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帝都の大商人

 いくつかの奴隷を扱う商館を回ったが、ピンと来る者は居なかった。


 そして陽も傾き始めた頃、私達は一軒の商館の前に立っていた。


 その商館は今まで立ち寄った商館とは違い、商館の周囲まで綺麗に掃除され、騎士服を模した上等な衣服を身に着けた用心棒が2人、商館の入り口に立っている。

 その首元には奴隷に施される契約魔法特有の文様が刻まれている。


 彼らは奴隷の様だ。


 しかし、今までの商館で見た奴隷とは違い、血色も良く、しっかりと鍛えられた体をしている。


「いらっしゃいませ。此処は奴隷を扱っておりますセドリック商会でございます。

 当商会にご用でしょうか?」


 用心棒の奴隷はそのゴツイ見た目とは裏腹に丁寧で礼儀正しく用件を尋ねて来た。


「ええ、奴隷を見せて貰っても良いかしら?」

「畏まりました。直ぐに案内の者を呼んでまいりますので少々お待ち下さい」


 私は人を呼びに行く用心棒の背を見送りながら、彼が言ったセドリック商会の名前を反芻していた。


 なるほど、此処が《教育者》セドリック・ルーインスの商会だったのか。


 セドリック・ルーインスは帝国商業ギルド評議会の議員の1人だ。


 帝国商業ギルド評議会は帝国の財界を支配する大商人によって構成される組織で、国政にすら影響力を持つ。

 その議員である大商人は下手な貴族などよりも遥かに強い権力を有する大物だ。


 評議会の議長を務める帝国商業ギルドのグランドマスター、《先見伯》アルバート・グイード伯爵。


 帝国一の鍛冶師、《神工》ガイエン・ドラファン。


 各地に数多くの支店を持つ宿屋、《千里眼》ロットン・フライウォーク。


 貴族すら恐れる金融屋、《頭目》ダルク・ノーチェス。


 宮廷薬師をも凌ぐ天才薬師、《漆黒》ユウカ・クスノキ。


 娼婦から歓楽街の支配者にまで成り上がった女傑、《銀蝶》ヒルデ・カラード。


 そして、宮廷にまで人材を提供している奴隷商人《教育者》セドリック・ルーインス。


 この7人が帝国の財界を支配していると言っても過言ではない。



「お待たせいたしました。ご案内致します」


 用心棒に連れられてやって来たメイド服姿の女性は洗練された動作で丁寧に頭を下げると、私達を商館の中へと導いていった。

 彼女の首元にも隷属の紋様が見える。


 女性に連れて行かれたのは上等な調度品が品良く配された応接室だった。


 そこでソファに座った私達は彼女が入れてくれた紅茶を頂く。

 上等な茶葉だ。腕も良い。


 しばらく待っていると、ドアがノックされ、女性がドアを開け穏やかな顔の男が部屋に入って来た。


「お待たせ致しました。

 私は当商会の商会長、セドリック・ルーインスと申します」


 男の自己紹介に私は僅かに目を見開く。

 まさか、《教育者》セドリック・ルーインス本人が直々に現れるとは思わなかった。

 私が名乗ろうと口を開く前に、セドリックは笑みを浮かべて言う。


「お初にお目に掛かります。

 トレートル商会会長、エリー・レイス様。

 ミレイ・カタリア様とルノア・カールストン様も。

 お会いできて光栄でございます」


 私は、笑みを浮かべ感情を読ませないセドリックに油断ならない気配を感じていた。

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(・ω・)ノシ

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[一言] 本命は最後ってことか。
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