前哨戦②
ナイル王国の門は外から見た通り、門兵も居らず我々を素通りさせた。
そのまま無人の大通りを広場まで進み、そこで騎士達を隊に分けて魔物と悪魔の排除を始める私達と、エリー嬢達に別れた。
私はこの広場を拠点に決め、10人編成の小隊に分けた騎士達を送り出した。
この場に残っているのは私とルーカス辺境伯、アデル陛下と、治癒魔法に長けた騎士が数人だけだ。
小隊が街に散らばると、戦闘音が響き始める。
「グルァァア!!」
「魔物か」
「はい、殿下はお退がり下さい」
「……まぁ、仕方ないか」
此処は大人しく退がるべきだろう。
私はルーカスの指示に従い魔物から距離を取った。
私が今回の遠征に志願したのは、この戦いが大陸の命運を賭けた物だから。周りにはそう言っているが、その実、私はこう言った冒険に憧れていた。
勿論、大陸を、民を護りたいと言う気持ちが1番大きな物だ。
だがこの状況に興奮を覚えている事も事実だ。
しかし、自分の立場も理解しているので無理は言わない。
大人しく守られるしか無いのだ。
現れた魔物は二足歩行の狼、ワーウルフだ。
残っている騎士達を私の護衛に回したルーカス辺境伯とアデル陛下が迎え撃つ。
鋭い爪と強力な牙で襲い掛かるワーウルフだが、ルーカス辺境伯は巧みな剣術で、アデル陛下は流麗な拳法で迎え撃つ。
ワーウルフの爪を剣で弾いたルーカス辺境伯は、素早く放った斬撃で両腕を斬り飛ばし、痛みで怯んだ所で首を斬り落とす。
アデル陛下は自らの喉を噛みちぎろうとするワーウルフの牙から身を引く事なく、逆にワーウルフの口に膝を叩き込む。
魔力を纏った肘打ちで牙を折られたワーウルフがタタラを踏むと、アデル陛下は素早く腕を取り、腰の上に乗せる様に投げ飛ばし全身の骨を砕いた。
「ふぅ、小隊の撃ち漏らしかな」
「そうだね。それにしてもルーカス殿は良い腕をしているね」
「はは、私は元々、下位貴族の生まれですからね。
将来は騎士になるつもりだったのです」
そんな会話をする側、2人は更に3体のワーウルフを討伐していた。
「っ⁉︎殿下!」
護衛の声に振り返ると、背後の建物の影から8体のワーウルフが飛び出して来た。
「なるほど、前方の奴らは囮か」
私は剣を抜きながらこちらに戻ろうとするルーカス辺境伯とアデル陛下を手で制した。
「ふむ、自ら敵陣に乗り込む訳には行かない立場だが……向こうから来てくれるなら話が早い」
私は護衛の騎士の隙間を抜けた2体のワーウルフと対峙するのだった。




