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幽閉された雷神

 その日、私は帝国に雇われてハルドリア王城の一室で見張りをしていた。

 この部屋は特殊な構造らしく、中では魔法が極端に使いづらくなっている。

 更には腕と両足、首に魔力を封じる枷をつけられた男がこの部屋に幽閉されている。

 その上、Aランク冒険者である私、エリーの配下のバアル、帝国軍の精鋭騎士5人の計7人が室内で監視している。

 それでも目の前の男を相手にするとどうなるかは分からない。

 男の名はブラート・ハルドリア。

 この城の元主人であり、大陸でもトップクラスの実力者だ。

 片腕を失った今でも本気で戦えば私達でも危ない。


「ちっ、とっとと残りの手足を切り落としとけば良いじゃねぇか。なぁエルザの姉ちゃんよぉ」


 バアルがめんどくさそうにそう言った。


「そう言う訳にはいかないだろう。

 抵抗もしていない王族相手に下手な手傷を与えるのは帝国的に不味いのさ。

 王族を裁くには皇帝陛下の沙汰を受けなければならない。

 国際法やら条約やら、お貴族様には色々有るらしいからな」

「お嬢を裏切った奴なんてどうなっても良いだろ?逃げ出そうとして抵抗したって事にすれば良い」

「無茶を言うなよ。私は雇われの冒険者だぞ。

 君だってエリーには手をだすなと言われているんだろ?」


 私が宥めるとバアルは不機嫌そうにブラートを睨み付けた。


「お前ら、そう言う話は俺に聞こえない様にしろよ」

「ちっ!話しかけんなよクソ野郎。お嬢に止められて無かったらテメェを殴り殺してやるってのによぉ」


 ソファに腰掛けたブラートが苦笑しながら言うと、バアルの機嫌は更に悪くなった。


 ブラートは捕らえられてからは大人しくこの部屋に幽閉されている。

 その為、私達が監視しているのだが、噂の《雷神》にしては随分と大人しい。


「失礼するよ」


 扉の外に居る兵から取り次ぎがあり、アデルが面会に訪れた。

 アデルは監視付きではある物の、城内では自由に行動出来ている。

 腕には魔封じの枷が嵌められているが、そこまで強力な物ではなく、神器を使えなくする程度の物だ。


「アデルか」

「ご気分はどうですか、父上」

「悪くは無いな…………アデル、済まなかった」

「…………」

「俺は……間違っていた。あの時、フリードの成長に期待して自由になどさせるべきではなかった。

 あの時、さっさとフリードを廃嫡して辺境に押し込めておけば良かった。

 あの時、フリードを捕らえて帝国に詫びるべきだった。

 あの時……エリザベートに全てを押し付けるべきではなかった。

 俺の……俺の不徳でお前まで巻き添えにしてしまった」

「今更ですね。父上」

「ああ、今更だな」


 その後、しばらくアデルはブラートと何かを話していた。


 チラリと鉄格子のハマった窓を見ると、もう昼を過ぎている。

 たしか今日は裁判で有罪になった罪人が帝国に送られる日だったか。

 数日後には皇太子殿下と共に私達もブラートやフリードを帝国に移送する仕事が待っている。

 この長かった戦争もようやく終わりが見えて来たな。


「あらあら、皆さんお揃いで」

「「「っ⁉︎」」」


 不意に聞こえた聞き慣れない声に、反射的に剣を抜き構えた。

 周りも同じ様な反応だ。


 見れば部屋の隅、ちょうど影になった辺りにいつの間にか女が立っていた。

 薄布を何枚も重ねた踊り子か娼婦の様な扇情的な服を身に付け、顔を黒いベールで隠した女だった。


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