鉄格子を挟んで
「貴様!エリザベート!」
フリードが鉄格子を掴みながら叫んだ。
「あら殿下、そんなに唾を飛ばして叫んでははしたないですわよ」
城に入った時に突っかかって来た愚か者共を斬った時にも思ったが、どうもハルドリア王国に帰って来てからと言う物、昔の口調に戻っている気がする。
商人として帝国で過ごす内に、大分砕けた喋り方になっていた筈だが、今は自然と貴族らしい言葉が出て来た。
まぁ、嫌味を言うには都合が良いので構わないか。
「黙れ!貴様が……貴様が悪いのだろう!いつもいつも俺を馬鹿にしやがって!俺は王太子だぞ!この国で1番偉いのだぞ!」
「1番偉いのは国王陛下でしょう?ああ、今は皇帝陛下だったわね。その前はアデルよ。貴方が1番偉かった事実など無いわ」
「五月蝿い!さっさと此処から出せ!この俺にこんな事をして、タダで済むと思っているのか!」
「タダで済む筈はないでしょう?」
「そうだ!分かったらさっさと……」
「貴方には戦争責任を取って処刑されて貰わないといけないんだから」
「……だ……せ?戦争責任?」
私は大袈裟に驚いてみせる。
「あらあら!まさか理解していなかったのですか?
貴方は条約を破ってユーティア帝国に奇襲をしたのですよ。
そして軍人でもない無辜の民を虐殺した。
そんな人間を帝国が許す筈がないでしょう?
裁判はまだだけどハルドリア王家は断絶するわ」
「だ、断絶……。ち、父上は?」
「一緒に処刑されるに決まっているでしょう。
巻き込まれて処刑されるアデルが不憫でならないわ」
アデルはむしろ戦争を止めた側の人間だ。
しかし、その為に彼女は女王として即位する必要があった。
故に王族としての責任を取らなければならない。
コレを止めるのは難しい。
アデルを処刑する事は帝国に取ってメリットが有り、生かしているとデメリットが大きい。
私が今回の戦争と、戦後処理の功績を以て願えばもしかすると助命が叶うかも知れない。
だがアデルはそれを望んでいない。
アデルが生きている事で、元ハルドリア王国の民が帝国に反抗する可能性がある。
そうなれば今度は内乱だ。
アデルはそれを防ぐ為に自らの死を望んだ。
私には無い覚悟……王族としての覚悟だ。
そして此処にもその覚悟が無い男が1人。
「ま、待てよ……嘘だろ?この俺が……王太子であるこの俺が処刑?」
「そうよ元王太子殿下。アデルは毒杯による安楽死になるでしょうけど、貴方とブラートは絞首刑か石打ち刑でしょうね」
「な……ん?」
フリードの言葉にならない言葉を無視して続ける。
「ギロチン刑は派手だけど痛みは一瞬だから、こう言う場合は先ず使わないでしょうね。
首を吊られて晒されるか、死ぬまで石で打たれるか、よ」
フリードはようやく自分の立場と今後の展開を理解したのか、力無く崩れ落ちて涙を流し始めた。
「……………しは?」
「ん?」
「わ、わた……私は……ど、どうなるの?」
隣の牢で顔面蒼白になったシルビアが問い掛けて来た。




