冒険者ルノアの冒険:初めての共闘
「【風刃】!」
私の魔杖の先端に付けられた風の魔石によって増幅された魔法が、3人の冒険者に迫っていたゴブリンの群れの先頭に直撃する。
群れの最前列に居たゴブリンを真っ二つにし、数匹のゴブリンを負傷させる。
「な、何だ⁉︎」
「走って!こっち!」
私が叫ぶと、こちらに視線を向けた3人が慌てて駆けて来る。
「荒野を走る疾風 荒ぶる風を束ねて剣を打ち 吹き抜ける烈風は数多の切先となる【風連刃】」
私の正面に浮かび上がった魔法陣から幾つもの風の刃が放たれ、3人の背後を追うゴブリンを切り裂いて行く。
「わ、悪い、助かった」
「まだです!体勢を立て直してください!」
3人は慌てて武器を構え直した。
残りのゴブリンは6体程、4体が棍棒持ちで、弓持ちと杖持ちが1体ずつ居る。
「【強風】」
無詠唱で唱えた魔法は強い風を起こすだけの物だ。
足止めと言う程の効果は無いが、僅かにゴブリンの速度を落とし、弓持ちが放った矢を逸らすには十分な効果だった。
「うぉぉお!!」
剣と盾を持った少年がゴブリンに駆け寄り、棍棒を盾で受け止め、肩から袈裟懸けに斬りつける。
仲間を殺されたゴブリンが少年に向かうが、少年は深追いする事なく退がり、槍を構えた少年が交代で前に出た。
槍がゴブリンの首の中心を穿つ。
槍に突き刺さったゴブリンを蹴り飛ばす、その隙を突く2体のゴブリンに少女が矢を射る。
1体は額を射抜き仕留めるが、もう1体は肩に矢が突き立ちひっくり返り、少年が槍の石突きで頭を叩き潰す。
「グギャア!!」
杖持ちのゴブリンが叫ぶと炎の塊が勢い良く迫る。
3人はゴブリンの魔法に驚き足を止めてしまうが、私は既に準備していた魔法を発動する。
「【風壁】」
風の障壁に阻まれた炎は数秒で掻き消える。
「矢を!」
「はい!」
少女が弓に矢を番えて引き絞る。
「敵を射抜く鏃に風の祝福を……」
「ギギョォ!!」
「させるか!」
私を狙って放たれた矢は少年の盾で弾かれ、弓持ちのゴブリンは大回りで接近した少年の槍で討ち取られた。
「【風属性付与】」
風の魔法を付与した矢は高速で空を駆け、杖持ちのゴブリンの額を撃ち抜いた。
ゴブリンの奇声が無くなり、周囲は元の静けさを取り戻していた。
「はぁ、はぁ、か、勝ったのか?」
「もう……居ないようだ」
「た、助かったの?」
3人は安堵の息を吐き出すと私の方へとやって来た。
「助けてくれてありがとな、俺はレウス。
こっちの槍使いがリオ、弓使いがレイアだ」
「助かった、礼を言う」
「ありがとう、君は命の恩人だよ〜」
「私はルノア、私も1人であの数は厳しかったから、共闘出来て良かったよ」
私達は取り敢えず討伐したゴブリンから討伐証明の右耳を切り取り、穴を掘って死体を燃やし、帝都へと戻った。
門を通り、ようやく落ち着いた所で3人に改めてお礼を言われた。
「本当にありがとな!ルノアのお陰で命を拾ったぜ」
「凄い魔法だった」
「そうだよね〜、同じFランクなのに凄く冷静だったし〜」
「私は訓練を付けて貰っていたから」
冒険者ギルドへと向かう道を3人と話しながら歩く。
レウスとレイアは同じ村の出身で、冒険者になって一旗揚げる為に帝都に出て来て、同じ境遇のリオと出会いパーティを組んだらしい。
そしてギルドで訓練を積んでいざ木の実集めの依頼を受けたら、新しく出来たゴブリンの群れに遭遇してしまったそうだ。
ギルドでそれぞれの依頼を完了し、ゴブリンの討伐報酬を受け取り、4人で等分した。
3人は遠慮しようとしたが、4人で戦ったのだから、と等分にしてもらった。
冒険者の報酬は平等に分配するのがトラブルを避ける方法だと聞いた事がある。
報酬関連の事柄を終わらせると、レウスが改まった様子で声を掛けて来た。
「なぁ、ルノア。もし良かったら俺達のパーティに入ってくれないか?」
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(・ω・)ノシ