エリーのお友達大作戦:mission1 市場を散策せよ!
ミレイに友人と遊べと言われた。
彼女が何を目的としてそんな事を言ったのかは分からないけれど、何か意味があるのだろう。
それも、私の為の意味が。
ミレイは私の従者であり、幼馴染であり、姉の様な存在であり、大切な家族だ。
ミレイはいつだって、私の事を考えていてくれた。
王国で受けていた仕打ちに対する怒りを自覚出来たのもミレイのお陰だ。
なら、やはり私はミレイの言う通り、友人と友好を深めなければならないのだろう。
「…………友人って何をすれば良いのかしら?」
私は今までの人生に於いて、ただ楽しむ為だけに誰かと交流した事など無かった。
どうするべきかと、悩んでいると、帰宅したミレイがアドバイスをくれた。
その後、ミレイと相談して、予定を立てた私は、早速次の休日に作戦を決行する事にしたのだ。
「ああ!皆さん、お待たせしたッス」
帝都の中央広場、大きな時計塔の下の噴水の前で、待ち合わせをしていた最後の1人、ティーダが駆け足で姿を現した。
「遅いぞ、ティーダ」
「そうですよ、10分の遅刻です」
「し、しょうがないじゃないッスか〜、時計なんてこの広場くらいにしか無いんッスから」
この場に集まって居るのは私とティーダ、ユウ、エルザの4人だ。
共にダンジョンに潜った仲である。
「ほらほら、騒いでないで行きましょう」
「そ、そうッスね!行きましょう!」
「まったく……」
「ふふふ」
こうして、私達は姦しく帝都へと繰り出した。
「あ、見てください!あの果実はこの辺りではなかなか手に入らない物ですよ」
「チルムの実ね。図鑑で見た事があるわ」
「ほぅ、美味いのか?」
「さぁ、どうかしら?食べた事はないわ」
「わたしも薬用に乾燥させた物しか扱った事は有りませんね」
「じゃあ、1つ買って食べてみるッスよ」
銅貨と引き換えに真っ赤に熟した拳程の果実を受け取り、エルザがナイフで切り分ける。
「ん、甘いわね」
「随分と濃厚だな」
「口に残る甘さッスね」
「コレはそのまま食べるよりお菓子の材料とかにしたほうが良さそうですね」
「良いわね」
今日は午後まで帝都を散策し、その後はユウの店で女子会と言う物を催す予定だ。
夕食も自分達で用意するつもりだから、お菓子も作るのも良いかも知れない。
果実を幾つか購入し、更に気になる食材をつまみながら気に入った物を買って行く。
エルザと露天商が売っているナイフを吟味し、異国の行商人が扱っていた薬をユウに解説して貰い、フラフラと酒屋に向かうティーダを連れ戻す。
そうして居ると、時間は空を飛ぶ飛竜の如く進んだ。
気の許せる友人と、目的も無く街を歩く。
なるほど、確かにコレは楽しいのかも知れない。
「そろそろお腹が空きましたね」
「そうッスね、何処かでランチにしましょうか」
「何処か美味しいお店知ってる?」
「私は安くて量の多い冒険者向けの店しか知らないな」
「美味しい酒場なら知ってるッスよ?」
私も帝都では殆ど屋敷で食べるか、パーティに出る事が多いからあまりお店は知らないわね。
「ふふふ、では私がオススメのお店に案内しましょう」
何やらユウが自信ありげに宣言する。
ダンジョン内で共に行動した感じだと、ユウはかなり料理達者だ。
そのユウがオススメだと言うなら期待が出来そうだ。
私達はユウの案内でお店へと向かうのだった。