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24.???

※???視点

※暴力等表現がありますので、苦手な方はバックしてください。

 




「なぁ、最近気になる噂を耳にしたんだがよお」


「……」


「どっかの貴族様の誕生日にすんげぇ美人ちゃんがいたってさぁ」


「……」


「いいなぁ。金になりそうだなぁ。がっぽり稼げそうだよなぁ。あっちのお偉いさん達は面食いだからなぁ」


「……」


「《洗礼》の内容によっちゃあ、もっと金が手に入るだろうなぁ。どんなのかなぁ、なにを持ってんだろうなぁ。お偉いさん達にやる前に俺が味見するのもいいよなぁ」


「……」


「この間の奴は顔はまぁまぁ良かったが、()()が微妙だったからなぁ。それなりの値段にはなったけど、クソ煩かったしよお。わーきゃー泣き喚きやがって」


「……」


「……………なんとかいえよッッ!!!!」


 ガンッと男が手近にあった酒瓶を投げると、それは壁にぶつかり粉々と破片が散らばった。

 中に入っていた液体が絨毯に染みをつくり、瞬く間に葡萄酒の匂いがその場を埋め尽くす。

 男の態度は今に始まったことじゃない。


(あぁ……嫌だ……。)


 広い室内は何種類もの酒瓶、食べかけてそのまま腐ってしまった料理、適当に積まれ乱雑している金、そして男が度々起こす癇癪でかなりの荒れようだった。


「おいおい、まーたお前のせいで絨毯が汚れちまった」


「……」


「まぁいいや。人形が口聞かねぇのは当たり前だしなぁ?俺は心が広いからなぁ」


 男は椅子から立ち上がると、ゆったりとした足取りでこちらにやってくる。

 そして手に持っていた煙管を口に咥え、自分の顔にふーっと煙を浴びせた。


「げほっ……!!ごほっ…っくっ…!」


 目に煙が沁みて涙が出る。鼻や口からも一斉に入り、むせこんだ。

 男はニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべながら、こちらの顎を煙管で上に向かせる。


「お前は顔も()()もいいのになぁ。愛想が全くねぇからなぁ。けど売るには勿体ねぇから、俺に飼われるくらいがちょうどいい。捕まっちまって可哀想になぁ」


 そう言って自分の首元に顔を近づけると、そのまま舌を這わせた。

 ざらざらとした感触にたちまち鳥肌が立つ。


「…ッ…!!」


「ふっ……ふふっ……滑稽だよなぁお前はよお」


 言い返したくても言い返せない。

 だってこの男との契約は半永久的に続くのだから、言い返したところでもっと酷い目にあうだけ。

 これから先もずっと、ずっと、ずっと、自分にかけられた見えない首輪に苦しめられる。

 心も体もこの男に遊ばれ、すでに精神はボロボロだ。

 いっそ死ねたら良かったのにと願うほどに。


(こいつが、こいつに逆らえない自分が、この現状の全てが嫌だ……。)


 男は少し身体を離すと、こちらの顔を覗き込みながら言った。

 まるで愉しくて愉しくて仕方がないというように。


「なぁお願いがあるんだけどよお」


 その言葉に自分の身体が震える。


 何度目だろう、このお願いを聞くのは。

 このお願いをあと何度きいたら、自分の命よりも大事なあの子は帰ってくるんだろう。

 あと何度……。


「そいつを俺んとこに連れてこい。死にかけでもいいぜぇ?傷を治せるやつならいるしなぁ。まぁ血が出てた方が俺にとっては好都合だけどなぁ」


「……彼女の周りはかなり手強い人物が何人もいます。難し、」


 今までの標的と違い、あそこの家は一枚岩ではいかない。

 剣豪で知られるバルド・サンプソンに加え、シールズ家の騎士達も強者揃いだ。

 だからこそ難しいのでは、と言おうとした口は、男の手に顎ごと勢いよく掴まれ、頭を壁に叩きつけられた。


「ぃっ……!!!」


「おいおいおいおい人形のくせに口答えすんのか?あぁ?手強い奴らなんて知ったことかよ。俺が欲しいっていったんだよ力を何でも使って取ってこいよ駄犬が。あいつの命運もよぉ俺に握られてんの分かるよなぁ?お前の働き次第ですぐに殺せんだぞぉ」


 男が手を退けると、自分の体は重力に従い床にドサッと落ちる。

 痛みに顔が歪んだ。


「しょうがねぇなぁ?俺の駒をやるよぉ。そしたらちゃあんと仕事出来るだろぉ。上手くやれたらご褒美をやるよぉ、俺は飼い主だからな!はははっ」


 そのまま男は自分の後ろにある扉に向かうと思いきや、最後に腹を蹴りあげてから去っていった。


「ぅぐっ……!」


 バタンと扉がしまる。

 痛みに、そして自分の状況に、堪えていた涙が溢れてきた。

 男がいなくなった部屋には、自分の嗚咽混じりの声だけ響く。

 まだ今日はお腹を蹴られただけマシだったが、この間はもっと酷かった。




 けど次は。

 彼女を連れてこなければ。

 きっと男の機嫌を損ねることになる。

 そうなれば前のように身体中切り裂かれるかもしれない。骨を砕かれるかもしれない。肉を絶たれるかもしれない。

 何回も死を覚悟したのに、あの男はそれを許さなかった。

 死の瀬戸際で回復魔法を男の手下にかけられ、何度も何度も地獄のような時間を繰り返された。

 あれをまたやられたら今度こそ精神が壊れてしまう。

 それこそ本当の人形のように。


(あぁ……神様、どうか……どうか……)












 ───────あの子だけでもここから救い出して。







ブックマークや評価ありがとうございます!!

とても励みになっています(*ˊᵕˋ*)

この物語が誰かの楽しみになっていれば幸いです✨

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