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幸せな世界

「唯斗ー!朝よー!起きなさーい!」

「ん……」


 母さんの声が響き、俺は渋々ベッドから出る。


 起きると眠気を覚ます為に顔を洗い、制服に着替えてリビングへと向かう。


「おはよう、唯斗」

「おはようお兄ちゃん」

「……おはよう母さん、瑠唯(るい)


 テーブルの上にはトーストとコーヒー、アロエヨーグルトが置いてある。

 父さんはもう仕事に行ったようだ。妹の瑠唯ももうすぐ食べ終わりそうである。


「ちゃっちゃと食べて行きなさいよ?今日は氷華ちゃんと一緒に登校するんでしょ?女の子を待たすのは男として情けないわよ」

「……ん」


 もしゃもしゃとをトースト食べながらコーヒーを啜る。


「……あれ?」


 こんなにパンというものは美味かったっけな。

 なんというか、久々にまともな物を食べた気がする。

 昨日の夕飯もきちんと食べた筈なのだが。


「どうしたのそんなアホみたいな顔して」

「いや……このパンすげぇ美味いなって。高いやつ買ったの?」

「? いつも食べてるのと同じじゃない。訳わかんない事言ってないでとっとと行きなさい」

「ん、了解」


 パンを食べきりコーヒーを飲み終わると歯を磨いて鞄を背負う。


「行ってきます」

「はい、いってらっしゃい」


 待ち合わせの場所に着くと氷華はいない。どうやらまだなようだ。まぁ待ち合わせの十五分前に着いたのだから普通といっちゃ普通か。


「ごめーん!待った!?」


 五分くらい経った頃だろうか。

 氷華が来た。本名は宮畑氷華。俺の彼女だ。

 どうやって付き合い始めたんだっけな

 確か氷華から告白してきてくれたんだっけ。

 俺も好きだったからOKしたんだった。

 いやぁ、あの時は嬉しかったなぁ。


「いや、今来たとこだよ」

「うぇへへー、そっか。ありがとね。じゃ、行こ?」


 手を握られ引っ張られる。


「そんなに急いでもいい事なんか無いぞ?」

「うぇひひ、唯斗君と一緒に登校出来るなんて思ったら嬉しくて」


 可愛い。


 俺はこんな風に人が寄り添って隣にいてくれる幸せな生活を渇望してた気がする。

 ただひらすら異形だけを喰らって、あんな異形たちと命のやり取りだけをする生活はもう嫌だ。


「っ!?」


 咄嗟に頭を抑える。


 俺は今、何を考えていた?現代日本人の高校生が本気で命のやり取りをするなんていうことはあるはずが無い。


「どうしたの? 顔色悪いよ?」

「いや、ちょっと頭痛がな」

「大丈夫?」

「うん、一瞬だけだったから。心配かけてごめんな」

「大丈夫ならいいけど.......酷くなったら無理せず休むんだよ?」

「あぁ」


 夢かなんかを思い出したのか?

 まぁ、存在しない筈の記憶なんてどうでもいい。

 今はこの愛しい人との時間を楽しもう。




「おっはよー!」

「おはよう」

「よう唯斗!今日は宮畑さんと一緒に登校ってか?かーっ、見せつけてくれるなおい!」

「うぇへへー、そうでしょそうでしょ!私達ラブラブだもんねー!」

「揶揄うのはよしてくれ……」


 手を繋いで登校してきた俺達に晃がからかいそれに氷華が乗る。ラブラブなんて言った所でクラスの男子からの視線が射殺すまでになってるんだが。たたでさえもともと人気があった女の子なんだ。


「こらこら氷華、冗談はやめなさい。柊君凄い睨まれてるじゃない」

「鹿山君も揶揄うんじゃない」


 今、喋り掛けてきた二人は氷華の親友の二階堂史花さんとその彼氏の今川利光。通称委員長だ。


「むー……冗談じゃないのに……」

「はははっ!こんなに見せつけられたらからかわずにいれんだろう」

「辞めてくれ……俺のHPがもたない」


 .......HP?





「はーい、席に着いて下さーい。HR(ホームルーム)を始めますよー」


 おっと、そんな事を言ってたらもうこんな時間になってたようだ。百合ちゃんの号令で席に着く。


 はぁ……とっとと休み時間にならねぇかな


 ☆


 昼休みになった


「おーし、唯斗。飯食いに行くか」

「せやな」


 食堂に向かおうと席を立つ


「ちょ、ちょっと待って唯斗くん!」


 突然氷華が声を掛けてきた


「どうしたんだ?」

「唯斗くんっていっつも学食でしょ?だからお弁当作って来たんだけど……」


 俺の心からズッキューンという音が聞こえた気がした。


「いや、頂くよ。寧ろ下さい」

「えへへ、そんなに言われると恥ずかしいな」

「あー…俺は行っとくな」

「おう」


 どうやら晃は気まずかったらしい。

 朝は俺の事をからかってきたのにな!

 そそくさと教室を出てったその姿を俺はニヤニヤと見送る。


「何処で食べる?」

「んー……中庭がいいかな」

「よし、じゃあそこにするか」


 教室を出る時、クラスの男子から睨まれたが所詮非リアの嫉妬。今の俺にはそんな物は効かんわ!もう何も怖くない!



「おー……美味そう」


 氷華が持ってきた弁当は唐揚げ、卵焼き、カニさんウインナー、プチトマト、ブロッコリーにふりかけの掛かったご飯というものだった。


「うぇへへー。そんなに言われたら恥ずかしいなー」

「いやいや、ほんとに美味しそうだって」

「えへへ、そう?ならあ〜ん」


 こ、これはかの有名な『あ〜ん』!

 これをされた者は余りの衝撃に「萌ええええ!!!」と叫んで倒れてしまうという伝説の技だ!


「ほら!早く食べてよ!やってるこっちも恥ずかしいんだからね?」

「あ、あ〜ん」


 パクリと差し出された唐揚げを食べる

 う・ま・い・ぞぉぉぉおおおお!!!

 いや、ふざけるのはよそう。これは氷華の作ってくれた弁当への冒涜だ。

 粛々と、料理評論家のように味わおう。


「ねぇ、私にはしてくれないの?」

「そんな事無いさ。ほら、あ〜ん」


 そうやって俺達はいちゃつきながら昼休みを過ごした。


 ☆


「ねぇ唯斗くん!一緒に帰ろ?」


 今は授業も終わり放課後だ。


「そうだな。俺が家まで送るよ」

「うぇひひーそんなー悪いよー」


 そんな事を言ってるが氷華はとてもニコニコしている。可愛い。


「いやいや、俺が氷華と一緒にいたいんだよ」

「そーお? じゃあ、お願い!」


 手を握られ引っ張られる。送るというか.......俺が連れられているみたいだな。



「ねぇ、明日から休みでしょ?どっか遊びに行きたいなーって」

「それなら明日は皆でレジャー施設でも行こうか。それで日曜日はデートしようぜ」

「うぇひー! ちゃんとデートの予定もつけてくれるんだねー」

「当たり前だろ? そっちがメインみたいなとこあるし。んで、どこいく?」

「皆で行くのは遊園地とかでいいんじゃないかな?デートの時はブラブラしながら決めようよ」

「りょーかい」



 そんな他愛もない話をしながら歩く。


 楽しい時間は呆気ないほど早く過ぎ、気がついたら氷華の家の前に着いていた。


「今日は送ってくれて有難うね!」

「いつでも送るさ。じゃあ、委員長と二階堂さんに連絡しといてくれな」

「うん!」

「それじゃ、バイバイ」

「バイバーイ!」


 姿が見えなくなるまで手を振る。


 .......さて、帰るか。



「ただいまー」

「おかえり唯斗。私今日外でご飯食べてくるからカレー温めて食べといて」

「ん。わかった。瑠唯は?」

「あの子は部活で遅くなるらしいけどご飯はいるみたいだから。ちゃんと洗い物はしていてよね? じゃ、行ってきまーす」

「いってらっしゃーい」


 自分の部屋に戻りブレザーを脱いでハンガーにかけ、ベッドに転がる。


「えーと……」


 スマホを取り出して昴にメッセージを送る。

 返信はすぐに帰ってきた。


 >お前明日暇?

 >おう。暇だぞ

  どうしたんだ?

 >いやな、明日皆で遊園地にでも行こうぜって氷華と話しててな

 >そうか。他は誰が来るんだ?

 >委員長と二階堂さんだな

 >なるほど。何時集合だ?

 >まぁ、開演前に入場ゲートに着いておけばいいだろ。

 >り


「昴はいけるみたいだな……」


 そう呟いたところで、丁度よくメッセージが来たことを表す音が鳴った。


 >二人とも行けるってさ!

 >おっけー。昴も行けるって

 >おけー!


「なんだ。皆行けんだな」


 明日がとても楽しみだ。こんなの初めてだしな。

 ん?いや、俺は何を思ってんだ?夏に氷華と祭りに行ったじゃないか。それだけじゃない。何度も遊びに行ってるのに。


 なんか今日は変だな。飯食って風呂入ったら早めに寝るか。


 ☆


 いい朝だ。雲一つない快晴だな。俺の願ってた通りだ。


 そういや、氷華とどこで待ち合わせするか聞いてなかったな。


 スマホを取り出してメッセージを送る。


 >どこで集まる?

 >今日は入場ゲート前にしよ!

  二人だけで待ち合わせするのは明日にしてさ

 >なるほど。了解


 なるほど。そういうことならもう準備するか。

 今の時間は七時二十分。今から用意していけば一時間以上早く着けるな。



 電車に揺られて四十分。



「いやぁ、流石に早く来すぎたような気もするな」


 現在時刻は八時三十分。開園は十時からだ。流石にこんなに早く来てる奴は……いた!しかも二人!


「いやー……委員長も二階堂さんも早いな。流石完璧カップル」


 あっちも俺を見つけたみたいだ。二人共小さく手を振ってくる。


「随分と早いんだな。まだ誰もいないと思ってたんだが」

「はははっ、史花が早く早くと急かすものでね」

「普通それ話す? 何よ、私だけが楽しみにしてたって訳?」


 二階堂さんがちょっと拗ねたような表情をする。委員長はそれに苦笑いを返して言った。


「いやいや、勿論僕も楽しみにしてたさ。.......ところで柊君、宮畑さんは一緒じゃないのかい?」

「いや、俺も今日の朝どこで集まるか聞いたんだけどさ、そういうのは明日にしようって言われて」

「つまり、君達は明日もデートをするのかい?」

「そういうことになるな」


 そう言うと二人はニヤリと笑った。


「な、なんだよ。笑うなよ」

「いやぁ、可愛らしいなぁ、って思って。ね? 史花」

「そうねぇ、柊君は結構奥手だし、誘ったのは氷華なんでしょ?」

「まぁ、そうだけど.......」


 俺がたじろいでいると背後から声が聞こえた。


「あれー?結構早く来たと思ったのに皆いるじゃん!」


 氷華だ。


「俺達が早すぎただけだよ。それよりその服可愛いな」

「うぇひひ、そう?それなら嬉しいな」

「あら、聞きましたか奥さん。ああやってサラリと褒めちゃうんですわ」

「そうね。利光はあんまりそういうの言ってくれないわよね」

「.......ふざけてごめんよ。どうも気恥ずかしくてね、今日も史花は綺麗だよ」


 おうおう、なんかイチャつく為の出汁にされたような気もするが.......まぁ、許してやろう。



 十時になる少し前。昴が来た。


「おーう。遅れてすまんな」

「いや、俺達が早過ぎただけだ。皆着いたし並ぶか」



 そういうと皆も頷いた。

 疎らに人がいる列に並ぶ。


 待って十数分で俺達の番が来た。

 チケットを買って入場する。


 入口入ってすぐの噴水が懐かしい。


「いやーここに来るのも久しぶりだな!確か……小学校三年生以来だ。皆は?」

「俺も唯斗と同じくらいだな」

「私は中学生の頃来たことあるよー!」

「僕は初めてだな」

「私も利光と同じで初めてね」

「そうか。んなら委員長と二階堂さんを楽しませなきゃな!」

「そうだね!ふみちゃんが酔うまでジェットコースターに載せてやるぜ!」

「やめい」


 そこまで乗ると多分俺も酔う。


「あはは……お手柔らかにお願いするよ……」

「そうね……」


「いやいや、そんな訳にはいかないね!だからまずジェットコースターに行くよ!」


 苦笑いをしていた二階堂さんが氷華に引っ張られ連れて行かれる。


「全く、もっと落ち着かないのかね」

「でもそんな所も可愛いんだろう?」

「いきなりなんだよ委員長」

「いや、君達の絡みを見ていると宮畑さんが一方的にくっついているような気がするからね。君もデレないのかなーって」

「それは俺も気になるな。唯斗。そこんとこどうなんだよ」

「も、黙秘権を行使する。さらばだ」


 早足になって前を進んでる二人を追いかける。


「ふむ、気になるねぇ」

「俺は委員長と二階堂との絡みも気になるんだがな」

「ははは、僕が隙をみせるとは思わない方がいい」


 後ろでなんか聞こえるが無視だ無視!



 昼になった。

 ジェットコースターに二階堂さんが動じなかったり、氷華がコーヒーカップを回しすぎて俺と一緒に酔ったとか、メリーゴーランドが思ってたより恥ずかしかったとか、お化け屋敷で昴が一番怖がってたとかあったが省略する。


「どの店に入る?」

「あ、待って。私達お弁当作ってきたんだ!」

「昨日氷華がお弁当作ろうって言ってきてね」


 氷華と二階堂さんがバスケットを取り出す。

 中にはサンドイッチが入っていた。氷華の方が卵サンドとカツサンド。二階堂さんの方がキュウリとツナのサンドとハムとレタスのサンドだ。


「「「おお〜」」」


 男子組三人の声が重なる


「氷華も二階堂さんも有難うな。でも朝から揚げ物なんて大変じゃなかったのか?」

「ううん、下準備は昨日からしてたから揚げるだけで楽だったよ!」

「そうか。なら良かったんだが……」

「初めに彼女の心配なんていい彼氏よね?ね、利光?」

「僕に振らないでくれ……」

「疎外感が凄いぜ……」


 若干男子二人のテンションが下がったが気にしない。

 卵サンドを一つ取って食べる。


「ど、どうかな?」

「うん、美味いよ。俺の好きな味だ」

「いやー……俺も料理すんだがやっぱりこういうのは女子が作った奴の方が美味いな」

「えっ!?鹿山君って料理出来るの!?」

「二階堂さん、こいつ、実は料理クソ上手いんだ」

「想像出来ないな……」

「おい、委員長。お前は俺の事をなんだと思ってるんだ」

「類猿人」

「ファッキン」


 楽しい空気のまま昼食は終わった。



 ☆



 俺は今、晃と一緒に迷路に居る。


 どうしてこうなった。



 次に行こうと思っていた庭園迷路の看板には『一度に入れる最大人数は四人です』と書かれてある。どうやら人数調整の為一気に入ることは不可能なようだ。

 つまり誰かがひとりぼっちにならなくてはいけないのだ。

 氷華はそれを危惧してこんな提案をした。


「ねぇ、ぐっぱーでメンバー決めない?」

「いいね」

「賛成」

「面白そうね」

「俺は別にどっちでもいいぞ」

「皆OKだね? それじゃあいっくよー!グッパでホイ!」


 俺→グー

 氷華→パー

 晃→グー

 委員長→パー

 二階堂さん→パー


「「oh……」」

「わーい!ふみちゃん一緒だねー!」

「ほらほら、はしゃがないの」

「……」


 氷華と二階堂さんは喜んでいるが委員長が不憫でならない。ほら!何かを決意した顔で自分のパーを見てるじゃん!気づいてやってよ!




 とまぁ、こんな感じだ。

 誰に説明するまでもないんだけどな。


「それじゃあ行くか……」

「せやな……」


 晃が先導し俺がそれに付いて行く。


 ☆


「「や……やっと出れた……」」


 え?描写?俺が終始いつ飛んでくるか分からない虫にビビってるだけの絵が欲しいのか?

 ちなみに脱出するのに一時間は掛かった。


「もー……遅いよ!」

「いや、ごめん。迷いまくってさ」


 頭を掻きながら言う。ところでとんでもなく気になることがあるんだが。


「ごめんね? ほんとにごめん! 機嫌直してよ! ね? 放っておいたことは反省してるからさ!」

「いいや.......大丈夫だよ」


 なぜ二階堂さんが委員長に謝り倒しているんだ?


「……委員長はどうしたんだ?」

「あぁ、鹿山君かい。なに……迷路に入ってから脱出して君達が出てくるまでの間、空気を徹してただけさ」

「「oh……」」


 俺と晃の声が重なる。

 いくら委員長といえどもあの仲良し二人組の間に割って入る胆力はなかったか。


「まぁ機嫌を直せよ委員長。遊園地での思い出をこんなので終わらしたくないだろ?」

「そうだよ!もう閉園まで三十分くらいしか無いんだよ?」

「……そうだね。ウジウジしてるのは僕らしくない。すまなかったね史花」

「私はいいけど……」

「解決したなら観覧車に行こうよ!遊園地に来たならやっぱり乗って行かないと!」


 氷華が少し向こうに見える観覧車を指差して言う。

 観覧車なら恐らく晃が一人になるが……まぁアイツなら高いアイスでも奢れば大丈夫だろう。


 ☆


「ふぁぁ……綺麗だね……」

「あぁ。そうだな……」


 遠くに見える山の向こうに夕日が落ちていく様はとても幻想的だ。


「むぅ……こんな時は『お前の方が綺麗だよ』って言ってくれたら私、コロッと落ちちゃうよ?」

「何言ってる。お前は綺麗より可愛い系だろ?」

「へっ?そ、そう? そんなのいきなり言われたら恥ずかしいじゃん……」


 氷華の顔が真っ赤に染まる。夕日でさらに赤く見える。


「ほら、そうゆう所が可愛いんだよ」

「っ……!や、やだ!今顔見ないで……真っ赤になってると思うから……!」


 氷華は顔を手で抑える。

 本当に可愛い反応をしてくれる。まるで 【俺の理想通り】の反応だ


「ほら……こっち向いて?」

「や、待って……!恥ずかしい……!」


 顎クイをし、目を見つめる。


「氷華……いいか……?」

「うん……」


 俺は氷華に軽く口付ける。

 そういえば、キスするのは結構久しぶりだな。


 興奮した俺は氷華の口腔に舌をねじ込んだ。

 氷華はビクリ、と身体を跳ねさせたがそろりと舌を絡ませてくる。


 静かな密室にクチュクチュと音が響く。


 観覧車の中という事もあって背徳的な気分と共に性欲が高まってくる。


 だがその時間はすぐ終わる。俺が氷華を強く抱きしめた辺りで観覧車がもうすぐ終わることに気がついた。


 名残惜しいが口を離す。


「あ……」

「この続きは、また今度な?」

「うん……!」


 蕩けた顔がとてもエロい。


「ほら、口拭え。バレるぞ?」

「う、うん!」


 氷華が口を袖で拭い顔を引き締めた辺りで観覧車は終わった。


 しっかし、なんで初めてなのにあんなに上手く出来たのだろうか。

 氷華は身体に触れられるのをあんまり好んでないのに。

 ……ん?何処でそんなの知ったんだっけな。まずキスは初めてじゃないし。


「いやー綺麗だったね!」

「お前の方が綺麗だよ」

「ふ、ふん!今更言われてもだもんね!」


「ほうほう、どうやらお二人さん。なにか、やったな?」


 先に一人で乗ってた晃がおちょくってくる。


「な、なんでそれを!」

「おい、墓穴掘ってんぞ」

「へぇ〜?なに?キスでもしたの?」


 背後から二階堂さんに声をかけられる。

 おおぅ、もう降りて来てましたか。


「ちちち、違うもんね!キスなんかしてないもんね!」

「あれ?でもさっき『な、何故それを!』って言ってたよね?」


 さっきの氷華のセリフを声真似しながら二階堂さんが言う。声真似めっちゃ上手いじゃん。



 帰宅中、氷華は二階堂さんに。俺は晃と委員長に何があったか根掘り葉掘り聞かれるのであった。


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