精霊城
サロンから会議室に場所を移した私は、呼び出したユウと対面していた。
「ユウ、確か貴女は勇者ヒロシ・サイトーの事に詳しかったわよね?」
「詳しいと言う程では有りませんが、大陸の人達よりは知っていると思いますよ?」
「じゃあ、魔神戦に関しては知っているのかしら?」
私が問うと、ユウは少し驚いた様な顔をしてから頷いた。
「ええ、知っています。
エリーさんこそ、良く知っていましたね。
日ノ本列島王国の人でも簡単なさわりくらいしか知らない話ですよ」
「私もそう言う戦が有ったと言う事しか知らないわ。
魔神戦には勇者ヒロシ・サイトーが関わっていて、魔神が最後にはこの世界とは別の場所にある精霊城に封印されたって事だけ」
「わたしが知っているのも大体同じですね。
でも、何で今その話を?」
私が窓から見える空の亀裂に目を向けると、ユウは察してくれた。
「まさか⁉︎あの亀裂が……」
「確信はないけど……当時の資料によると、あの亀裂の先に精霊城がある可能性が高いわ」
「では、このままでは魔神が復活してしまうのですか?」
「ええ、そして古王国の文献によると、精霊城の奥には天界に続く扉が有るらしいわ」
「天界に続く扉……イーグレットが言っていたと言う天界門の事でしょうか?」
「予想だけどね。それで、ユウを呼んだのは当時の伝承を何か知らないかと思ったのよ」
「そうですね。確か……当時、魔族王を倒した勇者ヒロシ・サイトーは、故郷を失った人々や迫害された魔族を率いて日ノ本列島王国を作った頃でした。
その頃、魔王の残党が古の時代に封印された魔神を復活させたそうです。
勇者ヒロシ・サイトーは、当時妊娠していた妻を残し、魔神討伐の為に立ち上がったのです。
その時、共に戦った仲間が4人居ました。
精霊達の王、ユグドラシル。
魔王の娘、エルシア。
イブリス教の聖女、スーリス。
そして、若き悪魔、アルトロス」
「悪魔ですって⁉︎」
「はい、魔神の力は強大で、魔界ですらその脅威を無視できなかったそうです。
そこで、若い悪魔の戦士が人間界に現れて勇者ヒロシ・サイトーと共に戦ったと伝わっています」
悪魔……アルトロス。
「アルトロス・イザリース」
私の脳裏にはあの紳士然とした悪魔の姿が浮かんでいた。




