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誰か私の味方はいないのか!  作者: 中村春
プロローグ
4/10

長くなったので二話に分けて投稿します。

お父様からの声で眼を覚ます。

眠たフリのつもりが本当に寝てしまっていたようだ。


馬車から降りてお父様に続きながら王城内へと足を進めていく。

廊下に飾られている壁画や陶器をチラチラ眺めているとお父様から注意を受けてしまった。

深呼吸してキュッと気を引き締める。


そうだ。ここは戦場なんだ。

婚約者候補の話が既に広がっているからか、すれ違う人々から好奇の目で見られる。


「さぁ、ここが今回の会場だ。」


たどり着いたのは中庭…だろうか。

テーブルには軽食も用意されており、上位貴族であろう方々が紅茶片手に談笑していた。


「うむ、もう大方の参加者は揃っているようだな。

陛下方が居らっしゃられたら開催のお言葉があるはずだ。そうしたら挨拶へ向かおう。

その後は半刻ほど過ぎれば帰るのは自由だそうだ。それまでは会場内に居ることになるのだが、お前はずっと私の側に居るように。良いな?」


「はい、わかりましたわ。」


「よろしい。…と、丁度陛下が来られたようだ。」


お父様の視線の先に目をやると従者を連れながらこちらに向かって来ているところだった。

先頭にいるのが間違いなく陛下だろう。一目で高級だとわかる御召物を身に着けていらっしゃる。

服で隠されてはいるが鍛えぬかれた身体をしているのがわかる。

戴冠するまでは軍に勤めていたという事は国民なら誰でも知る事だが、どうやら軍から退いた今も鍛錬を行っているようだ

優しそうなお顔をされてはいるが、強靭なる身体と魂を持つ人間というのは一番敵にしたくはない、とても手強い相手なのだと心から思う。


そしてその後ろにいるのが第二王子、レオン様だろう。

一目見て思うのが「王子様」である。

外見は皆の理想を詰め込んだかのような完璧なキラキラした王子様だ。

金色に輝く髪と、彫刻のように整った美しい顔、程よく引き締められた身体が、彼が芸術作品であるかのように錯覚させる。


(あの方が第二王子のレオン様…私より一つしか年は違わないというのに、王族というのは皆他を圧倒する空気を持っているのかしら…)


頭を下げながらそんなことを考えていると、重く響く声が耳に届いた。


「本日は王家主催の茶会へよくぞいらした。皆の参加を心から歓迎する。さぁ頭を上げてくれて構わぬ、思う存分楽しまれよ。」


陛下の挨拶が終わり、御茶会が始まった。

先程よりも賑やかに楽しそうに語らう人々を横目に、一杯だけお茶をいただく。


鼻を通り抜ける香りと、下の上で広がる繊細な味に流石は王家のお茶だ、と幸せな気分になる。


「さて、侯爵家の皆様も挨拶が終わるようだしそろそろ向かうとするか。」


「えぇ、わかりましたわお父様。」


お茶を飲み終え、挨拶を待つ列へと並びに席を立つ。


さっきは端っこの席にいたからそうでもなかったけど、会場の中央を通る頃には多くの人から見られることとなった。


(婚約者候補というだけでこんなにも視線に晒されるなんて、なんだかとても疲れるわ…)


列までもうすぐというところで突然、会場内に場違いな大声が響き渡る。


「おおこれはこれは陛下。この度は王家主催の御茶会へのご招待、誠に感謝致します。

いやー、それにしても今日はお日柄も良く、若い二人の顔合わせには、実にもってこいで御座いますなぁ!

さあマリアンヌ、陛下とレオン様へご挨拶を。恥ずかしがってないでお前の可愛らしい姿をお見せするのだよ。」


既に婚約者になったかのような態度には陛下もやれやれと言った様子である。


ここまでは周りの方々から聞こえる会話から予測を立てたものだが概ね間違ってはいないはずだ。

なんせジェラード伯爵の大声の会話はここまで聞こえているのだから。

いや、むしろ周りに聞かせるために声を張っているのかもしれない。もしそれが当たっていたのなら、それはジェラード伯爵が取り返しのつかない人であると証明するようなものなので避けたいところなのだが…。


そして上機嫌なジェラード伯から促されたマリアはそこで爆弾を落とす。


「御機嫌よう。陛下、レオン様。本日は私の為にこのような場を開いてくださり光栄でございます。」


ピシッと固まる空気。気づいていないのはジェラード伯のみ。


「はっはっは。レオン様とマリアンヌは美男美女でお似合いですな。ここまで隣に立つのにふさわしい者も我が家の娘を置いて他にはおられますまい。いやぁ若い二人のこれからが楽しみですなぁ。」


凄い。場の空気が殺気で膨らんでいる。

ジェラード伯はこの空気には気付いていないのだろうか。

いないのだとしたら逆にすごい。


私はというと心配そうな優しい視線とこんな奴に負けるなという強い視線をビシビシ受けております。

あ、父様が私を隠すように立ってくださったおかげで視線が減りました。お父様ありがとうございます。

お父様の優しさで涙が落ちそうです。


そして陛下がさっきの発言を見事に流し、ジェラード伯爵からの挨拶を終わらせたことで御茶会は再開です。


前に並んでいた方々が次々に挨拶を済ませてゆき、私の目の前には金色に輝く髪を持つお二人のお姿が。

ついに挨拶はディヴッドソン家の順番を迎えたのである。


私、アンジェリーナとレオン様の顔合わせの時が、ついに来ました。



お読み頂きましてありがとうございました。

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