしてやる!子種も恵んでやろう!さぁ、俺を助けるんだぁあ!!!」
驚く程私にメリットの無い提案だった。




