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開戦②

 こうして、戦争作法に則って始まった戦いだが、一進一退の膠着状態になって3日が過ぎた。

 その間、私は正直に言って暇を持て余していた。

 侵略軍は数こそ多いが、それは魔物で量増ししているだけで、個々の戦闘力や一点突破能力などは優れているが、攻城戦に向いているとは言い難い。

×

 此方は、バリスタなどの砦の防衛設備を駆使して近づけない様に立ち回っており、隙を狙って軍の魔導師隊の広範囲魔法を撃ち込む事で数の不利を覆していた。


 私が大魔法や【暴食の魔導書】を使えば更に戦果を上げる事も出来るだろうが、そこは政治と言う物がある。

 そもそも余所者である私がオーキスト殿下率いる帝国の正規兵を差し置いて武功を独り占めにする訳にはいかない。

 なので砦の守備はオーキスト殿下の指揮の下、帝国軍とルーカス様の辺境伯軍が担っている。

 ブラート王の軍が合流したら私達も出なければ不味いかも知れないが、その頃には此方も諸侯軍が合流しているだろう。


 それまで私の義勇軍は後詰として待機するだけだ。

 しかし、やる事はある。


 私がドアを開けて部屋に入ると、そこはさながらもう1つの戦場と化していた。


「しっかりして下さい!意識を保って!」

「お湯を早く!」

「包帯足りません!」


 衛生兵の腕章を付けた者達や法衣を纏った従軍神官達が忙しく走り回っている。


「エリー軍団長!」

「魔力は回復したわ」

「では甕の水の補充をお願いします!」

「此方の包帯を消毒して下さい」


 直ぐに衛生兵や神官から指示が飛ぶ。

 私は魔力が多いので水も大量に出せるし、包帯や医療器具を消毒も出来るので重宝されている。

 魔力を使い切っては回復させてまた治療を手伝う、これが最近の私の仕事だ。


「ママ」

「アリス」


 私を見つけたアリスが駆け寄ってくる。

 だが、その足取りは少々覚束ない。

 魔力が枯渇しかけているのだろう。


「私、お手伝い頑張ったよ」

「そう、偉いわね。でももう魔力がない様ね。

 一旦部屋に戻って休みなさい」

「でも……」

「アリス、休むのも大切よ。ここでアリスが倒れたら迷惑が掛かるでしょ?」

「うん」

「ルノア、ミーシャ」


 私が声を掛けると、風属性の治癒魔法で軽傷者を治療していたルノアと、水や包帯を運んでいたミーシャが仕事を切り上げてよって来る。


「貴女達もそろそろ休みなさい」

「はい」

「わかりました」


 2人にアリスを任せて私は治療の手伝いを始める。


「エリーさん!」


 少なくなった水甕に水を補充していると、遠くの方から私を呼ぶ声が聞こえた。

 あの辺りは重傷者の治療をしている辺りだ。

 私が急いでそちらに向かうと、指揮官の1人らしい青年をユウが治療していた。


「ユウ!」

「エリーさん、解毒魔法をお願いします。

 魔物の毒を受けている様です」

「分かったわ」

「リリ」

「はい!」

「ナルガ草の粉末とキナの実を」


 ユウの弟子であるリリが薬草を手早く調合している。

 その手際は流石、帝国一の薬師の弟子だ。


 私はユウの指示通りに解毒の魔法を掛けて行く。

 そうして青年の容体が安定すれば次の患者へと向かうのだった。


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