蛇足
実際に店を開いて、売り上げはさんざんなのは、こんなもんだろう。私の人脈で
「この本の情報があったら教えて」
「○円までだったら仕入れて」
という予約・希望が殺到するだけなのは、そもそもその本が見つからないのだから仕方がない。
図書エリアを作ったのは、まぁ当たりだ。勉強しに来る人が来る。
蔵書リストで本を指定し、私が倉庫から持ってくるのだ。返却時にぱらぱらと中を確認し、書き込みとか破りがないことを確認する。紹介制にしたから大丈夫な人ばかりだ。
と思っていたのだが、ひと月ふた月に一人のペースだが、いなくなる人が出てきたのには参った。
私が指定された本を渡し、その人は図書エリアへ、私は店頭に戻り、他にお客がいなくてその人が一人きりになるのだが、いつまで経っても出てこない。
トイレじゃないんだから様子見で図書エリアを覗くと誰もいない。
本は机に置きっ放しになっているので盗難ではなく、ただいなくなるだけなのだが、ミニチュア世界がぐちゃぐちゃにされているのが困る。
まぁ壊されているのではなく置き方、配置が無茶苦茶にされているだけで、(おいおいおい…)と並び直す手間で済んでいるのだが、心が暗澹になる。
紹介者に言うとみな一様に驚いて
「申し訳ない、そんなことをする奴だとは思わなくて」。
なんでこんなことするんだか…。
…しかし、どうやって出て、どこに行ったんだろう。入会書に書かれた住所に行っても別の人が住んでいる、電話をしても出ない、二度と来ない…いや、配置をメチャクチャにされただけなので、出入り禁止にまではするつもりはないのだが…。