シルビアの今後
シルビアは怯えた目で自身の扱いを私に尋ねる。
なので私も目の前で崩れ落ちて泣いているフリードから視線をずらしてシルビアを見る。
いつも男を侍らせていた美人だった筈だが、地下牢での生活で随分とやつれている。
どちらかと言うと精神的な負荷が大きいのだろう。
目の下にも大きな隈が出来ていた。
「貴女は関係無いわよ」
「え?」
「貴女はフリードの婚約者だけど、王太子妃では無いわ。王家の責任とは無関係よ」
「……本当に?」
「本当よ」
シルビアは気が抜けた様な顔で聞いてくる。
「貴女はフリードの婚約者だから拘束されているだけよ。簡易裁判で王国の侵攻に関与していないと認められれば解放されるわ」
私がそう説明してあげると、シルビアは少し精神的に余裕が出来たのか、蒼白だった顔にも赤みが戻り始めている。
「……ただし、ロックイート男爵家はもう存在しないわよ」
「え?」
「ロックイート男爵はフリードと共に従軍していたわ。前線には出ずに王国内で物資の管理をしていたみたいだけど、私達が王都に向かっている時に捕縛しようとすると逃走しようとしたから私が殺したわ」
「え?え?お、お父様が?」
「ええ、これも数日後、簡易裁判で正式に決まる予定だけど、ロックイート男爵家は取り潰し、当主には戦争責任有りとしてロックイート男爵家には賠償金の支払いが命じられる筈よ。
ロックイート男爵夫人は故人だし、嫡男と次男は戦死、生き残りは貴女だけだから、賠償金の支払いは貴女に行く事になるわね」
ロックイート男爵家は取り潰しになっているので、その資産は王国に返還される。
私財はシルビアに相続されるけれど、ロックイート男爵はフリードとシルビアが婚約した事で将来の繁栄を確信したのか、随分と散財した様で大した物は残っていない筈だ。
シルビアもそれを分かっているのだろう。
再び顔は青白く変わった。
「そ、そんな……」
「それと、アデルが調べた情報によると貴女、フリードにねだって随分と貢がせた様ね」
「…………」
「フリードは王子の年間予算とは別に国庫にも手をつけていた様よ。その返金も求められるからそのつもりでね」
「そんな!アレはフリード様が勝手に……」
「でも、そのお金が国庫から出ている事を貴女は知っていたでしょう?アデルはちゃんと証拠も残しているわよ」
「そ、そんなお金……払えない……」
「そう、なら貴女は犯罪奴隷になるでしょうね」
「ど、奴隷!!」
「『犯罪』奴隷よ」
私が言い直すとシルビアは動揺しながら足を震わせる。
「ど、どう違うの……」
「通常の奴隷はある程度の人権が保障されているわ。一応ね。犯罪奴隷は簡単に言ったら死んでも構わない奴隷って事よ。
多分、鉱山にでも送られるのでしょうね。
勿論、罪の重さによって与えられる仕事の危険度は変わるわ」
「そ、そんな……う、嘘よ!そんな……あり得ない……」
「安心しなさい。貴女の罪の重さなら流石に毒ガスや落石の危険がある様な場所には送らないわ」
私は、もはや言葉も出ない様子のシルビアに笑顔を向ける。
「貴女は見目も良いから、鉱山で働いている重犯罪奴隷達の性処理係として使われると思うわ」
「犯罪奴隷の……性処理……係?……私が?」
「ええ、犯罪奴隷とは言え、その辺りを押さえ付けていると鉱山の治安が悪化するから、女性の若い犯罪奴隷は大体そんな用途に使われるわよ。
まぁ、20年位すれば流石に食事係や掃除係に回されるだろうから、それまで頑張ってね」
「い、い、いゃぁぁあ!!!!嫌!嫌!嫌よ!た、助けて!助けて下さい!エリザベート様!お願いします!な、何でもします!何でもしますから!それだけは!」
「嫌なら賠償金を払いなさい」
「無理よ!無理無理無理!お願いします!助けて、助けて下さい!」
ついに地面に額を着けて謝り出したが、私の心は動かなかった。
絶望したフリードと必死で助けを乞うシルビアを残して、私は地下牢を後にするのだった。




