主導権はゆずらない
高校生くらいの時に書いたほのぼのショートショート。
年の始め、一月一日。
俗に云ういわゆる元日。
新たな一年の先駆けに、僕は彼女と一緒に、人気のない田舎の神社へと初詣に出掛けた。
鳥居を潜ると、直ぐ目の前に本殿があり、賽銭箱が中央に置かれた質素な神社だ。これと言った特徴はない。
ここでは何の神様が祀られているのだろうか。
見た目からして、貧乏神や疫病神の類じゃないだろうか。
だが、そんなことはどうでもいい。
僕は正直、神様なんて信じちゃいない。
少なくとも皆と同じく、世間のマニュアルとして続けられている“しきたり”に肖っているだけだ。
それとなく拝殿の前に立ち、お賽銭を投げ込むと君は、もう僕と喧嘩しないように、とお願いする。
けど、喧嘩しないってことは同時に、仲直りという行為も無くなるということ。
仲直りの後の愛しさも取っ払ってしまうこと。
だから僕は信じてもいない神様にお願いしたんだ。
『彼女と喧嘩しますように』と。
そしたら君は、あからさまに不機嫌そうに顰めっ面。
存在さえ怪しい神様は、この瞬間僕に味方した。
了