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帰還

 アデルとハルドリア王国の精鋭兵をとり逃した私は、リスティアード卿を送還し、レクセリン砦へと帰還した。

 すると、砦は王国軍に取り囲まれており、帝国軍が防衛戦を行っていた。

 何処か敵影の薄い場所から突破しようと観察していると、砦の正面から少し南側で激しく戦っている2人が目に入った。

 莫大な水量を持った水の塊が舞い上がり、竜のアギトを形造り上空から飲み込む様に降り注いだ。

 その攻撃を受け止めたのは、燃え盛る炎で出来た虎だった。


 竜のアギトを操るのは、ハルドリア王国の貴族ランドル伯爵、炎の虎を従えるのはルーカス様だ。

 2人の実力は拮抗しており、周囲の兵を寄せ付けない程の激闘を繰り広げている。


「神器【暴食の魔導書】」


 具現化した魔導書を片手に敵影の濃い場所を狙って上級魔法を何発も撃ち込んだ。


「な、何だ⁉︎」

「ぐあぁぁあ!!!!」

「ひぃ⁉︎ま、魔法だ!」

「逃げろ!」

「馬鹿者!敵前逃亡は重罪だぞ!引くな!迎え撃て!」


 動揺する兵を懸命に統率しようと、指揮官の貴族が声を張り上げる。


「くそ!一体何人の魔法使いが居るんだ⁉︎」

「見ろ⁉︎相手は女1人だぞ!」


 ハルドリア王国軍の兵士達は背後から次々に魔法を撃ち込まれた事でパニックを起こし掛けるが、私が女で1人だけだと気づくと、何とか動揺を抑え込み態勢を整えて反撃に出ようとする。


「相手は女1人だ!魔法など無視して数で押し潰ぶぎゃぁ!!!」

「うあぁぁ!!」

「子爵様がぁぁ!!」


 大声で私に兵を向けようとしていた指揮官の頭を氷の槍で吹き飛ばした。

 突然指揮官を失った兵に動揺が走る。


「逃げろ!殺されるぞ!」

「おい!そこを退け!」


 何方に逃げたら良いのかも分からず仲間内で争い始めた。

 追加で魔法を叩き込みつつ、私は、混乱に乗じて敵軍の真っ只中に突っ込んだ。

 邪魔な兵士を斬り殺し、時折兵の多い場所へ魔法を放ちながらハルドリア王国軍を突き破った私の前には、周囲から兵が逃げ去った空間で槍とフランベルジュを手に戦うランドル伯爵とルーカス様の姿が有った。


 ランドル伯爵の槍が水を纏いルーカス様に襲いかかるがフランベルジュから噴き上がる炎を受けて背後に跳び退がる。

 正面のルーカス様を見据え、集中するランドル伯爵は背後から迫る私に気付かなかった。


「ごふっ⁉︎」


 驚愕に目を見開いたランドル伯爵が血を吐きながら首を回して私の姿を見る。


「エ、エリザベート様……」

「悪いわね、ランドル伯」


 彼は私に色々と協力してくれていた真面目な貴族だ。

 フリードに地下牢に入れられた時にも、私を解放しようと尽力してくれていた人だった。

 戦争で正面からぶつかる事さえ無ければ殺すつもりは無かった。

 だが戦場で会ったのなら仕方ない。

 私はランドル伯爵の背中から短剣を引き抜き血振りをする。

 同時に崩れ落ちるランドル伯爵に視線は向けず、苦笑いを浮かべるルーカス様と合流したのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 追いつきました。ふぉーエリー様苛烈。 というか不自然な自然体とでもいうか。 各所での戦いも佳境で目が離せません。 たれグランドマスターもいいですね。 更新待ち!
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