異世界なら歴史を調べないとね!
本日二本目です!
短いですが……
「お、あったあった」
「意外に巨大な建物なのだな」
図書館らしき場所を見つけた。
学校の体育館程度の大きさで窓の数からして多分三階建てなのだろう。
『国立スティル図書館』と掘られた石の看板がある。
図書館で国立ってすげぇな。
入り口を潜り、図書館の中へと入る。
「ようこそ、なんの御用でしょうか?」
司書らしき女性が話しかけてくる。
「いや、本の閲覧をしに来たのだが」
「それなら本の保証金として一人につき金貨一枚を頂く事となっています。」
あ、やっぱり異世界あるあるで本は貴重なのね。
「一人で金貨一枚だな。」
司書の人に金貨を二枚渡す。
「本を汚したり、破損させなければお金は返却致しますので。」
「あぁ」
話も終わったようなので早速本を探しに行く。
図書館の案内表を見ると、歴史書なんかは一階、つまり俺達が今いるフロアにあるらしい。
これは移動する手間が省けた。
歴史分野を扱う本棚がある場所へ向かう。
そこにはこんなタイトルの本が置かれていた。
『バース創世記~我らの大いなる父がどう世界を作ったか』
『バース建国記~今ある全ての国の建国から現在まで』
『バース歴史表~人間が辿った道と他種族との関係』
歴史表なんか良さそうだな。
他には……?
「他には……?」
「恩人、それっぽいのがあったぞ」
「おぉ、ありがと」
エリアが持ってきた本は
『人属と魔族との戦争の歴史』
『魔族の王』
『暴食の魔王』
三番目の本が一番俺達が求めてる事っぽいな。
この世界には、人間、獣人、ドワーフ、エルフ、天人、海人、魔族の八種族が存在する。
その中で人間が同盟をしている種族は獣人、ドワーフの二種族のみである。
エルフとは、少々国交があるが、獣人、ドワーフ程友好関係がある訳でもない。天人は空に、海人は海中に住んでいる事から、人間は天人、海人とは関係を持っていない。
魔族とは、五百年前に一度友好関係を持ったが、それが無くなってからは明らかな『世界の敵』となっている。
ふむ、他種族との関係はこんな感じか。五百年前に一度友好関係を持ったってところが気になるな。
まぁいいか。次のを読もう。
人間とその同盟種族はこの世界が創られた一万二千年前から常に戦争を続けている。
戦争、と言っても人と人との戦いのような武力で終わらすものではなく、陣地取りゲームのような戦争をしている。だが、五百年前に一度友好関係を結んだ事がある。だが、それが無くなってからは常に続けていた戦争がどちらの種族も攻め込む事が無くなり、常に冷戦状態となっている。
こっちもやっぱり五百年前がターニングポイントだ。
エリアはそれだけの存在だったんだな。
やっぱり、【魔神】になりかけたというのは伊達じゃない。
次の本を開く。
魔族には、魔王と呼ばれる七名の存在がいる。
魔王は、『傲慢』、『強欲』、『色欲』、『嫉妬』、『憤怒』、『暴食』の七つの大罪をスキルを持つ魔族がなることとなっている。
現在の魔王は、『傲慢』、『強欲』、『色欲』、『嫉妬』、『憤怒』が確認されている。『暴食』の魔王は、世界の全種族が協力した戦いで五百年前に封印されてから現れていない。まだ前魔王、エリア・レイアルラが死亡していないのだろう。
魔王は、そのスキルと共に、とても強大な力を持っている。
この事から、人間は自分達より数の少ない魔族を滅ぼす事が出来ていない。
エリアを殺す為だけに全種族が結託したのか……【魔神】ってのはそんなに凄いものなんだな。
────神域に片足を突っ込んだ魔王、エリア・レイアルラ。
五百年前に魔神へと昇華しかけた魔族。
褐色の肌に艶やかな銀髪をしていたと言われている。
『暴食』のスキルを持ち、そのスキルと相性良いスキルも持っていたとされる。
その事により、魔族の神、魔神へとなりかけたが、その一年程前から人属へ友好関係を持ちかけていた『傲慢』、『強欲』、『色欲』、『嫉妬』、『憤怒』の魔王に裏切られ、魂を七つに分けられ封印される。
その封印した時の戦いでは、唯一全種族が力を合わせたとも言われている。
尚、その戦いではエリア・レイアルラはたった一人であったにも関わらず、戦に赴いてきた存在の八割を殺害したとされる。
名実ともに【世界の敵】として扱われていた。だが、現在ではただ裏切られただけの少女、とも言われている。
一度、人間が魔族の領地に行った時に、エリア・レイアルラの日記を発見したからである。
その日記には、ただ人間に殺された家族を生き返らせる為に、魔神となる、とかかれていた。
ちなみに、エリア・レイアルラが封印された日は、ちょうど魔神へと昇華する儀式を行う日だったらしい。
エリア・レイアルラの身体と魂の一つは元々、エリア・レイアルラが使用していた城に、他の魂は、賢者の島、鏡の大迷宮、エルフの里、魔族の領地、記憶の大迷宮へと放たれたと言われている。
残り一つの魂の在り処は分かっていない。
……なんだかなぁ。
こう、文字に表すと随分とエグい扱いを受けてきた事が分かるな。
「……エリア、お前はこうやって読んでどう思う?」
「もう特に何も思わんよ。……だが、また一人ぼっちになるのは嫌だな」
「……そうか。……どうする?どこの魂から回収しに行く?」
「賢者の島、という場所からでいいだろう。」
「分かった」
なんだかなぁ。
今まで積み重ねて来たことが全部ぶっ壊されるって、どういう気分なんだろうな。
俺だけは、こいつが【世界の敵】でもなんでも、ずっと一緒にいよう。
「……帰るか」
「あぁ。……恩人よ、ありがとうな」
「……それならとっととその仮面を剥いでくれ」
「まだ、余は怖いからな。信じて裏切られるのが」
「……そうかよ」
その日は、宿に帰って飯も食わずに寝た
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