前哨戦④
「エエエエリザベーーーーートォォオ!!!お、お、おま、おまおまおまお前の所為でぇぇえええ!!!」
唾を散らしながら吠えるフリードは、発狂した様に頭を掻きむしりながら私を睨みつける。
その目には理性の光が見て取れるが、それでいて自らの感情を全くコントロール出来ている様には見えない。
非常に不自然な状態だ。
おそらく、本来なら発狂してしまう様な精神状態を魔法で無理やり正常な状態に固定しているのだろう。
発狂すると言うのは、ある意味では自分の精神を守る為の防衛行動だ。
それが出来ないとなると、フリードは今、発狂する程の苦しみを正常な精神で受け続けていると言う事になる。
「まぁ、別に良いのだけれどね。
そこを退きなさい、フリード」
「あが、いぎぃいい!!痛い痛い痛い痛い痛い痛い!た、助けて!助けてくれ!アガがが……」
フリードはひとしきり苦しみ出すと、ふと、表情を落ち着かせて再び此方に睨みつける。
「おい!エリザベート!何をしている!早く俺を助けろ!命令だ!」
「急に元気になったぞ?」
「多分、精神を固定されているのではなくて、一定以上のダメージを負うと回復するのではないでしょうか?」
「うわ、エゲツねぇな」
フリードの異変にすぐ後ろのユウ達が考察しているが、今は時間が惜しい。
フリードなどに構っている暇はないのだ。
私は縮地で踏み込むと同時に、フリューゲルを振る。
フリードは全く抵抗する様子を見せず、その首を地面へと落とす。
「さて、何がしたかったのかは分からないけど、私の邪魔をするなら貴方達も殺すわよ」
私はフリードの死体を一瞥する事なくグレナムと梟を睨みつける。
しかし、2人の表情は変わらない。
「エリーさん!!」
「っ⁉︎」
ユウの声に、私は咄嗟にその場を飛び退いた。
すると、私が居た場所に首の無いフリードの身体が雷を纏った拳を振り下ろしていた。
「バカな⁉︎アンデッド⁉︎」
「ち、違うッス!アンデッドじゃないッスよ!」
切断されたフリードの首と身体の断面から触手の様な物が伸びて絡まると、落ちていた首が引き上げられて再び胴体とくっついてしまった。
「あばばばば!!エェェエリザべート!!!」
「どうなっているの⁉︎」
私の問いに答えたのはグレナムだった。
「ウチの錬金術師の作品でな。
色々と混ぜられたそうだぞ」
「錬金術?キメラという事か」
私達が武器を構えてフリードを取り囲もうとすると、フリードの体が膨張し、悲鳴を上げながら歪な異形へと姿を変えた。
「これで正気を失う事も出来ないってんだから怖ぇ話だよな」
グレナムは他人事の様に言った。




