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対面の商会

「なるほど、確かにあなた方の石鹸の製法には危険性は認められませんね」


 場所を商業ギルドの1室に移した私達はアルテから事情聴取を受けていた。


 その過程で石鹸の製法に付いて商業ギルド所属の錬金術師に詳しく説明する事で石鹸の製法自体には問題が無い事が認められた。


 更に被害を訴えている人達は私達の商会が石鹸を販売した事のない人物で有り、私達が取引している人々からは一件も被害の報告がない事、そして私達が販売した石鹸の量、商会に残っている材料の在庫と、卸業者から購入した材料の記録から、商業ギルドは私達が事件に関与している可能性が低いと判断してくれた。


「それで、コレが問題の石鹸ですか」


 そして被害者が所持していたトレートル商会製の石鹸とやらを見せて貰った。


「コレは……随分と半端な出来ですね」

「半端……ですか?」

「はい……コレは……もしかして!」

「何か思い当たる事でも?」

「はい、コレは多分、商会の金庫に入れていた石鹸の製法を何者かが盗み見て作った物かも知れません」


 アルテは首を傾げる。


「どう言う事ですか?」

「この石鹸の製法は我がトレートル商会の生命線、なので石鹸の製法を記したレシピは2つに分けていて、片方を商会の金庫に、もう1つは私が肌身離さず持っています。

 この石鹸は金庫に入れているレシピのみで作られた物、本来なら私が持つレシピで無毒化しないと使い物にならない物ですわ」


 私の説明にアルテは頷きを返す。


「つまり何者かがトレートル商会の金庫からレシピを盗み石鹸を作り、トレートル商会の名を騙り販売していたという事ですか」


 アルテは頷き、部屋に待機していた部下に指示を出す。


「被害者から石鹸の入手ルートを洗いなさい。おそらく犯人はトレートル商会との仲介役や裏ルートを名乗り石鹸を販売しているのでしょう。

 石鹸の材料の流れも調べて下さい」

「はっ!」


 部下を見送ったアルテは私達に深々と頭を下げる。


「まだ確定では有りませんが、トレートル商会は今回の件とは無関係。いや、むしろ被害者と言えるでしょう。

 この度はご迷惑をお掛けしました」

「いえ、状況を考えれば仕方の無い事です。

 悪いのはこの様な粗悪品を作り出した犯人ですから」

「そう言って頂けると……もし、犯人が見つかったのならあなた方にもご連絡すると約束致しましょう」


 その後、アルテの手配でトレートル商会の商館へと馬車で送って貰った私達は散らかっている商会を手早く片付けると、その日は早々に借家へと帰って行った。



 ◇◆☆◆◇



「どうしてこうなった!!」


 ガザルは商会の執務室で頭を抱えていた。


「クソッ!不味い!不味い!石鹸を売った客から辿ればすぐにウチの商会に辿り着く。

 クソッ!どうなっているんだ!まさかあいつら偽物のレシピを掴まされたのか⁉︎

 クソッ!クソッ!クソッ!」


 ガザルがレシピを盗んだ者達を八つ当たり気味に罵っていると、廊下が騒がしくなった。


「お、お待ち下さい!会長はただいま不在で……」

「ガザル会長が居る事は確認済みです。

 此方には令状があります。

 これ以上、捜査を妨害すると貴方も罪に問われる可能性が有りますよ」

「………………」


 その声からいくばくもなく、部屋の扉が開かれて武装した男達が雪崩れ込む。


「ガザル商会商会長、ガザル・ジャックマン。毒性石鹸の件とトレートル商会への不法侵入と窃盗に関してお話を聞きたいので商業ギルドへとご同行願います」



 ◇◆☆◇◆



 商業ギルドから偽石鹸の犯人が捕まったとの連絡を受けた私達は商業ギルドへと足を運んでいた。


 犯人は元々この街で商売をしていたガザル商会。

 商業ギルドの調査で、商会長のガザルと言う男が部下に命令してレシピを盗ませた事が分かったと言う。


 商業ギルドとしてはガザルのギルドからの除名と犯罪奴隷として売却と言う処分になるそうだ。

 しかし、今回、私の商会は多大な被害を受けた。

 特にブランドイメージがつき始めたトレートル商会の名前を傷付けた事は大きい。


 その被害に対する賠償を求める為、今日私達は商業ギルドを訪れていた。


 商業ギルドの職員に案内されて部屋に入ると、ガマガエルの様に膨れた男が手に縄をかけられて椅子に座らせられていた。


 コイツが私達の商会に手を出したガザルと言う男か。

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(・ω・)ノシ

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