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終戦②

 レクセリン砦にやって来たアデルは、オーキスト殿下に促され会議室へと入って行った。

 此方からはオーキスト殿下とルーカス様、それとオーキスト殿下の補佐官である帝都の文官が数人だけ同席している。


 私はその間は自室で待機だ。

 暇なのでミレイに珈琲を淹れて貰う。


「ハルドリア王国は降伏するのですよね?」

「そうね。今はアデルが女王だから、アデルが降伏を決めたのならそうなるわ。

 その為にブラートやフリードの身柄を押さえたみたいだし」

「帝国に差し出す首と言う事ですか」

「ええ、帝国は都市を1つと村を幾つか潰されているのだからそれなりの報復が必要なのよ」

「ですが、アデル様はこの戦争でエリー様と何度かぶつかったのですよね?

 そうするくらいなら、此方と協力して戦った方が良かったのでは?」

「いいえ、今回の件ではアデルが……ハルドリア王国側がブラートとフリード、その他の責任者を捕らえて帝国に引き渡す必要が有るのよ。

 アデルは民の生活を守る事を第一にしている。

 もし帝国の手を借りてブラート達を倒した場合、ハルドリア王国は代償を支払う必要があるの。

 具体的に言うと、王国の都市の1つでも焼き払うくらいはしないと釣り合いが取れない」

「っ⁉︎」

「勿論、オーキスト殿下なら民には避難する時間を与えるでしょうけど、それくらいはしないと帝国の面子が立たないわ」

「ではアデル様が今回の戦争の首謀者を引き渡した場合だとどうなるのでしょうか?」

「その場合は、ハルドリア王国側である程度の解決がなされたと見做して責任者の処罰と賠償辺りで何とかなるわ」

「……屁理屈では?」

「政治なんてそんな物よ。形式と建前が大事なの。

 オーキスト殿下だって別に王国の都市を焼きたい訳では無いでしょうから、アデルが言い訳を用意して来たのなら乗っかるでしょう」

「そうですか……ではハルドリア王国はどうなりますか?」


 私は珈琲の苦味を味わって香ばしい香りを吐息と共に吐き出した。


「ハルドリア王国はもう終わりでしょうね。

 条約を破って攻め込んで来たのだから当然よ。

 これで王国の存続を認めたら帝国は麾下の国々にいつ反乱されるか分からなくなるわ。

 此処で甘い対応はあり得ない」

「エリー様はそれでよろしいのですか?」

「そうね。正直、私が計画していた報復とはかなり違う展開になってしまったわ。

 でもこれで良かったのかも知れないわね」

「そうですか。私もそう思います。エリー様が王国の民に報復したいと思うのは当然でしょうが、それだけに支配されてしまうのは良くないと」

「ええ、意外とスッキリした気分よ。私の手でブラートとフリードを始末出来なかったのは残念だけど、断頭台で罵声を浴びながら死ぬのを見るのも悪くないわ」

「そうですね」


 そこでミレイは何かに気付いた様に目を見開く。


「あっ!あの……アデル様はどうなるのでしょうか?」

「アデルは……多分、皇帝陛下より毒杯を賜る事になるでしょうね」

「なっ⁉︎」

「ハルドリア王国はやり過ぎたわ。ブラートやフリードだけでは首謀者の首として足りない。民の生活を守るなら、現女王のアデルの命は差し出す必要があるでしょうね」

「し、しかし、サージャス王国の様に傀儡として担ぐ可能性も……」

「無いでしょうね。サージャス王国とハルドリア王国では規模が違いすぎるわ。

 アデルを傀儡にすると、統治のリターンより反乱のリスクの方が高い。

 王族の血を根絶やしにした方が今後の統治には有利よ」

「ですが……」


 ミレイも幼い頃のアデルを知っている。

 私も出来ればアデルには死んで欲しくはない。けれど……。


「アデルは全て覚悟の上で行動していたのでしょうね。だから私には止められないわ。

 止めてはアデルの覚悟と誇りに唾を吐く事になる」

「…………」


 ノックの音が鳴り、ミーシャが顔を出す。


「エリー様、オーキスト殿下とルーカス様がお呼びです。会議室までお越し頂けますか?」

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