1.始まり
初心者です…!
宜しくお願いします(*ˊᵕˋ*)
「あれ…?」
ふと疑問に思った。
自分はなぜこんなところにいるのだろうと。
見慣れた制服、部屋、侍女、いつもとなんら変わりないはずなのに。
「どうされました?」
不思議に思った侍女のセリアが問い返してきた。
「いや…ごめん。なんでもない」
何を疑問に思ったのか自分でもはっきりしていない。
あともう少しで出てきそうなのだけど。
とりあえずいつもの通りに今日の予定をセリアに確認する。
「今日はクライブ様が」
「えっ、クライブ?」
セリアの言葉を遮り、クライブという名前に反応してしまった。
たしか妹が、と思ったがさて自分に妹はいただろうか?答えは否だ。
私は一人娘で兄妹はいない。
ではなぜ?と考えたとき、いきなり頭に衝撃が走り意識が遠のいた。
近くでセリアが「シノ様っ!?」と叫ぶ声だけが聞こえた。
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黒い髪の女の子が目の前にいた。
こちらに向かって笑いかけている。
誰?と問うまでもなく、彼女は『私』のよく知る人物だった。
「ねぇお姉ちゃん!これやってよー!
絶対ハマるからさっ」
本を読んでいた『私』の前に出されたのはあるゲーム。
「嫌だ。あんたの薦めてくるゲームって主人公の周りに男が何人も群がるやつばっかじゃん…。」
「群がるとか虫みたいに言うなし!これは神ゲーだよ攻略対象皆もうめちゃくそかっこいいの…!特にこのクライブっていう王子専属の護衛騎士が好みどストライクでさ、でも王子のアルフレッドも捨てがたいなぁ」
「聞いてないわ…」
嫌々ながらも妹の話を聞いていた。
笑顔でゲームの話をする妹は本当に楽しそうだったから。
かといっていくら薦められても自分でプレイする気は全くなかったが。
「あのね今回のやつは魔法学園と恋する乙女ってゲームなんだけど、」
「なによ、そのタイトルからして脳内花畑みたいな」
「そういうこと言わないの!中身はちゃんとしてるんだから。ってことでお姉ちゃんは見た目的には誰が好み??」
これもうやらせる気満々じゃん…と思いながら、妹が突き出したゲームのパッケージに写るキャラクターを見た。
で、あるキャラに目が止まった。
「なら私はこの子がいい」
そう言って指し示したキャラに妹は
「…え?いやそれ主人公やぞ…」
「見た目的に誰が好みって言ったじゃない」
「…お姉ちゃん女の子が好みなの?」
「はぁ?ちょっと、変な勘違いしないで…。断じて百合でないけど女の子に対しては素直に可愛いって思えるけど、でも男に対しての好みっていまいち分からないのよ」
「あー…それはそれは…」
妹が可哀想な子を見る目で私を見てきた。なんだよ。
基本恋愛に関してさほど興味がない私は、自分がどういう見た目の人が好みとかもよく分からない。なのでパッケージだけ差し出されて聞かれても特にないのだ。まぁ顔は整ってるなぁくらいは分かるのだが。
だから人に恋愛話を振られても、そもそも恋愛感情がよく理解出来てない私は答えられない。
なにそれ美味しいの状態である。
でも、1人だけ例外がいた。
いつの間にかそばにいるのが当たり前になっていた人が。
ふと頭に思い浮かんだ人物を振り払うように妹に質問した。
「で?あんたの好みのクライブってどの人?」
「えっ、うん!この人だよ。この赤茶色の短髪の人」
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「シノ様…!」「シノ!」と呼ばれ、ゆっくりと目を開いた。
自分が寝かされているだろうベッドの横にはセリアともう1人男の子が立っていた。
「旦那様と奥様にシノ様が目を覚ましたとお伝えしてきます。クライブ様少しの間シノ様をお願いしても宜しいでしょうか?」
「あぁ、大丈夫だ。」
彼の返事を聞くと走り出したセリアは扉の前で1度振り返り、
「…シノ様に手は出さないように」
と一言言い放った。
セリアが部屋から出ていくと、部屋には私と男の子の2人だけとなってしまった。
ベッドに横になりながら、男の子の顔を横目でちらっと見てみる。
赤茶色の短髪に整った顔。先ほど夢に見た顔に近いがあのパッケージに写っていたものより幼い気がするが気の所為だろうか。
思わずじーっと見てしまい、こっちを向いた彼と目が合ってしまった。
バッと目を逸らし、気まずいと思っていると
「俺の顔がかっこいいことに今更気づいたのか?」
耳を疑うようなナルシスト発言と笑顔をかまされた。
即座に
「いや特になんとも…」
と返してやった。
「なんだ、せっかくチャンスが巡ってきたと思ったのに。」
そういうと彼は大袈裟な溜息をついて、ベッドの横にある椅子に座った。
「…具合はどうだ?」
先ほどとは打って変わって真面目に問いかけてきたので、ちょっとびっくりしてしまう。
そうだ、彼はこういう人だった。
「大丈夫…。 ねぇ…クライブ…」
そう呟いた瞬間、何故か唐突に眠気が襲ってきて瞼が開けなくなってきた。
「ん?なに?まだ眠たいなら寝ていいぞ」
ふいに頭に置かれた手が優しく頭を撫でつけた。
すると不思議と安心して目を閉じた。
そういえば、例外って誰だっけ。前世の私のそばには妹以外にいつも誰かがいてくれた気がするのに思い出せない。
「おやすみ。良い夢を。」
その言葉を聞き、いつの間にか意識はまた夢の中に吸い込まれていった。