21. 思惑
※アルフレッド視点
2話目のカースト等級若干書きかえました。
六等まで増えていますので、お時間ある方は読み直していただきますと幸いです(* .ˬ.)
まだ日が昇っている中。
クライブの誕生日パーティーが急遽お開きになったことで、王城に早めに戻ることになった。
僕は肘掛に頬杖をつきながら、窓の外を眺める。
本来なら夜会が始まる手前で帰るつもりだったが、自分としては彼のパーティーにわざわざ出向いた目的をすでに達成していたので、早く帰城することに何ら問題はない。
馬車に揺られる道中、自分が座っている場所の隣に置いてある大きめな袋を横目に見る。
袋の中にはクライブに貸していたモニターが何個か入っている。
入りきらなかった分は信頼できる使用人に任せてあり、後から自分のところに運んでくれる手筈だ。
まぁ僕は魔術師様にこれを渡し、すぐにでも取り出してもらいたいものがあったため、今回のことはむしろ都合が良かった。
それにしてもドルイド家には本当に困ったものだ。
クライブの大事な幼馴染であり、ハールの契約者であるシノに対して無礼を働くとは。
彼女をよく知っている訳ではないけれど、クライブとバルドから聞く話だと見目が良いだけの深窓の令嬢とは真逆の、むしろ男勝りな子であるとのことだ。
話を聞いたとき、思わず笑ってしまったのはしょうがないと思う。
だっていくら男女平等を掲げている我が国でも、騎士になりたいという令嬢は見たことあれどそのためにあのバルドに教えを乞う女の子なんて見たことなかったからだ。
バルドは顔はいいが、あの喋り方だ。だがその口調で侮ってはいけないくらいかなりスパルタである。
僕自身、彼が王家に雇われていた頃に少しの期間だけだったが教わっていたことがある。
何がなんでも一回やったことは最後までやってやろう精神の僕は死にそうになりながらも、ほぼ意地だけでバルドの指導についていっていたが、彼は本当に容赦なかった。
後から聞いた話だが、彼曰くなんでもサラッとこなし、口も達者な僕にムカついたらしく、無意識下に匙加減を間違えたとのことだ。
僕もそれを聞いてムカついたために、感情に左右される師匠ってどうなんですかね?差別は良くないですよとにこにこと当たり障りなく言ったのに、次の日笑顔で僕を迎えた彼から容赦のない指導を受けた。
は?意味わからんこのくそ師匠。となったのは言うまでもない。
ちなみにクライブとは、シノが魔剣を贈りたいといった人物だったのでどんな人なのか自分の目で確かめるために、偶然を装って僕から声を掛けた。
話してみると、見た目の割に(失礼)冷静に物事を捉えられ王太子である僕に対しても意見を臆せず言うし、他愛ない話も普通にしてくれるし、剣技もバルドにほぼ毎日教わっているだけあり僕以上に強い。
あとは幼馴染の話になるともっと饒舌になる。
とりあえず関わってきた感じだと彼ならきっと魔剣の扱いにも気をつけるだろうと結論付けた。
ドルイド家が問題を起こした時。
モニターから会場の様子を見ていた僕は、会話の内容までは分からなかったものの、クライブやカーヴァー、バルド達は相当怒っていた。
というか皆殺気を放っていたのだが、ドルイド卿は危機察知能力がかなり壊れているようで、そっちの方が驚いた。
まぁ息子の方はしっかり怯えきっていたが。
後からバルドに事の顛末を聞き、自分自身も怒りを抱いた。
「早いとこ証拠を見つけないとな」
彼等があれだけ威張っている理由は、財力が他とは圧倒的に違うからだ。それこそサージェント家とは比べるまでもないくらいに。
ドルイド卿は数十倍といっていたらしいが本来は数百倍くらい違う。
シールズ家も財力だけでみればドルイド家には負ける。けれど当主であるカーヴァーは第1騎士団の団長という王家の信頼の証である立場の上に、彼等にとって商売相手だ。今回彼も話に入ってきたことで、さすがのドルイド卿もオスカー卿に対して大きく出られなかったようだが。
しかしドルイド卿が首都で指折りの権力を握っていると自慢したのは全く誇張などではなく、事実だった。
だからこそ、その権力を握る過程のお金がどこから出てきているのか疑問が湧く。
彼等の家はまだ二世代目なのに、あっという間に財力を、そして首都の権力を築き上げていった。それこそ違和感を覚える程に不自然に。
ドルイド家が何の事業を行っているのかも、どこに投資しているのかも分かっているのだがその程度では彼等の有り余る金にはならない。
しかしドルイド家が成り上がってきたくらいのその時期からである。庶民から行方不明者が少しずつ出始めたのは。
最初は魔物にでも襲われたのではと思ったが、なんとなく違う気がして、自分で調べてみた。
確かに過去に何回か騎士団が討伐し損ねた魔物に庶民が遭遇し殺された例もあるにはあった。だがカーヴァーが騎士団長として就任し指揮をしている今は有り得ないはず。
それ程に彼の攻撃範囲、視覚範囲、そして聴覚範囲は広い。
だが、行方不明者が頻繁に出るようになると、なんとなくではなくおかしいと思わざるを得なくなる。
しかも庶民だけでなく3年前からは貴族からも何十人か消えている。
王家も協力して捜索し続けているものの、誰一人まだ見つかっていないのだ。
僕としては、この国で禁じている闇事業に手を出しているのではと確信めいた疑惑をドルイド家に持っているが未だに証拠がない。彼等を潰すには絶対的な確証がなければ躱され逃げられてしまうと思っているため、確実なものが必要だった。
闇事業とは、一般市民や貴族を攫って奴隷に落とし、他国に売り捌くことで多額の金を得るものだ。
人権も何もあったものではない最低最悪な行為である。
しかし他国のアルカシアやローレルはこちらとは違い、奴隷制度があるため、売り捌かれてしまえば王家でも手が出せない。
父上もそれを疑っているらしく、王家の有能な間者を送っているが彼等をもってしても何も掴めないあたり、ドルイド家だけが問題ではなく他に裏で指示を出す策士が関わっている可能性も出てきている。
ドルイド卿だけなら早々にボロを出しているはずだ、今回のように。
一体誰だ。ドルイド家の裏にいる奴は。
はぁと溜息を吐き、流れる景色を目で追う。
「……シノが目をつけられなきゃいいのだけど」
─────自分の一言がまさか現実になるとは、この時の僕はまだ知らなかった。
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王城に戻った僕は父上に簡潔に今日の出来事を報告してから、モニターが詰められた袋を持ってすぐにとある場所に向かった。
そこは王城から少し離れた所にあり、侍従達や騎士達が休む離れとはまた別の建物である。
見た目こそ、この場にそぐわない小さなあばら家だ。
なんといっても厳かな王城の敷地内にあるのだ。
そぐわなすぎてむしろ目立つ。めちゃくちゃ目立つ。
だが扉を開くと地下へと続く光沢のある階段が目に入る。
外もこんな感じにすればまだマシなのにと心の中で思う。
明かりも一定間隔につけられているためそれほど暗くはない。
慣れた足取りで階段を下っていくと魔術式が組み上げられている重厚な扉の前に辿り着く。
僕は右手を前に出し、その扉に触れると微弱な魔力を流し込む。
すると扉に書かれた魔術式が淡い光を放つと同時にギィィと自動的に開いた。
中に足を踏み入れると、所々に本が積み重なり、様々な書類や計算式が書かれた紙が散乱する足の踏み場がないくらいの汚部屋が広がっていた。
そしてその汚部屋の一番奥に、机にかじりつきひたすらペンを動かしている黒いローブを纏った小さな人物がいる。
「…………………はぁ」
本日二度目の溜息。いやこれはもう吐かざるを得ない。
なんていったって自分が昨晩片付けたばかりなのだ。
何故こうなる。どうやったらこうなる。
あんなに綺麗にしたのに何故毎回こうなる。
そもそも国の王太子に部屋の掃除をさせるなど、本当にどうかしている。
いや頼まれた訳じゃないけれど!
僕が勝手にやってるだけなんだけど!
散らかってるとどうも気になってしまう自分が悪いのだけど!
そんなことを心の中で思いながら、なんとか足の踏み場を作り、その人物の元に向かう。
まだ僕に気づいていないのか、彼女は黙々と作業を続けている。
僕は持っていた大きめの袋を床に置くと、彼女の後ろからそっと近づき耳元に小声で囁く。
「………ねぇ、昨日片付けたばかりなのにどうしてこんなに散らかってるの」
「ぎゃッ!!!ご!!ごめんなさい!!!」
彼女はびっくりして頭を思い切り横に振り向いた。
まさか真横にブンと振り向くとは思わず、避け損ねた僕。
「「〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!!」」
当然耳元に近づいていた僕と衝突し、僕は顔面を、彼女も顔面を。
二人同時に痛みに悶えた。
そして数分後。
彼女は僕に土下座をしていた。
「たいっへん申し訳ございませんでした…っ!!!いつの間にか本当にいつの間にかこの有様でして……あの、いつも片付けて下さって本当に感謝しかないです、はい。あとぶつけちゃって、本当にすみません……すみません……」
彼女は透き通るような銀色の長髪を床に広げながら、罪人のようにひたすら謝っていた。
まぁ、うん。本来なら不敬で連行されることをたくさんしてるから罪人ではあるよねほんと。
「いやいきなり話しかけた僕も悪いし、別に怒ってないよ。すぐに汚部屋にしたことも怒ってないし。どうやったら昨日の今日でこんなになるんだろうなって不思議に思っていても何にも怒ってない」
「めっちゃ根に持ってるじゃないですかぁ……」
「というわけで、お詫びに今から僕の頼み事聞いてもらっていいかな?」
「えっ、またそれ無茶いうやつでは……あのお手柔らかにお願いします…」
顔を上げた彼女は涙目である。
うるうるとした瞳に見上げられると、なんともいえない気持ちになる。
むしろ片付けてもすぐ汚部屋にされる僕の方が泣きたい。
ちなみに僕と同い年でもある彼女は、父上も認めるほどの凄腕魔術師だ。
ある日突然僕の前に現れ、力を貸してくださいと頼みこまれたのは記憶に新しい。
そしてあっという間にこの王家の土地にこの場所を作っていた。
しかも入れる人は扉に書かれた魔術式にその人物の魔力を記憶し、それに一致したものだけが入れるというものだ。現段階だと僕と父上、そしてハールである。
ハールをここに入れたのは僕の希望で彼女は最初は渋っていたものの、彼がある人の専属鍛冶師になったことを伝えたら即OKを出した。何故。
「それで、頼み事とは?」
僕は彼女に促され、床に置いていた袋からモニターを手に取り口を開く。
「この中に入った魔力を取り出してほしいんだけど」
「うエッ!!無理です!!無理よりの無理です!!!モニターの中に魔力を溜めることは出来ますが、取り出すのは不可能に近いですよ!分散して消えちゃいます!」
「不可能に近いってことは、もしかしたらもしかすると可能になるかもしれないってことだよね?君なら出来ると思うなぁ」
「〜〜〜〜腹黒めっ!」
「ははっ!今さら知ったのかい。でも必要なのは本当。この魔力をモニターに注いでくれた彼に勘づかれずに魔力をもらうにはこの方法が一番最適だったんだよね。ハールが打つ剣に必要なものなんだ」
僕が事情を説明すると彼女はグズグズと鼻をならしながら、溜息を吐いた。
「うぅ……分かりましたよぉ……魔力が剣に必要なんてよく分からないですが出来る限りやってみます…。出来なくても怒らないでくださいね」
「大丈夫!出来るよ!自分を信じて!」
「出来ること前提…っ!?おかしいおかしいよぉ…」
そうしてまた床に突っ伏して泣き出した彼女。
僕はとりあえず了解を得られたので、泣いてる彼女は放置し散らかった汚部屋の片付けを再度やり始めた。
今度こそこんな有様にしないでくれよと祈りながら。
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