目的は
「説明ねぇ?見てわからないかい?
君達は俺の手の上で随分と愉快に踊ってくれたからな。お別れの前にこうして挨拶に来たのさ」
笑いを堪えながら言うイーグレットにやれやれと言わんばかりのグレンが肩をすくませて前に出た。
そして兜を取って素顔を見せた。
「悪いな、エリー嬢。俺達には俺達の目的がある。
その為にアリスは貰って行く」
見覚えが有る。
サージャス王国の一件でやけに練度の高い傭兵達を率いていた男だ。
「そう、最近の一件は貴方達が暗躍していたと言う事ね。
アリスは渡さないわ。死にたく無ければ直ぐにこちらに渡しなさい」
「マ、ママ?」
アリスは訳が分からないと言う表情で私とイーグレットの顔を見比べ、私の方に来ようとするが、イーグレットに腕を掴まれているので逃げ出せないでいる。
「あら、暴れたらダメよ」
ベールの女がアリスの顔に手をやると、アリスは全身の力が抜けた様に動かなくなった。
魔法で眠らせたのか。
ふざけた格好をしているが、無詠唱で事前の気配もなく魔法を使うとは、先程の転移と言い、相当な実力者である事は間違いない。
「アリスを連れて行ってどうする気?
あとついでにそこに転がっている奴らも」
「目的はアリスだけだよ。
コレは人造精霊、女神の雛形だ。
俺はコレを使って天界門を開く。
この俺が!新たなる女神を作り上げるのさ!」
イーグレットは普段の冷静さが嘘の様に興奮して捲し立てた。
人造精霊?
天界門?
何を言っているのか分からないが碌でもない事だとはわかる。
イーグレットは足下に転がるフリードの頭を踏みつける。
「コイツらはまぁ、オマケだな。せっかくあの《雷神》とその息子が居たんだからちょっとイジってみようかなってさ」
「その2人はどうでも良いけどアリスはダメよ」
「それは無理な願いだな」
イーグレットは肩をすくませる。
「3ヶ月だ」
「…………」
「3ヶ月後、アリスを触媒にして天界門を開く。
アリスの命を助けたいなら、ナイル王国に来い」
「随分と親切なのね。わざわざ居場所まで教えてくれるなんて」
「此方にも事情が有ってね」
「3ヶ月……ね。でもそれは今すぐでも良いのでしょう?」
私は鋭く踏み込むとイーグレットの首を狙ってフリューゲルを振るう。
しかし、完璧に捉えた筈の刃がイーグレットの首を素通りしてしまう。
「幻影⁉︎」
イーグレットの姿が霞んで消えると、別の場所から再び姿を見せる。
「じゃあ、そろそろ失礼するよ。また3ヶ月後に会おう」
「待ちなさい!」
直ぐ様斬りかかるが、ベールの女の足下から這い上がった影がイーグレット達を包み込み、その姿は消え失せたのだった。
ギリッ!
悔しさで私の奥歯が音を鳴らす。
「イーグレットぉぉお!!!」
私の怒りに呼応する様に魔力が冷却となりハルドリアの王城を包み込んだのだった。




