25. 白騎士様と黒龍
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※話の帳尻を合わせるため、22話の出発日を4日前から5日前に書き直しました。
「ここら辺で街歩きしましょうよ〜!足動かしましょ足!皆で散策!」
ベネット家があるソルテに行くまでの道中。
私たちはネルカの首都ルーグスに着くことが出来たため、予定していた宿で各々休息をとっていた。
そんな中でリアンさんが嬉々として提案をしてきた。
場所はクライブが泊まっていた部屋のリビングルーム。
今日の予定を確認するため集まっていた時だった。
「お前はまた…!遊びに来ているんじゃないんだぞ!すぐそうやって──」
「はいはい、分かってるよ〜。でもさぁこの為の余裕を持っての出発じゃないのぉ?しかも昨日今日含めた5日間の間、噴水広場付近で大々的なお祭りをやってるしさ。せっかくこのタイミングで来たんだから、楽しんでいこうよラエル〜」
「いや決してこの為ではないからな!」
ラエルさんの素早いツッコミさすがである。
でもお祭りかぁ…!
なんかもうお祭りって名前の響きからして心をワクワクさせてくれる。
たこ焼きとかわたあめとかたい焼きとかに似たものはあったりするのかな。
でもそこら辺までさすがにゲーム会社は考えてないか。
「リアンさん、大々的なお祭りって?」
私が気になって問いかけると、彼は待ってましたとばかりに笑みを深め、饒舌に語り出す。
「あのですねぇ、この時期は街の皆さんで白騎士様の勇姿を讃えるんです。何でかっていうとぉ、今から1000年以上前に黒龍っていうのが突如この地に降り立ってですね〜。これが世界を混沌、戦慄、滅亡にまで陥れたんですよ。まぁ破壊行為を繰り返したわけですね。で、沢山の人々が武器を手に取り立ち上がったんですが、挑んでは散り、挑んでは散りの連続。犠牲者が増えるばかりで、圧倒的な力に人々は全く持って歯が立たなかったわけです。だがしかーし、そんな中でとある白い鎧を身にまとった騎士様が現れます!そしてなんと自分の命と引き換えに黒龍を討伐したそうですよぉ」
「あー、大厄災って呼ばれてるやつか」
「それですそれです!」
クライブから出た大厄災という単語、私も前に家庭教師の先生から教わったことを思い出す。
【それは惨劇であった。】
【それは絶望であった。】
【それは終末であった。】
確か本にそんな三節があったはずだ。
その大厄災がどれほどのものだったのか、実際に見たことのない私には想像がつかない。
前世でも平和な日本に生きていた私にとっては、夢物語のような話だった。
けれど、これは実際に起きたこと。
それにこの世界は乙女ゲームの世界だ。
黒龍がまた時を経て現れる。そんな万が一が有り得るかもしれない。
そう思い、先生に一度聞いてみたことがある。
『黒龍は一体どこからやってきたのか』と。
だが、やはり先生もそこまでは分からないらしく、どの文献にも載っていないとのことだった。
「祭りがあるとは聞いてたけど、この時期だったんだな」
「そうなんです〜。最終日は噴水広場で花火が打ち上がって、皆で白騎士様ありがとう〜って感謝を伝えながら、今後とも街を守ってくれますように〜って祈るんですよぉ。ちなみに白騎士様が黒龍を倒したのがちょうど噴水があるとこらしいです〜」
「白騎士様は今も街の皆を、世界を見守ってくれているんですかね」
「さぁ〜。もう生まれ変わってるんじゃないですかねぇ?僕だったら自分の命と引き換えに世界を救うなんて、そんな大層なこと出来ないですけどぉ」
「お前よく騎士になれたな…?」
同じ騎士ながら、そういうことをはっきりと言ってしまうところはリアンさんらしいというべきか。
クライブも呆れているし、ラエルさんは青筋を浮かべている。お母ちゃんガチギレすると怖そう。
「ぼ、ぼ、僕は憧れる、けど……。み、、みんなを命懸けで、ま、守るなんて、すごいなって…。き、騎士の鏡…っていうのかな……う、羨ましい……」
今まで黙って聞いていたジェスさんが途切れ途切れながらも口を開いた。
彼は今日も絶好調なネガティブオーラを漂わせている。
意外と正義感があるっぽいけれど、私はなんとなくこの後の言葉が予想出来た。
ラエルさんはリアンさんとは違いまともな発言をするジェスさんに感激していた。
「ジェス…!そうだよな、騎士の鏡だよな!分かってくれて嬉しいぞ。共に白騎士様みたいに立派な────」
「で、で、でも僕には……む、無理……!り、リアンや、ら、ラエルみたいにっつ、強いならまだしもっ……!」
「は!?お前も十分強いだろう!」
やっぱり……。ジェスさんは何かと自分に自信がないらしい。カーヴァーさんの訓練を生き延びただけで実力は折り紙付きなのに。
ラエルさんは、「この場に騎士としての志を持ったものはいないのか…」と呟き、はぁぁと深く溜息を吐いた。
「まぁまぁお堅いラエルはそこらに置いといてぇ。シノ様行きたいですよね?ね?」
「えっ」
「行きたくないですか?美味しいもの沢山ありますよぉ?甘いものお好きでしたよね?」
リアンさんがラエルさんから私に目を向けると、私に聞いてきた。お、押しが強い。
というか何故食べ物で釣れると思っているんだ。そんなので釣られるわけが、そんなわけが、じゅるり…。
何十秒かの思考の末。
「い、行けるなら行ってみたいです…」
「よっしラエル!シノ様が行きたいってぇ!」
リアンさんが勝ちを確信した瞬間であった。
ラエルさんは再び溜息を吐くと、なんとか気持ちを切り替えたのか、私に顔を向けた。
「道中何が起こるか分からないので、寄り道はせずに行きたいところでしたが、まぁリアンの言う通りまだ余裕もあることです。この時しか味わえない雰囲気や楽しみがあります。時間に限りはありますがシノ様が行きたいのでしたら是非行ってみましょう」
「えっ、いいんですか…?!」
「はい」
「良かったなシノ。ラエルは時間に厳しいのに」
やり取りを見守っていたクライブがにしっと笑うと、
「それはリアン達が毎度遅刻するからです」
彼は二人を睨みながら言い放った。
リアンさんはへらっと笑いながら「あははいつもごめんね〜」と一言。
軽いな。
でも白騎士様のお祭りかぁ。
この宿に着く前にも、リアンさんが「なんかやたら人が多いね〜」と話していた理由はこれだったのか。
何があるか楽しみだなぁ。
私が思わず顔を綻ばせていると、リアンさんがくすくすと笑いながら、私の頭に手を伸ばし、撫で始めた。
「?」
するとラエルさんとクライブとジェスさんがすかさず声を荒げる。
「なっ、おいリアン!友達のように気安く触るんじゃない!不敬だぞ!」
「ちょ、シノの頭撫でんな!」
「ぎゃっ…リアン…っ!ぼ、ぼ、ぼきゅっ…も!」
「もー。三人ともうるさーい」
リアンさんは三人の言葉を意に介さず、私の頭を撫で続ける。
そんな彼の手つきは意外にも優しい。
堅物なラエルさんがあれだけ言う人だから、もっと適当に撫でるような人だと勝手に思っていた。
とりあえずされるがままにされていると、彼は身を屈めて、椅子に座る私に目線を合わせながら口を開いた。
「ねぇシノ様、お祭り楽しみだねぇ。時間はそんなにないけどさ、回れるだけ回ろうね〜」
「…!はい!」
私が笑顔を向けると、彼はいきなり片手で顔を覆い、呟く。
「はぁ〜〜〜可愛い」
「!?」
その一言を言ったすぐ、他三人の手によってべりっと引き剥がされたリアンさんなのであった。




