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未来企画執行部!!  作者: 藤吉 あおい
中川組大反乱
1/1

中川組大反乱 1

未来企画関連法。2056年に参議院で可決されたこの法律は、当初はこの国を担っていく学生達の自立を促すものとされ、何人かの有識者を除いて誰もが暖かく迎え入れたごく普通の法律であった。しかしこの法律には闇があった。そこには銃の訓練を受けている警察官全員を国防に当て、国内の警備をまだ軍には入れる歳ではない若者の集まりである未来企画へ一任し、銃を持たせ訓練し大学卒業後に軍に吸収するという裏の目的が存在したのだ。そのため国は法律可決後、すぐに警察庁と警視庁を防衛省に統合させ職務を国防に変更。今まで彼らが行ってきた警察活動は全て未来企画へと一任した。初めはただの学生の集まりだった未来企画に警察活動など出来るはずもなく治安は一気に最悪の状態となってしまった。しかし未来企画の創立者兼最高司令官の従兄弟が陸軍の軍人であったこともあり軍から指導官を募り、指導を受けるようになってからだんだんと治安は回復し今では警察庁などが警察活動をしていた時と同じぐらいには治安が回復した。これはそんな時代のとある学生の話だ。


「あ~、疲れた~」

そう叫ぶと、平田ひらた まなぶ(横浜市立長門中学校2年)は机に突っ伏した。

「おい、平田6科だらしないぞ」

コーヒーを入れながら沼田ぬまた 海斗かいと(国定こくてい未来みらい企画立きかくりつ浜田一はまだはじめ高等学校1年)は言った。ここで、そのまま飲めればカッコいいのだろうが残念ながら沼田はまだ高校1年、コーヒーのブラックを飲める歳ではない。横に置いてある砂糖の入った袋を3つ開け、全てコーヒーに入れ、一口すする。

6科というのは階級のことだ。未来企画には特等科を初めとして、1科、2科…と続き9科まで存在し、さらにその下に未来企画に直接は属さない一般生徒に与えられる10科、11科と続く。10科、11科は創立した時の名残からか、生徒会に入っているか否かで分かれるが、9科より上は任務遂行の出来具合で上がったり下がったりする。つまり、9科以上は必然的にその人の警察能力を示すことになる。

「あんな大事件を解決したあとですよ!!、少しぐらい休んでもいいじゃないですか~」

「俺はまだ行けるぞ」

「それはあなたがベテランだからでしょ!!俺はまだ、入って1ヶ月も経っていないんですよ~、沼田3科」

「これで今学期執行部入部試験に首席で合格したんだと思うと…もう世も末だな。ほんとにこれが創立初の、飛び科合格者なのか??」

普通なら9科から始まるはずの階級。しかし、成績が凄く優秀な者には特別に最高司令官の判断で飛び科することが出来るという規則がある。しかし飛び科するということは非常に難しく創立後5年間、1度も起こらなかった。しかし今回の試験で初めて飛び科が起こったのだ。それを起こしたのがこの平田という訳だ。それに1階級の飛び科ならまだいいが、平田は試験を受ける前は一般生徒の11科であったから5階級分を飛び科したことになる。そのため、普通なら試験を受けたあと合格者は訓練のために半年間は各地方の司令部に直属する訓練施設で訓練を受けることになっているのだが平田は即戦力になると考えてか、訓練施設での訓練なしで総司令部のお膝元である横浜にある、関東司令部執行部第25支部に配属された。そしてそこで、教官に任命されたのが25支部部長であった沼田だ。

「正真正銘、俺がその超エリートです」

「そこまでは言ってない!」

平田はできるやつではあると沼田は考える。しかし、任務以外では気が緩む。''切り替えがいいやつ''と言えばよく聞こえるかもしれないが、未来企画のそれも執行部という、犯人と直接会い、逮捕するという機会が多いこの部署では、それは命取りになりかねない事であった。そこをどうやって直してやろうかと考えていると広報担当の市田いちだ 月詩つくし7科(私立江ノ島女子学院中学校3年)がこちらを振り向き

「関東司令部より通達です。発砲事件が起きました。直ちにむかえとの事です。」

と、叫んだ。

「そうか、場所はどこだ?」

沼田は発砲事件ということなので、平田に防弾服着用を命令すると自分も上着を脱ぎ防弾服を着る。

「54支部管轄下の廃工場です」

「54支部?、何でそんな所の事件が回ってきたんだ?」

発砲事件などという大きな事件の時は付近の支部に援助を要請することもあるのだが、54支部と25支部にはかなりの距離がある。

「例の中川組が中心のようで…」

「なるほどな」

未来企画ができたての頃、つまり治安が最悪の状態になっていた時、日本では違法な銃の売買が盛んに行われていた。その時に中心となっていたのが総司令部のお膝元、横浜を中心としていた中川組だ。それによってぼろ儲けし、さらに銃で武装した中川組に当時の未来企画は勝てるはずもなく、軍からの訓練を受けるまでは、関係したら殺されると、逃げまわる日々であった。(設立当初から執行部に在籍している沼田には苦い思い出である)しかし、未来企画も強くなりだんだんと勝てるようになってくると最初は儲けられるからと、皮肉にも親未来企画派だった中川組は一気に反未来企画派となり、今では反未来企画派のかしら的な存在となっていた。そんな中川組の発砲事件となれば関東司令部の司令官や、執行部部長が出てきて現場で指揮していてもおかしくは無い。だから、少し離れているからと言って25支部が呼ばれてもおかしくない事件ということだ。平田も、試験で優秀な成績をおさめているだけあって一瞬でその意味を理解したらしい。銃を念入りにチェックしている。

車の運転免許を持っている海江田かいえだ かおる5科(県立横浜みらい大学2年)が完全防弾、サイレン付きの未来企画専用車を支部の表につけ、いざ乗り込もうとした時、市田が

「部長、狙撃銃を持ってくるようにと全国総司令部から…」

今度は叫ばず、声を潜めるように言ったのに対し、沼田は黙って頷き車から降りると大きな革でできたバックを持って戻ってきた。

平田は知っていた。未来企画は狙撃銃の使用を殺傷性の高さから許可されてはいない。そのため、狙撃銃を使える人は存在しないはずであった。しかし、未来企画では万が一のため、狙撃手の訓練を秘密裏に進めていた。(しかし、その様子をマスコミに見つかり未来企画はこれを公表すると共に、中止するハメになった)その訓練に参加していた5人のうちの1人がこの沼田というわけだ。しかし、その謝罪の場で平田の記憶が正しければ、総司令官は絶対に使うことはないと明言していたはずだ。なのに今、持ってこいと、しかも関東司令部ではなく各地方の司令部のトップである総司令部が命令を出してきたのだ。

(これはやばいものに巻き込まれてしまったみたいだ…)

平田はさっきもチェックした銃を手に取りもう1度入念にチェックしなおした。

現場に付き、車から出ようとすると''パァーン、パァーン''と銃声が鳴り響き、前線にいたのであろう執行官が、血だらけになり運ばれていくのが見えた。平田は、訓練施設での正式な訓練は受けていないとはいえ、何度か沼田に連れられ訓練場に行き実弾で練習したことはあった。しかし、本当に銃が人に向けられ、仲間が倒れていくのを見るのは初めてである。一気に吐き気が襲うが何とかとどまって沼田と一緒に作戦本部となっている54支部へと入っていった。中ではたくさんの執行官たちが議論をしていたが、5人のうちの1人の狙撃手の沼田と創立後初の飛び科を果たした平田が入って行くとその顔をみた全員が話をやめこちらを見た。沼田が敬礼しそれに続いて平田も敬礼する。すると平田が机のいわゆるお誕生日席座っている2人に対してこう言った。

「お久しぶりです。浜田はまだ はじめ最高司令官、原田はらだ 萌恵もえ関東司令官」

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