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3.騎士になれば

 


「でもシノ、騎士にでもなるつもりか?」


 クライブは冗談混じりに私に聞いてきた。

 私はハッとし、考えつかなかった案を出してくれた彼に感謝する。


「あっその手があったか」


 と私がポンっと手を打ちながら同意すると、クライブは目をまん丸にし、驚きを隠せないようだったが。


 今回この本が欲しかった理由はクライブに扱いやすい剣をあげたいなと前々から思ってたのと、普通に読んでみたかったからだ。

 けどそうか、もしこれからヒロインが現れるとして危ない目に遭うのが分かっているのだとしたら私が守ってあげればいいのでは?

 女の子同士なら近くにいやすいし、王太子とかの顔が整った部類と一緒にいて悪女に目をつけられるより変な噂にならないはず。なによりパッケージで見たヒロインめちゃくちゃ可愛かったから、あんな得体がしれない男たちの餌食にならぬよう守ってあげたい。


 まぁクライブルートに行くなら、そんな心配大丈夫だろうけど。

 なんといっても優しい、イケメン、気遣い屋、兄貴分の四拍子が揃っているのだ。


 それと、剣術体術を学んでおけば自分の身を自分で守れる。その方が人に迷惑をかけずに生きていけるはずだ。

 もしなんかあってもモブである私はフェードアウト出来るはずだし。


「よし、明日から私ももっと剣技磨こう。そうと決まれば師匠に頼みに行かなくちゃ」


 一応私も軽く師匠から稽古をつけてもらっているのだが、彼はかなり手加減をしてくれている。

 やっぱり女の子と男の子じゃ体力のつき方も身体の使い方も違うから、しょうがないのだけど。

 もう少し厳しくしてもらえるように明日にでも頼みに行こう。


 明確な決意を持って、私が呟くと


「いやいやいやシノさん…!?俺冗談のつもりだったし、しかも病み上がりなのに明日からって…っ!しかもバルドの加減なしの稽古まじでやべぇから辞めといた方が…」


「いやむしろばんばん鍛えてもらわなきゃだから、師匠に手加減なしで稽古つけてもらえるなら本望だよ。クライブ、アドバイスありがとう!目標が定まったよ」


 と微笑むとクライブは「…ど、どういたしまして…?」とぽかんとしていた。


 さて、まずは師匠がなんていうかだよなぁ。

 ダメって言われたら諦めるけどと私が考えに耽っている傍らで、


「…なぁセリア。俺なんか余計なこといった?」


「シノ様が喜んでおられたので正解だったのではないでしょうか?」


「喜んでたけどさ…。はぁ…別にシノが騎士にならなくても俺が守ってやるのに」


「言っておきますが、女が全員守られるだけ愛でられるだけの籠の鳥ではないのですよ。特にシノ様は」


「……知ってるよ。そういうとこも全部好きなんだから。……俺ももっと頑張んねぇとな」


 とクライブも決意を固めたことに私は気づかなかった。




 ■■■■■■■■■■■■





「お姉ちゃんやばい!アルフレッドもやばい!いや最推しがクライブなのは変わりないんだけど、でもなクライブの兄貴肌とはまた違って、このニコニコ笑顔の裏に腹黒さがある王太子もかっこいい…っ」


「…毎日よく飽きないねぇ」


 またいつものように妹が笑顔でゲームの話をしてきた。


「そりゃ攻略対象によって話が違うし、ハッピーエンドがあればバッドエンドだってあるしどうせなら全部制覇したいんだよね」


「その集中力と根性を勉強で発揮すれば満点余裕で取れるんじゃないの」


「そこに注ぐならゲームに力をありったけ注ぎたいし、第一全教科80点以上取れてればいいでしょ?」


「まぁ別にあんたがいいなら構わないけど。満点取れたら気分的に気持ちいいじゃない」


「うーん、満点を取る必要性があるならちゃんとやるけどさぁ」


 妹は私と違って優秀だった。

 1度習えばすぐ覚えるので、テスト勉強などしなくともよかった。


「とりあえず勉強の話は置いといて、アルフレッドだよ!このルートに行くとさ、クライブの時とは違って悪役の生意気娘が出てくるんだけど、ほんっともうむかむかしちゃう」


「へー、水かけるとか?弁当をぶちまけるとか?」


「そういうんじゃなくて!あのね主人公が必死の努力の末に等級関係なしのテストで満点取ったの。アルフレッドにも褒められるんだけど、クロエとかいう女がカンニングしたんだって言いがかりをつけるんだよ!?しかも周りもこぞって五等がそんな点数取れるわけがないってさ。それに学長はクロエの方が三等で等級が上だからってそっちを信じるの。主人公は一旦停止処分とかありえない…!」


 熱く語る妹に軽く引いた目をしながらもちゃんと話を聞いていた。

 というか主人公可愛い見目の上に勉強も出来る有能とは、完璧人間じゃないか。でも周囲からの嫉妬もその分加算されるんだなぁと思うと完璧なのも楽じゃない。


「なんかさ、クライブルートみたいに分かりやすい感情表現なくて、アルフレッドルートは本当に好きあってるのか途中までよく分からないから、主人公目線だとめっちゃ不安になるんだよね。まぁキャラそれぞれ個性がたっててプレイしてる側は楽しいんだけど、私は感情移入しちゃうタイプだから」


 そんなことを言いながら妹は私の部屋にあるテレビにゲーム機を繋ぎ、ゲームをやり始めた。いや自分の部屋でやれよ…。

 そんな心の声が出ていたのか、妹が「お姉ちゃんにも見てほしいんだよこの場面!」と言い放った。


 起動してタイトル画面になると、キャッチーな音楽が流れてくる。この曲は好きだなぁとちょっと思った。

 確か妹はこのゲームのサントラも買っていたはずだ。後で借りよう。


「で?アルフレッドは結局どっちの味方をしたの?」


 そう質問すれば妹は神妙そうな顔をして、口を開いた。


「それが…」



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