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義勇軍①

 ハルドリア王国が軍を率いてユーティア帝国に攻め入った。


 その報告を聞いて1日、帝都は大変な騒ぎとなっている。

 そもそも、不可解な事に報告が届いた時には、既にいくつもの帝国の都市が攻め落とされた後だった。

 どう考えても偶然などでは無い。

 何者かが情報を封鎖していたのは確実だろう。


 問題は誰が黒幕なのか、と言う事だ。

 アデルは私の周囲に手を出さないと約束した。

 だが、次の瞬間にはこれだ。

 アデルが黒幕ならば、情報操作をしていたのはエイワス兄様か。

 では何故わざわざ私に接触して来たのか。


「ふぅ、これ以上は考えても分からないわね」


 今、分かるのは1つ。

 既に戦争が始まっていると言う事だ。



 執務室にノックの音が飛び込み、私が入室を許可すると、使いに出していたミレイが姿を見せた。


「お帰りなさい。帝国からの返事は?」

「はい、前回の紛争での功績が認められ、今回も義勇軍を率いる許可を得ました。

 また、それに当たっての支援金も出して貰える様です」

「そう、冒険者ギルドと傭兵ギルドからの返事が返ってきたらすぐに編成を開始するわ」

「はい、今回も少数精鋭ですか?」

「いいえ、前回とは違い、相手はハルドリア王国の軍よ。

 小国の軍とは規模が違うわ。

 こちらも数を揃える必要があるのよ」


 そう答えながらミレイを見る。

 ミレイはいつも通り平静に見えるが、その立ち居振る舞いに、隠しきれない緊張があるのがわかった。


 ハルドリア王国軍は強い。

 以前の紛争とは違い、必ず勝てると言う保証が無いのだから当然か。


 その後、義勇軍設立に関するいくつかの事柄や、私達が不在の間の商会業務に関する話をしていると、使用人が来客を告げて来た。

 来客の名を聞いた私は、ミレイを連れて応接室に移動する。


 応接室に入ると、イーグレットがソファに腰掛けて私を待っていた。


「やぁ、エリー。忙しいのにすまないな」

「構わないわ。それで、今日は?」

「ああ、君が義勇軍を率いて王国との戦争に参加すると聞いてね」

「……耳が早いわね」

「まぁね。それで、君は何故そんな事を?

 商人がわざわざ首を突っ込む事ではないだろう?」

「個人的な理由よ。私は王国に恨みがあるの」

「そうか……では、俺も義勇軍に加えて欲しい」


 私は疑う様な視線をイーグレットに向ける。


「何故?貴方も言った様にただの商人が首を突っ込む事ではないでしょう?

 帝国臣民でも無い行商人の貴方が身を危険に晒してまで王国と戦う理由が見えないわ。

 私の様に王国に恨みでも有ると言うの?」


 私の問いにイーグレットは肩をすくめて見せた。


「ノーライフキングの騒動が有っただろう?

 アレの報酬として帝都での商売に援助が貰える事になったんだ。

 帝国としては復興の為に資金を回したかったのだろうな。

 俺は商人だし、長期的に見ればその場で報奨金を貰うより利益が大きいので喜んで受け取ったんだが、その矢先に戦争さ。

 このままナイル王国に帰るってのも考えたが、せっかく手に入れたチャンスだからな。

 此処で帝都に拠点を作れればウチの商会は更に大きくなる」

「そう、分かったわ。

 イーグレット達なら実力は十分だし、心強いわね」

「はっはっは、ご期待に添える様に努力するさ。

 ところで戦地に出ている時、アリス達はどうするんだ?」

「アリス達?勿論、帝都に残すつもりだけど?」

「そうか……」


 イーグレットは考え込む様に顎に手を当てて視線を下げた。


「何か気になる事でもあるの?」

「ああ、帝都はつい先日襲撃されたばかりだろう?」

「…………また帝都が狙われると?」

「分からない。だが、無い話では無い。

 今回のノーライフキングの襲撃だって、帝国への侵攻の発覚を少しでも遅らせたかった王国の工作って可能性もあるだろ」

「そうね………」


 アデルが本当にそんな手を使うとは思いたくは無い。

 だけれど、帝国を完全に崩壊させたいなら、確かに有効な手では有る。


 このまま軍を戦地に引き出しておいて、手薄になった帝都を再び襲撃、も有りだ。

 私ならそうする。


「…………そうね、今回はアリス達も連れて行きましょう」


 後方に配置して、私の目の届く場所に置く方が安心だ。


 その後、私はイーグレットと戦地になるだろう地域の情報を交換するのだった。

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