1500年前の伝記
「何なの、アレは?」
空の亀裂を唖然と見上げる私達だったが、何処かこの光景に覚えが有る気がする。
何処かで見た……いや、読んだ物か?
「【傲慢の魔導書】」
もし何かの書物で読んだ物なら【傲慢の魔導書】に記録されている筈だ。
「エリー嬢?」
「オーキスト殿下、少々調べ物を致します」
「そうか……分かった、何か分かれば教えてくれ」
そう言って静かにサロンを出て行くオーキスト殿下とルーカス様。
話したい事も有るだろうが、今は時間をくれるつもりの様だ。
「古代王朝時代の史記でもないか……」
【傲慢の魔導書】を閉じ、内容を別の書物に変えて再び開く。
ハルドリア王国の禁書庫の一冊だと思うのだが、詳しい内容は覚えていない。
【傲慢の魔導書】の発動条件は、【傲慢の魔導書】に触れながら記録したい書物の内容を視界に入れる事であり、私自身が全ての内容を覚えている訳ではない。
「ふぅ」
新たに一冊、古王国の歴史家の手記を読み終えた私は、深く息を吐き出した。
「エリー様、少しお休み下さい」
「ミレイ?」
いつの間にかサロンにやって来ていたミレイが私の前に珈琲を差し出した。
外に目を遣ると既に日は沈み始めていた。
もうこんな時間か。
随分と読み耽ってしまった様だ。
「何か分かりましたか?」
「いいえ、確かに読んだ事がある筈なんだけど……」
「アリスの事は心配ですが、エリー様が無理をして体調崩してしまってはいけませんよ」
「……そうね」
ミレイが用意してくれた珈琲と軽食を摂り、休息を挟んだ私は、再び古文書を漁り始めた。
そして、数冊目。
「あった!」
それは1500年前に書かれた伝記の片隅に少しだけ触れられた物だった。
「コレは…………ミレイ!」
「は、はい!」
私が呼ぶと、隣の使用人用の控室に待機していたミレイがサロンに飛び込んで来る。
「ユウを呼んで頂戴」
「畏まりました」




