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異世界なら目的を果たさないとね!

二日間開けたくせに短いです!

すいません!

「ただいまー」


話を終えた俺達は宿へと帰った。

日は既に暮れていた。


「おかえりなさい!ユイトさん!エリアさん!」

「あぁただいま」


この一週間で俺達はミスティエル達と結構仲良くなった。ちなみにミスティエルの父親のグリムノーツは料理の上手いいかついおっさんだった。


「ご飯、用意しますね!」

「頼む」


運ばれてきた料理はハンバーグにサラダ、透き通ったスープにパンだった。


「今日で宿の期日は過ぎますけど……どうするんですか?」

「明日、俺達はこの町を出る。賢者の島に行こうと思うんだ」

「そう……ですか。寂しくなりますね」

「でも、目的が果たせたらまたこの町に戻ってくるよ。もう、ここは家みたいな感じがするからな」


ミスティエルの顔がぱっと明るくなる。


「はいっ!絶対ですからね!」

「あぁ、絶対だ」

「世話になったな」

「いえいえ!お客さまに必要としてもらうのが宿の本質ですから!」

「そうか。……代金はいくらだ?」「えーっと、一泊七銀貨で、プラスご飯で一銀貨なので……銀貨56枚、金貨五枚と銀貨六枚となります!」


つまり一週間飯付きで五万六千円ということだ。流石異世界、安いな。

俺は白金貨を渡す。


「釣りはいらないよ」


決まった!多分人生で一度は言いたい言葉であろう『釣りはいらないよ』をまさか異世界で使用するとはな!


「そんな!悪いですよ!」

「いや、いいんだ。これは俺達からのほんの気持ちだよ」

「そうだな。余も其方等には感謝しておるからな」

「そうですか?なら……頂きます」


やっと受け取ってくれた。

これで受け取って貰えなかったらカッコ悪過ぎるからな。


「今までありがとな。おやすみ」

「達者でな。おやすみ」

「はい!おやすみなさい!」


部屋に戻った俺達はすぐさまベッドに倒れ込んだ。


「……なぁ、この一週間、どうだった?」

「何故そんな質問をするんだ?」

「いや、この一週間だけは俺達が逃れられなかった【戦い】から目をそらせたじゃねぇか」

「……そうだな」

「だから、な。多分、明日からはまた殺し合いだ。俺達には危険はないと言っていいけど、俺達はまだ甘い。俺もエリアも、まだ生物を殺す事にプレッシャーを感じてるだろ?エリアなんか特にだ」

「……確かに、余は目的の為に、という逃げ道がなければプレッシャーで押しつぶされるであろうな」

「それで?エリアが十歳の時から無くなった『普通の生活』ってのはどうだった?」

「……楽しかった。嬉しかったし、まだこんな気持ちになれるんだって思えた。正直、この生活は手放したくない。でも()はまだ仮面を外せない」

「いつもの偉そうなのは自分を守るためって事か?」

「そうだよ。まだ、()は世界を信用しきれてない。()がこのトラウマを乗り越えられれば素直な気持ちになれるのにね」

「そうかよ」


じゃあ俺がエリアとずっと一緒に居て、そのトラウマを取り除いてやる。


そうやって口を開こうとしたが、そのまま言葉が発せられることは無かった。


「……おやすみ」

「あぁ、おやすみ。恩人」


もしかしたら、エリアは俺が言いかけた言葉。待っていたのかもしれない。





「アーク様!ご報告があります!」

「……なんだ」

「『暴食』の魔王の封印を担っていた皇龍アルカイドが討伐されたということです!」

「なに?皇龍が!?」

「はい!その亡骸を売却した者はユイト、ヒイラギ。つい最近異例のSSSランク冒険者となったということです!」

「傍らに誰か居たという報告は?」

「はい!褐色の銀髪少女が隣に居たと言われています!」

「……そうか。下がって良いぞ」

「はっ!失礼します!」


誰もいなくなった暗くだだっ広い部屋で『傲慢(ルシファー)』の魔王、アークは顔を顰めた。


「なるほど、まさか封印が解かれるとはな。我ら全員でかかっても傷一つつけられないという皇龍かが。……彼奴は封じないといかん。傍らの少年が気になるが、彼奴は封じないと我らが安心出来んからな」


誰に言うでもなく呟き、『傲慢(ルシファー)』の魔王は誰もいない部屋でニヤリと笑った。




「……まさか、ユイト、ヒイラギが生きているとは。勿体無い事をした。だが、皇龍を殺す程の力を手に入れる事が出来れば、我が国は安泰だ!」


フハハハハハ!と、王宮に欲望だらけの笑い声が響き渡った。



「起きろ、恩人。流石に寝すぎだ」


エリアが体を揺すってくる。


「あー……おはよう。珍しいな。エリアの方が早く起きるなんて」

「この町を目に焼き付けておきたくてな」

「魂を見つけたらまた戻って来るんだぜ?」

「何時になるか分からんだろう?」

「……そうだな。無粋な事を言ってすまん」


そうだ。今から行くのは『賢者の島』なんだ。いくら俺達がバグキャラだとしても『賢者』なんて呼ばれるくらいには凄い奴が居るんだろう。

用心するに越したことは無いからな。


「分かれば良いのだ。どうせ恩人の事だ。すぐに行くのだろう?」

「……そうだな。行こう」

「あぁ」


部屋を出る。


「あ!ユイトさん!エリアさん!」

「おはようミスティエル」

「おはよう」

「もう……行くんですか?」

「あぁ」

「そうですか。……冒険者、ですもんね」

「……あぁ」

「では……お元気で」

「ありがとうな。ミスティエル」

「……また、来るぞ」

「はいっ!」


宿を出る。

何気に俺が異世界に来てから初めての自分からの別れか。

こう、胸にくるものがあるな。


町を出て翼を展開する。

見た目は相変わらずアイタタタな感じである。


「掴まれ」

「あぁ」


エリアが抱きついてくる。

この事は結構役得だと思う。


地を強く蹴り、飛び立つ。

目指すは東。


空を飛びながらエリアに話しかける。


「なぁ、エリアは賢者って知ってるか?」

「……そうだな。賢者という存在になら余がまだ魔王だった頃に一度会っている。あぁ、余の封印の手伝いもしていたな。」

「あん?人間が魔族と協力したのか?」

「本にも書いていただろう。多分、余をどうにかする為だけに我ら魔族は人間を利用したのだろうな。そして余が消えたら蜥蜴の尻尾切りということだ」

「なるほどな。『暴食』の魔王の存在はそこまで大きかったって訳だ。でもそれなら人間側が協力する意味がないんじゃないか?」

「そこら辺は余もよく分からん。ひたすら魔神になる為に時間を費やしていたからな」

「そうか。思い出させてごめんな」

「何を言っておるのだ。恩人は余の理解者であろう。もうそんな感情は殆ど残っておらんわ」

「……強がるなよ」

「心に留めておこう」


会話が途切れ、無言になる。

その時、下方に小さな小島が見えてきた。


速度を加速させ、地に降り立つ。

兵士らしき奴が見えたので翼を霧散させそこに向かう。


「すまない。この島にはどう入れば良いのだろうか?」

「なんだ貴様。ここは関所だが……船も使わずどうやってここまで来た?」

「まぁ……ちょっと空を飛んで」

「はぁ?……まぁいい。ここに来た目的は?」

「観光かな。一目賢者様を見えたらと思ってね」

「そうか。身分証明出来るものはあるか?」

「あぁ」


俺とエリアのギルドカードを渡す。


「えーっと?……SSSランク!?まさか貴方は皇龍アルカイドを討伐したというユイト様!?」


うわ、反応スゲェ。


「あー……こんなところまで情報が回ってきてんのね」

「そんな!ユイトヒイラギ様といえばもうこの世界で知らない人はいませんよ!」


あのギルマスのおっさんすげえな。

一週間で世界中に広めるとか異世界パネェ。


「えーと……通っていいか?」

「はい!お通り下さい!」

「あぁ、仕事頑張れよ」

「ありがとうございます!」


ペコペコと低姿勢を保った兵士を後にし、門を潜る。

そこは────


「結構普通だな」

「あぁ。余も少々拍子抜けしておるぞ」

「だよなぁ……」


そういえば賢者ってどこに居るのだろうか。


「賢者の場所って……知るわけねぇよな」

「当たり前だろう」

「いやー開き直られると困りますね」


どうしようか。どっかの店にでも入って聞き込みするか?


ガシャンッ


背後から何かが落ちた音がした。

気になって後ろに振り返る。

そこには紙袋を落とした緑髪の美少年が立っていた。

すると、エリアから強いプレッシャーが発せられる。


「……『救恤(ラグエル)』か」

「『暴食(ベルゼブブ)』」


え?なに?知り合い?


「エリア、誰だよそいつ。」

「此奴が賢者の一人、『救恤(ラグエル)』のエフサハーンだ」

「まさか、封印が解けたという噂は本当だったのか。しかも、僕の事を覚えているなんてね」


……え?このショタが賢者?

えっ?賢者ってもっと髭もじゃな爺さんじゃねえの?

しかも展開が早い!

次の投稿は11月23日の火曜日となります!

誤字、脱字報告、感想待ってます!

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