16. 触れてもいいのは
ブックマークありがとうございます!
タイトル大幅に変更させていただきました。
もし面白いと思っていただけましたら、評価していただけますと嬉しいです☺️✨
クライブの言葉で皆一斉に、
「「「「「乾杯!!!!!」」」」」
と声を上げた。
11歳とは思えない堂々とした振る舞いに周りから拍手が飛び交う。
彼がステージから下りると後ろに引いてあったカーテンが上がり、楽団が姿を現した。
そして指揮者の合図で音楽が奏られ、一瞬にして華やかな空間に場が染まった。
招待客(特に娘を連れている人たち)は我先にクライブに挨拶しようと彼の周りに集まっているが、彼は今自分のお父様カーヴァーさんとお話しているので次に誰が声をかけるのかと睨み合っている。
まぁ一応二等の人から挨拶をしていくっていうルールというかマナーはあるのだけど。とはいえ例外もあって、三等でも当人と仲が良ければ先に挨拶して良かったりとか。
絶対的なルールではないから、そこら辺の線引きが難しい。
なんかあやふやなんだよねこの世界…。
ヒロインが攻略対象者に話しかけやすくしてあるんだろうな、たぶん。
なんてったって仲が良ければ優遇されるんだから。
騎士の家系であるクライブは、同い年である王太子の側近になる可能性が高いと噂されているらしく、皆どうにかして縁を繋ぎたいんだろう。
あわよくば自分の娘が見初められれば、と期待しながら。
ちなみにカーヴァーさんは国の第1部隊を統率している騎士団長様だ。
絶対忙しい身の上なのにクライブの誕生日ならとにかく私の誕生日も必ず一緒に祝ってくれる優しいおじ様である。
「あらま、あっという間に人気者ねぇクライブ。シノちゃんも行く? まぁもし行かなくてもあいつの方からどうせやってくるでしょうけど」
「せっかくクライブがいろんな人とお話出来るのに、割り込んで邪魔したくないのでひとまず落ち着いてからにします」
「邪魔なんて一欠片も全っ然思わないと思うけど、シノちゃんがそういうなら分かったわ」
「それなら私達と歓談しながら待つというのはいかがですかな?人の波が落ち着いてきたら一緒に向かいましょう」
「あ!いたいた!シノ〜!」
テイラー様がそう提案してくれたその時、お父様の声が聞こえた。
振り返るとお母様と腕を組みながら優雅に歩いてくる。
「用事が終わったら向かうって、後から合流するそうよ」って師匠が言ってたんだった。
「カーネストも一緒だったのか。先日ぶりだが事業の方は無事落ち着いたかい?」
「ああ!お陰様でなんとか切り抜けられたよ。オスカーの助言がなければ、未だに慌ただしくしていただろうね」
「ふふ、君の力になれたようで何よりだ。それより隣にいるのはジャックの弟さんかな?話には聞いていたが、会うのは初めてだね。私はオスカー・サージェントだ。君のお父さんに世話になっているから、これから会うことも増えるだろう、よろしくね。そして私の妻のアステルだ。」
「…エドワード・テイラーです。よろしくお願いします。」
お父様に話を振られたエドワードくんは私の時と同じように無愛想に返した。
人と話すの苦手なんだろうな。というかこういうパーティー自体が好きじゃなさそう。
私が彼らの光景を眺めていると、いきなりお父様が私の肩に手を乗せてきた。
「…っ!?」
「そしてそして私たちの大事な一人娘のシノだよ!自己紹介はもうしたのかな?どうだいシノは可愛いだろう?可愛いすぎて天に昇れそうなくらいだろう?実は天使なんじゃないかと思うくらいだよね!本当は誰よりも1番にシノのドレス姿を見たかったけれど用事があったからね…でも速攻で終わらせて会場着いたら、世界一可愛いお姫様がいて見惚れちゃったよ!お父さんシノが悪い男に狙われないか心配だよ…グスングスンッ…。この間なんかさ…(省略)」
うわお…とんでもない親バカが姿を現してしまった…。恥ずかしい…恥ずかしいよ…。
さっきより早口で鼻息ふんふんしてるし。
ちなみにグスングスンは泣いてない。口で発してる。
いやね褒めてくれるのは本当に嬉しいけど、お父様気づいて…エドワードくんめっちゃ引いてる顔してるの…。
止まることない私の可愛さアピールに絶句しているよ…。
そう思っていたらお母様がお父様の肩に手を置き、
「オスカー、私たちの娘が一番可愛いのは貴方の力説で十分伝わりましたよ。さ、エドワード様が反応に困っておりますから、それくらいにして上げてください」
「ハッ!悪いねエドワードくん!シノのことになるとついつい喋りすぎてしまうのは悪い癖だ。アステルに止めてもらわなくても大丈夫なようにしたいんだが…なかなかこれが難しい…」
「…ついさっきもどこかで聞いた言葉ねぇ」
私の後ろでボソッと一言師匠が言った。
あぁカーネストさんも言ってたっけ。
どっちもお喋りが好きらしいから、似た者同士なのかもしれない。
「はっはっはっ!本当にオスカーの家族愛には毎度驚かされる!学生時代からアステル一筋だったからなぁ」
お父様はテイラー様と学生時代からの付き合いだったんだのか。
なるほど親しげな訳だ。
話が切り替わったため、私は顔を覆いたくなるくらいの羞恥心から解放されてホッとした。
不意に視線を感じて、エドワードくんを見るとなんかじっと私を見ていた。
あ、初めて目があった。
ほぇーきらきらとした綺麗な目をしてらっしゃる。
そしてボソッと一言。
「…なんていうかすごい人ですね」
「そうですね。すごい人たちなんです」
これまた私たちの会話はこれ以上広がることはなかった。
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テイラー様たちと話してる途中何人かとも話をした。というか割り込んできた。
その間テイラー様たちは「少しばかり離れておりますね。クライブ様にご挨拶に行く際にまたお会いましょう」と言って、他家の方々の方に行ってしまった。
主に子息を連れた人たちが多くて、ある人は「息子はまだ婚約者が決まってないんですよ!書類仕事は苦手ですのでやらせるつもりはないけど、人を守る強さは人一倍ありますわ。深窓の令嬢のようなシノ様とお似合いなのではないかしら」
とか
またある人は「そういえばまだサージェント家のお嬢様は婚約者がいないと聞いておりますが、どうです?このくらいの見目の麗しさであれば長男に見合うかと思いますが、嫌でしたら次男でも良いですぞ」とかとかその他にも失礼な人が何人か。
いやいや書類仕事全任せな脳筋野郎なんて絶対嫌だし、というか深窓の令嬢って誰それ。私ちゃうよそれ。
ある人は上から目線でいうし私が息子に見合うとかほんと何様?俺様?
しかも各々の息子たちは頭から爪の先まで私を値踏みするように見てくる。
それが何人も続いていて、エドワードくんの無愛想な感じが恋しくなった。
この国は政略結婚もあるにはあるけれど、基本恋愛結婚が主流だったりする。
まぁあまりにカースト差が激しいようだと、ちょっと?いやかなり色々な手続き云々が難しくなるらしいけれど、出来ることには出来る。だってヒロインちゃん五等だけど王太子ルートだと普通に添い遂げられるしね。
だから若いうちに婚約者を〜とかいう考えは何十年か前の話なのだが、今でもそういった考えを持つ人は一定数いるようだ。恋愛結婚反対派的なね。
まぁそんなことを言う人はお父様やお母様が即座にお断りをいれているけれど。
『シノが心の底から一緒にいたいと思える人が出来たら結婚しなさい』と私の意見を尊重してくれる二人には感謝しかない。
出来るかは分からないけれどね。
師匠もこめかみをピクピクさせて、顔はにこやかなのに雰囲気からして確実に怒っていた。
でもしつこい人は本当にしつこい。
正にいま目の前にいるドルイド家はまじでしつこい。
そうあの師匠が出来るだけ関わらないようにしなさいねと言っていた家である。
まさかの相手から寄ってくるとは。
面倒臭いったらありゃしない。
お父様とお母様はさっきからやんわりと断りをいれているのに、あまりに諦めが悪いドルイド家に作り笑いすらやめている。
師匠からは小さくチッと舌打ちが聞こえた。
そんな私たちに気づかないのか気づいてないフリをしてるのかドルイド様は話を続けた。
「いやぁ今息子のマクスは11歳ですしねぇ。文武両道でそれはそれは優秀なんですよ?しかも見目も良いときた。あぁ、そういえばシノ嬢も剣を扱えるとか。息子も毎日剣を振るっておりましてなぁ。息子と共に鍛錬等はどうでしょう?そして互いに高め合っていけるそんな婚約者でもありライバルでもある関係というのは素敵では?」
「はは…そうですかねぇ…」
「僕もそんな関係を築けたら素敵だと思います!さすがです父様」
もう何度聞いたか分からないドルイド卿の息子自慢+婚約者の打診。そして毎回肯定し私をねっとりと嫌な目で見つめる息子。
そんな二人に乾いた笑いを零しながら、チラリとクライブの方を見るとまだご令嬢方がわらわらとしている。
彼はにこやかに対応しているようだが、疲れてるように見えるのは気の所為ではないだろう。
ドルイド家に視線を戻し、話を右から左に流しながら、私の意識は違う方にいく。
クライブと話したいなぁ。
この1週間、時期シールズ家当主である彼は今回からパーティーの段取りやその他諸々の準備をカーヴァーさんに教わりながらも自分で取りまとめていたため忙しく、一度も会えていなかった。
毎日のように一緒に勉強や剣術をやっていたからか、たった1週間会えなかっただけで寂しく感じる。
まだお祝いの言葉も言えてない。
本当は一番に言いたかったのに、前世からそうだったけど、つい遠慮して他人に譲って。
別に遠慮しなくても一番に言いたいなら言いに行くことは出来たのに。
師匠の言う通りクライブなら迷惑だなんて思わないことを知っているのに、自分より可愛い子たちを見て怖気づいてしまった。
「ドルイド卿、いい加減にしてくださいますか?貴女方の婚約話をこちらは受けるつもりはありません」
「ですがね、オスカー卿。同じ二等同士です。悪い話ではないでしょう?こちらは財力に関しては貴女方よりも数十倍ありますぞ。今よりもっと良い暮らしが出来ます。世界に数個しかない宝石を買うことも、もちろん屋敷だって好きなだけ建てられる。何がご不満なのです?」
お父様が再度断りの言葉を口にするが、彼はまだまだ食い下がらない。
「私たちは今の生活で十分幸せです」
「……首都のネルカで指折りの権力を握っているドルイド家が、見目が良いだけの田舎娘をもらってやろうというのにその態度か」
「…っ!貴方は自分の言う通りにならないからと私の娘を侮辱するのか…!」
お父様が今にも掴みかかりそうな雰囲気になると、息子のマクスが私に言葉をかけた。
「シノ嬢、父様の言う事を聞いて僕と婚約しましょう。大丈夫です、僕動物とか可愛がるの得意なんです。だからシノ嬢のこともたくさん可愛がってあげられるから君もすぐ僕のことを好きになりますよ。だから、ね?」
そういって彼は私の手に触れようとゆっくりと片手を伸ばした。
私をペットのように扱うつもりなのか、尊厳を踏みにじるような発言に腹が立つと同時に、彼のねっとりとした視線が身体にまとわりつくようでとても気持ち悪い。
今すぐこの手を引っ叩いて『ふざけんな!!』と罵倒を浴びせたい。
でもそんなことをしたらきっとドルイド家は息子を傷つけられたと我が家を非難するだろう。
どうする?どうしたらいい?
あの手に触れられたくない。
嫌だ、嫌だ、嫌だ。
彼の手が私の手を掠めたそのとき。
いきなり肩を掴まれ、ぐいっと後ろに引っ張られると背中にトンと誰かの体温を感じた。
誰かなんて見なくてもすぐ分かった。
「ドルイド卿、そしてご子息殿。私も貴女方のお話に混ざっても宜しいでしょうか」
クライブはにっこりと笑いながらも殺気を放っていた。




