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イーグレット

 サロンでオーキスト殿下やルーカス様とブラートやフリード達の移送計画を話し合っていると、新たな人物がサロンに足を踏み入れて来た。


「やぁ、エリー」

「イーグレット?何故此処に?」


 イーグレットはレクセリン砦で契約が切れた後も、帝国軍付きの商人として同行を希望し、ハルドリア王国までついて来ていた。

 将来的にハルドリア王国領まで手を伸ばしたいらしい。


 オーキスト殿下の許可を得たイーグレットは、軍人を相手に酒や嗜好品などを売りながらハルドリア王国に来て、この地の商会や今後もある程度の地位を保障された下位貴族を中心に顔繋ぎをしていると聞いていた。


 だがこの場には皇太子殿下であるオーキスト殿下や率いている帝国軍の中心的な人物であるルーカス様、あと一応、ハルドリア王国に詳しい臨時文官である私、と重要人物が揃っている。

 イーグレットは、そんな所に何の前触れもなく訪れることの出来る地位ではない。

 サロンの入り口には見張りの兵士もいた筈だが、入室の伺いも無かった。


 不審な様子に私とルーカス様は立ち上がりオーキスト殿下を庇う様にイーグレットと向き合った。


「何の用かしら?事前に来訪の知らせは無かった筈よ」

「くっくっく、突然済まないなエリー。君に会いに来たんだよ」

「…………どうしたのイーグレット?貴方おかしいわよ。

 オーキスト殿下の御前で不敬でしょう?」


 訝しげな視線を向けながらイーグレットに言うと、今までイーグレットの影に隠れていた小柄な人影が前に出て来た。

 イーグレットと手を繋いでいるのは金色の髪にリボンを結んだ赤と青の瞳を持つ少女。


「ママ〜!」

「アリス⁉︎なんでイーグレットと?」


 訳がわからない。

 城の部屋で待っている筈のアリスが何故この場に?

 今日はルノアとミーシャに用事を頼んだし、ミレイも私の補佐をする仕事が有ったのでアリスは1人だった。

 だが信頼できる帝国の女騎士と侍女を付けていた筈だ。

 彼女らが私の許可なくアリスを出歩かせるとは思えないし、勝手に抜け出す様な子では無い。


「エリー、君には感謝しているんだよ。

 失敗作だったコレに君が魔力を叩き込んでくれたおかげで漸く使い物になる個体が出来たのだからな。

 やはり君には『イブ』の素質が有ったんだね」

「何を言っているの?…………イーグレット、アリスをこちらに返して」

「『返して』?コレは元々俺の所有物だよ。

 やっとの事で完成した人造精霊だ。

 手放す筈がないだろ?」

「人造……精霊?」


 何を言っているんだ?

 それではまるでイーグレットがアリスを創ったとでも言っている様ではないか。


 嫌な汗が背中を冷やす。

 瞬間、私は【強欲の魔導書】からフリューゲルを取り出して抜き放った。


「最後よ、イーグレット。アリスを離して」

「くっくっく、断る」


 イーグレットの背後の空間に不自然な影が伸びると、そこから滲み出る様に娼婦か踊り子の様な薄着に黒いベールで顔を隠した女が姿を見せる。

 更にその後に続く様にグレンとオウル、前にレクセリン砦で見たモンスターテイマーの女、百足と名乗る男が次々と現れる。

 その上彼らの足下には気を失ったブラートとフリードが転がされていた。


「どう言う事?説明しなさいイーグレット!」

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