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カイコウ

「くっくっく……」


 あれから2ヶ月、あのエリザベス商会とやらには随分と稼がせて貰っている。

 俺達を嵌めるつもりらしく、信用を得たいのかこちらに有利な取引ばかりだ。


 向こうに渡す金貨は全て偽金貨、それをメリーナ王国でベリットが手を回した鑑定士が本物であると鑑定した為、マーベリックの奴は疑いもせずに受け取っている。


 その利益により、ファンネル商会はかつてない程に潤っていた。

 一時はかなり危険だった経営も持ち直している。


 そんな折、マーベリックから更に大きな取引の誘いがあった。

 その取引の為にメリーナ王国に来て欲しいと連絡して来た。

 奴の言によればこの取引は今までの取引とは段違いに大きな物だと言う。

 あからさまに怪しい。

 そう思っていると、ベリットから連絡があり、エリザベス商会が荒くれ者を集めていると情報をよこして来た。


 ベリットが調べた話では、エリザベス商会の目的は偽金製造ルートの乗っ取りらしい。


 取引に出かけた所を捕縛すると言う浅はかな策だ。


「面白いじゃないか」

「どうすんだ、旦那」

「勿論、乗り込むさ」


 コルトはニヤリと口角を上げる。

 そんなコルトにバアルは問う。


「おいおい、良いのか?明らかに罠だぞ」

「何のためにお前が居るんだよ。

 それともたかがチンピラ程度に尻尾を巻くつもりか?」

「へいへい、殺りぁ良いんだろ?」

「ああ、こちらも兵隊を集めるが、まぁ、お前が居れば問題ないだろ?」






 数日後、コルトはバアルを連れて、ハルドリア王国に近いメリーナ王国の田舎に有るエリザベス商会所有の倉庫の様な建物に案内されていた。


「ふん、馬鹿なのか?こんな所に呼び出したら今から襲います、と言っている様なものだろ?」

「がっはっは、わかりやすくて良いじゃねぇか」

「それもそうだな」


 既に従業員に扮した手下共も連れて来ている。

 周囲には人目も無いので多少派手に暴れても問題ない。


 そこにエリザベス商会のマーベリックがノックと共に入室して来る。


「コレはコレはコルト様、お待たせして誠に申し訳有りません」

「いや、問題ない」

「それでは早速商談なのですが……」

「その前に」

「はい?」

「1人紹介したい者がいる」

「紹介……ですか?」

「連れてこい」


 コルトが命令すると、1人の男が入室して来た。


「貴方は!」

「お久しぶりですな、マーベリック殿」

「べ、ベリット殿がなぜ此処に?」


 今更警戒を露にするマーベリックの滑稽さに、コルトはまるで喜劇でも見ているのかと思う。


「何、ベリット殿が教えてくれたのだよ。

 君が俺達ファンネル商会を嵌めようと画策しているとな」

「な、な、何を……何を言っているのですか⁉︎そ、そんな事は……」

「おかしいですな、マーベリック殿、私が連れて来た者達が、この建物の様子を窺っていた武装した者達を数名捕らえたのですが?」

「な、い、いや、それはおそらく私共を狙う賊でしょう」

「どうだかな」

「と、兎に角、コルト様!我々はその様な事を考えてはおりません!

 そうだ!き、今日は我々エリザベス商会のオーナーがお世話になっているコルト様に是非挨拶したいと……」

「ほぅ、エリザベス殿が来ていると?」

「い、いえ……エリザベス会長では無く、オーナーが来られています」

「オーナー?」

「はい!エリザベス会長はオーナーに雇われている方でして……」

「ふん、だったらさっさと連れてこい」

「は、はい、直ぐに!」


 マーベリックは慌てて部屋を出てゆく。


「逃がして良かったのか、旦那?

 多分、兵隊連れて来るつもりだぜ」

「なに、それなら正面から叩き潰してやれ」


 この建物の周りにも100人以上潜ませている。

 更にベリットも50人程兵を連れて来ているらしく、既に周囲のエリザベス商会に雇われた兵隊共を排除している様だ。


 そしてこの場にもバアルは別格として、かなり腕の立つ者達が6人も控えている。


 ベリットの情報ではマーベリックが集めた者達はせいぜいがDランク冒険者崩れだと言う。

 そんな奴らはいくらいても物の数では無い。


「失礼致します」


 戻って来たマーベリックがノックをして扉を開く。


「お待たせ致しました」

「ふん、いくら兵隊を連れて来ても……え⁉︎」


 てっきり多数の戦闘員が雪崩れ込んで来ると思っていた。

 しかし、マーベリックに付いて入室して来たのはたったの2人。

 しかも女だ。


 2人の内の1人、美しい銀髪を腰まで伸ばしている女が、警戒心を露にする周囲を全く気にする事なくコルトの前のソファに腰を下ろし、連れのメイド服姿の女がその背後に立つ。


 銀髪の女は何がそんなに楽しいのか、笑みを浮かべながら足を組むと、コルトに見下す様な視線を向ける。


 荒事に慣れたチンピラ共では無く、美しい女が現れた事。

 その女がこの状況を楽しんでいる様に笑っている事。


 そんな事よりもコルトが驚いたのは別の事。


「初めまして、ファンネル商会のコルト殿」


 違う、『初めまして』では無い。

 コルトはこの女を知っている。


 フリード王太子の元婚約者にして万能の天才と名高い公爵令嬢。

 そして、ファンネル商会の産みの親。


 現在は国家反逆の罪で指名手配されている女。


「私はエリザベス商会のオーナー、エリー・レイスと申しますわ」


 エリザベート・レイストンである。

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(・ω・)ノシ

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