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15.誕生日パーティ(2)

ブックマークありがとうございます;;✨


 




 師匠に手を引かれながら、目と鼻の先にあるクライブの屋敷に向かうその途中。

 煌びやかな馬車が入れ替わりで何台も通っていく。そんな見たことない光景に、目をキョロキョロさせてしまう。

 前世では絶対に見ることが出来なかったので、改めてお貴族様の家に転生したんだなぁとしみじみする。


 すごい。特にあのキンキラキンな馬車はおいくら万円するんだろうか。

 うちの馬車は性能こそ長けたものだが、見た目はシンプルで値段もものすごく高い訳ではない。(そりゃ前世の感覚でいったら、現実逃避したくなるような値段だが、あくまで他の階級の貴族様と比べたらである)


 サージェント家は皆華美なものより、シンプルながらも品が良く、質の高いものを好んでいる。

 そんなうちの馬車とは真反対である豪華絢爛なその馬車は装飾に混じり家紋もどかーんと大きく描かれており、全てにおいて目が痛くなるくらいだ。

 まぁ、なんというかお金にものを言わせたぶっちゃけセンスなし馬車である。


「やーねー、どこの馬車よあれ。目が痛いったらありゃしないわ。んー…あの家紋は……ドルイド家のものだったかしら」


「ドルイド家?」


「えぇ、お金でなんでも解決しちゃう低能なお貴族様よ。確かクライブと同じ年代の息子と娘がいたはずだわ。あまり関わらないようにしなさいね。私が隣にいるから大丈夫だとは思うけど」


 私の耳元に口を寄せながら小声で師匠が答える。

 割と寛容な彼がそこまでいうのだから、相当なのだろう。

 というか昔関わったことでもあるのかな。


「師匠はドルイド家の方と話したことがあるんですか?」


 ちょっと気になって質問すると、師匠は苦虫を潰したような顔になったので、聞いちゃいけないやつだったかなと焦る。


「…ちょっとだけね。とりあえずろくでもない奴らよ」


 それだけ言って師匠は言葉を切った。

 これ以上は言えないということだろう。


「分かりました。出来るだけ関わらないよう気をつけます」


 何があったのか気になるが、無理矢理聞くのはいかがなものかと思ったので私がそういうと、さっきの顔から一転してニコニコとしたいつもの顔の師匠に戻った。


「ふふ、いい子。やっぱり私の子供にしたいわァ♡ もしも路頭に迷ったらすぐ私のとこにいらっしゃい。何でもしてあげるわ」


「ぷっ、そんなことないと思いますけど、もし本当にそうなったらお願いします。あと自分のことは自分でしたいので何でもはしなくて大丈夫ですよ?」


「あらやだ、何でもしてあげたいのよシノちゃんには!あなたらしいけど可愛がりたい盛りの大人の楽しみを取っちゃダメよ」



 2人で笑いながら話していたら、クライブ家の使用人である中老のチャールズさんが近くに歩いてきた。

 この人はクライブだけじゃなく、私までも本当の孫のように優しく見守ってくれるおじいちゃんみたいな存在だ。


 チャールズさんは私たちに軽くお辞儀すると、


「ようこそいらっしゃいましたシノ様、バルド様。坊っちゃまからシノ様達をご案内するようにと仰せつかっておりますので、私めがご案内させていただきます。その前にシノ様、恐れながら一言よろしいでしょうか?」


「?大丈夫ですよ」


 どうしたんだろうと思い、首を傾げる。


「今日のシノ様は思わず魅入ってしまうほどお可愛いですね。坊っちゃまが倒れないか心配になるくらいに」


「へあっ!!?」


 突然のチャールズさんの褒め言葉に素っ頓狂な声を上げてしまう。

 師匠といいチャールズさんといい心の臓に悪い。悪すぎる。

 顔を赤くする私を見て師匠はクスクスと笑いを零していた。


「あ、あり、ありがとうございます…っ」


 私が吃りながらも感謝を伝えると、チャールズさんは優しく微笑んでくれた。




 ■■■■■■■■■■■■■




 チャールズさんに師匠と共にクライブの屋敷の大広間に案内された。

 以前きたときよりも装飾が豪華になっていたが、あのキンキラキン馬車とは違い品の良さが窺える。

 うん、やっぱりあの馬車はセンスがない。


 私が師匠にエスコートされながら大広間の扉をくぐると、すでに到着していた招待客が一斉にこちらを見てきた。


 うわ…師匠めちゃくちゃ大注目されてる…っ!イケメンだから見ちゃうよね、わかる。

 けど師匠が見られてると私も見られてるみたいに感じてなんとも居心地が悪いし、初めてこんなたくさんの人たちに目を向けられたから、パニックになりそうだ。


 私が内心ドキマギしていると師匠がさりげなく手をぎゅっとしてくれた。

 めちゃくちゃ緊張してることに気づいてくれたんだろう、師匠を仰ぎみるとにっこりと微笑んでくれる。

 まるで、この私が隣にいるんだから安心なさいと声に出さずとも聞こえてくるようで。


 大丈夫、大丈夫。

 自分にそう言い聞かせ、胸をはって会場を歩く。

 すると、子息を連れた初老の男性がやってきた。

 二人とも軽く会釈をし、最初に口を開いたのは口髭を生やした初老の男性の方だ。


「これはこれはサンプソン様ではありませんか!あの時は大変お世話になりました。ジャックが立派に成長したのも貴方様がいたおかげです」


「久しぶりねカーネスト。元気そうで何よりだわ。あれは成長したというのかしら?むしろ前より生意気度が上がった気がするけれど。」


 師匠とカーネストさん?が親しげに話す様子を見て、うちに雇われる前の話だろうかと黙って聞いていた。


 そういえば、いつの間にかサージェント家とシールズ家を出入りしてたんだよなぁ。

 で、これまたいつの間にか私とクライブの師匠になっていた。

 あれだけの剣技を持っているのだ、本当は王様の護衛だったりしたんじゃないのかな。

 妹のゲームの話で出てこなかったからよく分からないけれど。

 というかほんとなんで攻略対象者じゃないんだ。



「はっ!つい話し込んでしまいましたな。家内にお喋りは程々にと釘を刺されていたというのに。お嬢さん退屈させてすまなかったね。私はカーネスト。カーネスト・テイラーと申します」


「お初にお目にかかります、テイラー様。シノ・サージェントと申します」


 私は挨拶を返し、綺麗なカーテシーをしてみせた。

 基本的なマナーは普段の勉強で学んでいるのでバッチリだ。

 たしかテイラー家はお父さんと仕事で交流が度々あるって話だったような。

 付き合いは意外と長いと聞いている。

 でもいきなり私に振られたからびびったわ…。


「なんと君がサージェント家の?いやはやこんな見目麗しいお嬢さんだとは驚きました…!オスカーが可愛い可愛いと何度も自慢げに話すわけだ。ほらお前も挨拶をしなさい」


 オスカーとは私のお父様の名前である。

 まさか他家の方に自慢しているとは…恥ずかしすぎる…親バカっぽいとは思っていたけどほんとにそうかもしれない…。


 そう思っていると、テイラー様に挨拶を促された男の子が彼の後ろから出てきた。

 サラサラの茶髪に黒い目の子だ。髪色こそ平凡だが、将来確実にイケメンになることが確定している顔立ちである。なんかもう美少年だもん。


 この国イケメン比率やばない?どした??

 あ、乙女ゲーだったわ。


 男の子は私と目を合わせ…なかった。

 目だけキョロキョロとして最終的にたぶん口元あたりを見てる。

 あるよね、目を合わせたくないとき。そういうときは目の間を見れば相手は目が合ってるって錯覚するからバレないのに。


「…エドワード・テイラーです。よろしくお願いします」


「あ、よろしくお願いします」


「……」


「……」


 一言交わしただけで会話が途切れた。

 気まずっ!なんかめちゃくちゃ取っ付き難いんだけど!

 私も会話が得意なわけではないから、こういうタイプに何の話題を振っていいのかわからない。

 師匠もテイラー様ももう少し会話が広がるだろうと思っていたのか困った顔をしていた。


「ちょっとカーネスト。貴方のご子息は二人揃ってなんでこうも無愛想なのよ。うちのシノちゃんが困ってるじゃない」


「いやぁ…無愛想なのは認めるがいつもはもう少し愛想がありますよ。まぁちょっと気分屋だからね、悪い子じゃないんだが…」


 師匠たちがコソコソと何かを話し終えるのを横目で見ていたら、見かねた師匠が口を開けようとした。




 その瞬間、会場が暗くなり司会の人が主役の登場を知らせる。


 そして、大広間のステージにあたる部分の脇から本日の主役が出てきた。


 クライブは黒い光沢のあるブラックタイのタキシードを着ていた。

 11歳という若さなのに着こなせている、さすが攻略対象者。

 いつも以上に格好良く見える彼に目が釘付けになってしまう。


 すると私の視線に気づいたようにクライブがこちらを向き、目があった。

 それはほんの数秒だったか、クライブは一瞬目を見張るとすぐに私から視線をずらして言葉を紡いだ。


「本日は私の、クライブ・シールズの誕生日を祝うために遠方からも御足労頂いたこと、誠に感謝致します。皆様にも楽しんでいただけるようささやかではありますが、ソルテから直に取り寄せた珍しい食事やワインを揃えてありますので、ご満足いただけたら幸いです。それでは、乾杯!」


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