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帝都の祝祭①

 エイワスお兄様からアデルの話を聞いた翌日、私は気分を切り替えて祝祭の用意を始めた。


 この祝祭は帝国の建国を祝う物で、帝都では5日間のお祭り騒ぎとなる。

 初日から4日目までは帝都の彼方此方で大道芸人や吟遊詩人の姿が見え、屋台や露天商などが増える。

 更には闘技場では様々なイベントが有り、特に盛り上がるのが武術大会だ。

 決勝戦には皇族も姿を見せ、優勝者が希望すれば騎士として叙勲される事も可能だ。


 そして最終日には大掛かりなパレードが行われる。

 皇帝陛下や騎士団などが帝都を練り歩くのだ。




 私とミレイはアリス、ルノア、ミーシャの3人を連れて大道芸や演劇を観て、屋台を冷やかしながら祝祭を楽しんでいた。


 エイワスお兄様への答えはまだ出てはいないが、もし話を受ければこんな日々を過ごす事は出来なくなるかも知れないわね。


 少し意識を逸らしていると、アリスが興奮しながら前方の人垣を指さした。


「ママ、あれは何?」

「ん?ああ、騎士団が主催している魔法の的当てね。

 遠くに置かれた的に魔法を当てると賞品が貰えるのよ」


 表向きは騎士団と民の交流の為の演し物だけど、もう一つの理由として腕の良い魔法使いを探して勧誘すると言う目的もある。


「アリスもやってみる?あとルノアも」


 2人とも最近はかなり繊細な魔法を使える様になっている。

 結構良い線を行けるのでは無いだろうか。


「いいの?」

「良いわよ」

「私も良いのですか?」

「ええ、偶には自分の実力を試してみるのも良いと思うわ」


 騎士団への勧誘と言っても軽く誘われるくらいな物らしいので問題ないだろう。


 私達は受付に行き、アリスとルノアの参加を伝えた。


 的当ては遠くに置かれた的に向かって魔法を放つと言う単純な物だ。

 ただ的までの距離は結構遠く、実戦レベルの魔法使いでなければ的に当てる事は難しいだろう。


 そして結果は、アリスはギリギリ的の端に当て、ルノアは見事的の中心を撃ち抜いた。


 特にアリスは的に命中させた最年少で周囲の見物人は驚きの声を上げており、ルノアも魔法師団見習いにならないかと勧誘されていたが、丁寧に断っていた。


「やぁ、エリー」


 その後、別の広場に行こうとする私達に声を掛ける者がいた。


「イーグレット」


 声を掛けて来たのは共に帝都まで旅をしたナイル王国の行商人イーグレットとその仲間のグレンとオウルだ。


 私はイーグレット達にアリス達を紹介する。

 すると、アリスを紹介した時、イーグレットはアリスを見つめて驚きの表情を見せたが直ぐに表情を取り繕う。

 疑問の視線を向けると、少し罰が悪そうに苦笑いを浮かべた。


「いや、済まないね。エリーの年齢でこんなに大きな子供が居るとは思わなくて驚いたんだ」

「ああ、そう言う事ね。

 アリスは実の娘じゃないわよ。

 色々と事情があって引き取る事になったのよ」

「そう言う事か、驚いたな」


 その後、少しだけ話した後、イーグレット達と別れて別の広場へと向かうのだった。



 ◇◆☆◆◇



 帝都にあるスラムの一角、廃墟の様な場所に1人の男が息を潜める様に潜伏していた。

 男は『殿下』と呼ばれる人間に仕え、表沙汰に出来ない仕事をこなす裏家業の人間で『蜘蛛』のコードネームで呼ばれる存在だ。


 蜘蛛が潜伏している廃墟の扉を蹴破って数人の男達が中に座り込む蜘蛛を取り囲む。


「おい、テメェが最近この辺に住み着いたって男だな」

「…………」

「この辺りは俺たちガトーファミリーの縄張りだ。この辺に住み着くなら払うもの払って……」


 そこまで言った所で男の言葉と動きが止まる。


「兄貴?」


 仲間が男の顔を覗くと、苦悶の表情を浮かべた男の首が落ちた。


「ひっ!ひゃああ!!」


 腰を抜かして倒れ込む男の首にいつの間にか細い糸が絡み付いている。


「うぐ……」


 見れば他の仲間も同じく糸に絡められて苦しんでいる事に気づいた男は、自らの未来を近くに転がる首無しの死体に見る。


「あ、が……た、助け……」


 男の意識が有ったのはそこまでだった。


 男達を殺した蜘蛛は、自ら作り出した死体を無視して懐からマジックアイテムを取り出して視線を向けている。


 蜘蛛が主人から受け取った物だ。


「見事任務を遂行して見せます……殿下」

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