前哨戦①
ナイル王国の大門を目の前にして、私は周囲の者達に視線を向けた。
今回、私達は大きく3つの班に分かれている。
外に逃げ出した悪魔や魔物を狩るフラウと、王都の目の前に作り出された砂の城で待機する治癒魔導師や薬師達。
ユウの弟子であるリリも居る。
王都に蔓延った悪魔や魔物を倒し、生存者が居れば保護するオーキスト殿下やルーカス様、アデルと騎士達。
アデルの子飼いの2人もこの班になる。
そして私達がイーグレットが居ると思われる王城へと乗り込む班だ。
私達がナイル王国に来てからと言う物、挑発するかの様にイーグレットは何度か魔力を放っていたので、居場所は間違っていないだろう。
私は同じ班になっている者達の中でも一部に視線を向けた。
「本当に行くつもりなの?」
「はい、絶対に行きます!今度こそ私はアリス様を助けて見せます!」
「わ、私も戦います!」
そう言うのはミーシャとルノアの2人だ。
彼女達は帝都で待っていて貰う筈だったのだが、どうしてもと言って聞かなかった。
せめて砂の城でリリと共に残って欲しかったのだが、2人の決意は固い様だ。
「…………2人共、死ぬ事は許さないわよ。ミレイ、いざとなったら2人を連れて離脱しなさい」
「畏まりました」
2人は常に鍛錬を積んできた。
そこら辺の冒険者もどきのチンピラでは相手にもならない。
だが、今回の相手はイーグレットだ。
あの男がどんな手を使ってくるかは不明だが、生半可な戦力ではないだろう。
2人とミレイには離脱用の【転移】のスクロールを渡してある。
私は腰のフリューゲルや左腕の小手、腰に吊るした【暴食の魔導書】など装備を点検し、装備の確認を指示していたオーキスト殿下と視線を交わした。
オーキスト殿下は皆の確認が終わった事を認めると、号令を出した。
「さて、行きましょうか」
◇◆☆◆◇
遠く門の方から魔物の叫びや兵士たちの雄叫びが聞こえるナイル王国の謁見の間で、王座に足を下ろした青年。
魔族やエルフ、獣人など、複数の種族の特徴をその身に宿した男、イーグレットが口の端をニヤリとあげる。
「思ったよりも早かったね、エリー」
イーグレットは目の前、数段下に膝を突く配下に声を掛ける。
「それで、蚕。アレはどうなった?」
蚕と呼ばれたのは老齢に差し掛かる魔族の男だった。
長命種族である魔族であり、見た目にも老人と呼ぶべき男は相当な年月を生きたのだろう。
色を失った白髪と枯れ木の様な手足をしている。
しかし、その瞳は狂気と愉悦を滲ませ、爛々と輝いていた。
「上々ですな。素質だけなら若が今まで持ち帰られた『土産』の中では群を抜いておりまする。
本人はただただ怠惰で愚かですが、その血に眠る力は本物でした。オマケに壊れかけとは言え、あの《雷神》まで持ち帰って頂いたのですから、腕がなると言うものですじゃ」
「くっくっく、では早速使ってみるとするかな」




