嵐の前夜
「では本日はこれで閉廷とする」
謁見の間に机を運び込み作られた簡易法廷で、裁判長役をしていたオーキスト殿下が告げる。
この簡易裁判は裁判と銘打ってはいるが、実際には事前会議で大体の処分内容は決まっている。
私も帝国に雇われた臨時文官として参加している。
義勇軍は終戦と共に解散となっているが、オーキスト殿下にハルドリア王国の内政に明るいと言う理由で雇われたのだ。
義勇軍を構成していた冒険者や傭兵達の一部はそのまま帝国に護衛として雇われてこのハルドリアまで同行している者もいた。
本日の裁判では戦争に参加していた貴族家に、その責任の度合いによって賠償金を請求したのが殆どだ。
更には殆どの貴族家の当主が強制的に隠居させられ、次世代へと代替わりする事になる。
中にはフリードに従い、ユーティア帝国の都市での虐殺に関わった者もおり、そんな者達は連座で家族纏めて処刑が決まっている。
そしてシルビアの裁判も今日終わった。
やはり、事前の予定通り多額の賠償金を請求される事になったが、シルビアの私財は殆どなく、犯罪奴隷となる事が決まった。
明日には鉱山に向けて送られるそうだ。
簡易法廷でも泣き叫び許しを願っていたが、ゴメンで済んだら騎士団は要らない、と言う奴だ。
私に向かって必死に許して、助けてと言って来たが、この裁判は、別に私が報復としてやっている訳ではなく、犯した罪を裁かれているだけなのでどうする事も出来ない。
私に出来たのは帝国で1番規模が大きく、犯罪奴隷の数も多い鉱山に行く様に会議を誘導する事くらいだった。
ブラートとフリードはこの戦争の主犯なので、アデルを含めてユーティア帝国の帝都で皇帝陛下から沙汰をうける。
帝国から連れて来た代官に政務を引き継いだら、2人と将軍級の戦犯を帝国に移送する仕事が待っている。
フリードは兎も角、ブラートの移送にはかなりの戦力が必要となる。
アデルに捕らえられたブラートは随分と大人しくしているそうだが、本気になれば逃げ出す事も不可能では無い。
今も、帝国軍の精鋭やユウやエルザなどの腕利きが交代で見張りに付いている。
「ふぅ」
「お疲れだな」
王城のサロンで今日の裁判の結果の一覧を見ながらため息を吐き出していると、ルーカス様とオーキスト殿下が入ってきた。
「オーキスト殿下とルーカス様もお疲れ様です」
「やはり戦後処理は大変だ」
「そうですね、殿下。ですがエリー殿のおかげで政務の引き継ぎはかなり進んでいますよ」
「そうだな。アデル殿も協力的だからな」
それから私達は幾つかの相談事を話し合った。
簡易裁判が終わった今、ようやく戦争のゴタゴタが終わろうとしていた。
この時、私達はそう思っていたのだ。
まさかこの翌日、私の運命を大きく変える事件が起こるとは、夢にも思わなかったのだ。




