現在の彼女達
この場所で迎える春はもう幾度目になるのだろうか。
麗らかな陽気の中、ティーサロンでお茶をいただくというのは本来なら心落ち着く素敵な時間なのだろう。
…そう。こんなメンバーでなければ。
胸元を覆い隠す長さのゆるくウェーブした金髪の少女は整った容姿とクリクリとした大きな瞳が愛らしさを醸し出している。
引き締まるところは引き締まり出るところは出ているというのも彼女の魅力を高める要因の一つとなっているのだろう。
12歳の時はぽっちゃりとしていた少女も学生生活を送るようになって五年目を迎える今では女性らしさ感じさせるようになっていた。
「それであの先生ったら私に対して命令をするのですよ?全く、信じられませんったらありませんわ。ねえレオン様、レオン様もそう思いますわよね?」
ワガママな性格にはそこまで変化は無いが、それでも初対面の頃よりは貴族の女性らしくなってきたように感じる。
「それは命令ではなく教鞭を振るう者として生徒に対して指示を出していただけなのだと思うよ。
相手がマリアンヌ、君だからといってそういう行為をしたのではないと感じるが…、貴女はどう思いますかアンジェリーナ?」
最初から整った顔立ちをしているなとは思っていたが、あの頃あった可愛らしい面影は消え去り、今は程よく引き締められた身体や喉仏、剣ダコのついた力強さを感じる手など男性らしさというものを感じるようになった。
噂で聞いた限りでは学業の合間に公務と鍛錬も行なっているようだった。
自分が第二王子として将来は王となる兄殿下を支えていく立場になることを強く意識しているのだろう。年にしては落ち着きがあり、その瞳や行動からは強い意志を感じる。
王族はやはり背負うものの重さが違うのだろうなと思う。
こっちへ会話を流してきた王子に対して、また上手くマリア様を躱そうとしているようなので軌道修正をさせてもらう。
「そうなのかもしれません。
ですがその教師の言葉でマリア様な御心が傷んでしまったのも事実なのです。
どうかマリア様の御心を婚約者であるレオン様が癒やして差し上げてくださいませ。」
そう、この頃には私はマリアンヌ様に対してマリア様呼びをすることを許可されるようになっていたのである。
「おいおい、そこまでレオンがする必要があるとでも?
それにただのとりまきの伯爵令嬢が王子に対してとる口の聞き方ではないのではないか。」
(チッ、忌々しい。また"この男"は私の邪魔をしてくる気なのか。)
「あらぁ…ジェイラス様そこに居らっしゃったのですね。いつにも増してお静かなご様子でしたので置物か何かだと思っておりましたわ。」
この忌々しい男はレオン様と同学年のジェイラス=ドッジソン。父親が近衛兵団の団長と言うこともあり、学園内での王子の警護と話し相手としていつも側にいるのだがこいつはとにかく性格が悪い。
(この筋肉達磨め…)
筋肉の塊のような男なのに整った顔立ちをしていることと私以外には人当たりが良いため、女子生徒からは甘いマスクの騎士様だと好評である。
女性には優しいし(私を除く)、何より婚約者がいない為女子生徒はここぞとばかりにヤツの周りに群がるのである。
コイツは一人でいるときにはいつも違う女子生徒を隣においているのだ。実にいけすかない。
マリア様と共に学園内で衝突を幾度となく繰り広げている私はヤツから敵認定をされているようなのである。
そのくせマリア様は婚約者だからといってそちらには何も言わず敵意も持たず傍観に務めているというのはとても胸糞悪い。
いつもいつもことごとく計画を邪魔されるので私のストレスは増すばかりである。
あぁ、私は奴の全てが嫌いだ。
その後は次の予定が詰まっている王子の予定に合わせて、本日のティータイムはお開きとなった。
本編へ突入しました。
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(2/9誤字脱字訂正)