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29. お誘い

ブックマークや評価ありがとうございます…!✨️

とても嬉しく励みになっております(*´ `*)

この物語が誰かの楽しみになっていましたら幸いです。


 




 ベネット様に案内された部屋は、海をイメージしたような爽やかな雰囲気の場所でとても過ごしやすそうだった。

 ちなみにここまで歩いてきた廊下には、所々に趣味を疑う芸術品(頭だけとか手だけ、足だけの石像)があったため、部屋の中にもあったらどうしようかと思ってしまったが、杞憂に終わったようだ。


 私は部屋まで案内してくださったベネット様にお礼を言おうと、彼女に向き直った。


「ベネット様、改めてありがとうございます。早くに訪問してしまったのに快く応じてくださったことも、あのパーティーの際もクライブを向かわせてくださって」


「いえ、そんなお礼を言われることでは。私はただ話をしただけでしかありません。ふふっサージェント様は律儀な方なのですね」


 ベネット様が柔らかく微笑む。

 私は思わずその笑みに釘付けになった。


(び、美少女が笑うと破壊力がすごい……っ可愛い……)


 前世の妹に女の子が好みなのかと質問されたとき、私は否と答えた。

 それは変わらないけど、現実にこんな可愛い子いたら誰だってストライクゾーンが広がるのではないだろうか。

 というか守りたくなるよね、うん。


 私がベネット様の眩しさにぐるぐるしていると、彼女は口元に手を当てながら「あの一つよろしいですか?」と聞いてきた。


「はい。何でしょうか?」


 びっくりして素っ頓狂な『はい』を言いそうになったが、なんとか耐えた私えらい。

 緊張して第一印象からヤバいやつ認定されるとこだった。


「サージェント様さえ良ければ明日、二人で一緒に近くの街を見て回りませんか?二人でとはいえ護衛は勿論つけますけれど」


「えっ!?」


 まさかの美少女からデートのお誘いである。(決して違う)

 びっくりして先程は耐えた素っ頓狂な声を今度こそあげてしまった。


(いやでもそういうのはクライブを誘うべきなんじゃ…?)


 私があわあわとしているのを、嫌がっていると捉えたのかベネット様があからさまにしょんぼりする。


「……すみません。嫌、でしたか?」


「いやいや全っ然!むしろ誘っていただけて嬉しいです!でもクライブではなく、私でいいのですか?」


 誰がこんな美少女のお願いを断れるだろう。少なくとも私には無理である。

 私が了承するとベネット様は花開くように笑った。可愛い。


「いえ、サージェント様が良いのです。───お恥ずかしながら、私は同年代の女性とお出かけをしたことがなくて……。これを機に友のようになれたらと。あと出来たらルーナと名前で呼んでいただきたいのです」


 か、可愛すぎないか…?!

 こんな美少女が私と友達になろうとしてくれてる事実に、私は浮き足立った。

 ベネット家に来る前はどういう話を振ったら友達になってくれるだろうなんて考えていたけれど、率直に言えば良かったんだ。

 だから思わず彼女の手を握って、迫ってしまった。


「是非っ、是非友達になりましょう!私もシノとお気軽に呼んでいただいて大丈夫です!」


 ベネット様は目を見開き、私と握られている手を交互に見ると、ぷっと吹き出した。


「ふふふっ、シノ様は随分人懐っこくていらっしゃるのね」


「あ!すみません…!つい不躾に触ってしまって」


 私は失礼が過ぎたと思い、すぐにパッと手を離すも、彼女の方から名前呼びをしてくれたことに嬉しくなる。


「不躾だなんて思っておりません。むしろ嬉しいですわ。───では、また明日に。本日の夕食は部屋まで運ばせますのでゆっくりお召し上がりください。おやすみなさいシノ様」


「ありがとうございます。おやすみなさいルーナ様、良い夢を」


 私がそう挨拶を返すと、ルーナ様は部屋を出ていった。

 扉が閉まり、部屋にはセリアとリアンさん、ジェスさんになると私はその場にしゃがみこむ。

 深く息を吸い、そしてそのまま吐くと今の思いをぶちまけた。


「はーーー…………可愛かった」


「シノ様は女の子に弱いんだねぇ、ぷっ」


「えっ、そこなんで笑うんですか…!」


「いやぁどこかの誰かさんにはそこまでの反応見せないから可哀想で〜?とりあえずハニートラップには気をつけなよぉ?」


「……それは十歳のというか、女の私にいうことじゃないのでは…?」


「シノ様だからいうんだよ〜?」


 私がリアンさんをジト目で見つめるも、彼は何処吹く風で「じゃあ扉前にいるからなんかあったら呼んでね〜」と言って出ていってしまった。


「シ、シノ様っ……ぼ、僕も…扉前で待機してます……!」


 リアンさんについていくようにジェスさんも扉から出ていくと、部屋には私とセリアの二人。

 セリアは一つ溜息を零すと。


「……シノ様、本当にハニートラップにはお気をつけてくださいね」


「セ、セリアまでーっ!そういうんじゃないから大丈夫だよ…!」


 彼女は少し残念な子を見るような目で私にそういうと、荷物の整理を始める。

 まさかの大事な侍女にまで言われるとは思わず、半泣きになる私なのであった。




 ■■■■■■■■■■■




 次の日。

 私はルーナ様やクライブ、ガリウス卿と共に朝食を取ったあと、早速出かける支度をしていた。


 クライブはガリウス卿となにやら話をしなければいけないらしく、私がルーナ様と街に出かけることを伝えると「絶対リアンたちと離れるなよ」と念を押された。

 中身は一応クライブより年上なのに、何故そんなに心配されるんだろうか…。


 セリアに身支度を整えてもらい、全身鏡の前に立ってくるりと回る。

 一応お忍びとのことなので、なるべく貴族に見えないよう無難な格好にしてもらった。

 ただ一つ懸念点があるとすれば。


「シノ様、朝から気になっていたのですがご気分が優れないのでは…?今日はお止めになった方がよろしいのではないですか?」


「大丈夫だよ。ただ慣れない場所で疲れが取れなかっただけだと思うし」


「ですが、」


「悪化するようだったらすぐ戻ってくるから心配しないで」


「絶対ですよ…?リアン様達にすぐ言ってくださいね?」


「うん、分かった」


 セリアが不安そうな顔で私を見たものの、それ以上言ってくることはなかった。けれどすぐに勘づかれるくらい顔に出ていたのなら、もっとちゃんと隠せるようにならなければいけない。


 確かに朝から身体が怠重く感じているけれどそれだけなのだ。

 多分これは前世でいう遠足が楽しみすぎるが故になかなか眠れなくて、当日に限って体調不良になるパターンのやつである。

 だがしかし、ここでルーナ様とのお出かけをドタキャンする方が、あまりの申し訳なさにむしろ体調が悪化しそうだ。

 おそらく寝込む。絶対寝込む。


(よし…!顔に出ないように、上手く取り繕えるように頑張るぞ…!せっかくのお出かけなんだし楽しんでこなきゃ)


 私は心の中で気合いを入れ直し、集合場所である玄関ホールに向かおうと部屋を出ると、リアンさんとジェスさんが私を出迎えた。


「あ、シノ様〜。お支度出来たんですねぇ、今日も眩しくて僕成仏できそうです〜」


「シノ様…そ、その服装もお、お似合いです…!」


「ふふっリアンさん、ジェスさんありがとうございます。今日も護衛よろしくお願いします。疲れているのに街までお願いしてしまってすみません」


 彼らは私の護衛でずっと寝ていない。

 前世でよく話題になっていたブラック企業も顔負けなくらいの労働時間だ。

 そう考えたらつい謝罪の言葉が口をついて出てしまった私に対してリアンさんは、


「いやぁそれが僕らの仕事ですしね〜。それで騎士にわざわざ謝るのなんてシノ様くらいじゃないですか〜?────あのね、僕らの気持ちになって考えてくれるのはシノ様のいいとこだけどあまり下に出過ぎない方がいいよ。舐められちゃうから」


 いつもの間延びした声とは違い、彼は真面目な顔で諭すように私に言った。

 しかしすぐにニコッとした表情になり、「今後は気をつけようね〜」と付け足す。

 昨日も一瞬思ったけれどリアンさんギャップが、ギャップがすごい。

 今そんなこと考えてる場合じゃないんだけど。私にそれは良くないよって言い聞かせてくれたのだけど。

 あまりに普段と違う声音でいうものだから、ちょっと心臓がバクバクしてしまった。


 私がフリーズしていると、ジェスさんも口を開いた。


「あ、あのっ……ぼ、僕達はこれくらい出来るのが当たり前だから…。きに、気にしないでください…!だ、団長みたいに…容赦なく使っても、もらって大丈夫です…」


「容赦なくはちょっと無理です…!でも次から言葉には気をつけます」


「うん、ならいいですよ〜。ほらシノ様、早く行かないとベネット嬢が待ってるよぉ」


 リアンさんに急かされ、私はハッとなり急いで玄関ホールに向かう。

 すると、階段を降りた先で黒髪を靡かせた美少女が振り返りふわりと笑った。


「シノ様、お待ちしておりました」


「ルーナ様!お待たせしてしまってすみません」


「いいえ、そこまで待っておりませんよ。では参りましょう。シノ様と行きたい場所がたくさんあるのです」


 手を合わせて私にそう話すルーナ様はとても可愛い。

 そんな顔を見たら身体の怠重さなんて吹っ飛んでしまった。

 ドタキャンしなくて良かった。本当に良かった。

 後ろでリアンさんがぷっと吹き出した声が聞こえたけれど知らんぷり。




 そして私達は早速馬車に乗り込み、街へと繰り出したのだった。








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