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誰か私の味方はいないのか!  作者: 中村春
プロローグ
3/10

引きこもって出た答え

アンが部屋に引きこもって一週間ほど経ったある日、王家から招待状が届いたと壁越しに使用人のリチャードから報告を受けた。



内容は"王家主催の御茶会への招待"である。


婚約者候補とはいってもアンに拒否権は存在しない。


よって御茶会開催日の朝、引きこもり歴二週間でアンによる引きこもり生活は強制的に幕を下ろしたのである。


アンとしてはもう少し閉じこもって考えをまとめたかったのだが王家主催ならば仕方がない。

心配ながらもギリギリまで待っていてくれた両親には感謝である。



───────



そして御茶会の日がやってきた。この日は朝からとても忙しかった。

特に、使用人が。


荒れ果てた少女の髪や肌を以前の状態まで戻す為、使用人一丸となり、湯くみからマッサージ、パックなど頭のてっぺんからつま先まで磨き上げる。


そしてそれは指示を出したであろうお母様が首を縦に振るまで長時間続いたのである。


その後も着せ替え人形となり、ドレスはこれがいいあれがいい髪型はあれよりこっちのほうがいいだのそれなら装飾品はこれを入れるべきだのそれならもっとこっちのほうが…と、家を出るギリギリまでこれらは続けられたのだった。



やりきった表情を浮かべる使用人と満面の笑みを浮かべるお母様に見送られ、疲れの滲む表情の少女を乗せて馬車は動き出す。




───────



王城までは馬車で二刻ほどかかる。


今回の御茶会は開催場所が王城ということもあり、お父様が付き添ってくれることとなっていた。

そのため馬車の中ではお父様からの御茶会における注意点をひたすら頭に叩き込んていくこととなった。




ディヴッドソン伯は朝の支度でヘトヘトの娘を気にしてはいたが、二週間もの間外の情報から離れていた娘へその間の貴族社会の動きや今回の御茶会に来るであろう貴族の情報をしっかりと叩き込んでいく。


御茶会でアンが粗相をした場合、ディヴッドソン伯爵家に対して避難が向けられても対処が可能だが、可愛い娘が非難を向けられるような事は娘自身の為にも避けたい。

上位貴族としての務めと娘の幸せを望む親心の間に板挟み状態のオスカー=ディヴッドソン伯爵であった。



何やら複雑な表情をしているお父様に対してアンは心の中でため息を吐く

(まぁ、これも自業自得だもんね。)


一通り話し終えた様子の父は咳払いをし、少し言いにくそうにこう続けた


「簡潔にまとめるとこのような感じだな。

基本的にはいつもの茶会と同じで良い。ただし今回は婚約者を決める為に皆が目を光らせているだろうからな、人目に付かぬ場所でも気を緩めぬように。

それとあちらの家も来るということだがお前なら普段通りでも問題は無いだろう。

陛下や第二王子も居られるのだから、病み上がりのお前はそちらへの御挨拶をしっかりとこなす事にだけ集中していれば良い。後はこちらで何とかする。」



(引きこもりの件は外聞的には体調不良で通している、と。

って…えっ?)


「お、お父様。今あちらの家の方も、と仰いましたがそれはつまりジェラード伯も…」


「あぁ。お前には少々辛い場になるやもしれぬがあちらも王家主催の場では何も起こさぬだろう。

もし何かあるとしてもこちらで対処するつもりだ。お前は安心して茶会に臨むといい。」


「そうなのですね。…わかりましたわ。

すみません、お父様。私、少々疲れてしまいまして…申し訳ありませんが到着までの間、休ませて頂いても良いでしょうか。」


「あぁ…朝から母様も張り切っていたからな。

あと一刻ほどはかかるだろう。着いてからは休む暇も無いだろうから今のうちに身体を休めておくと良い。」


「ありがとうございます。」



そう言うとアンは背もたれに体重を預け、そして静かに目を閉じて頭を回転させ始めた。



(まさかジェラード伯までご招待されているなんて…お父様は気にしなくて良いと仰るけれどこれはもう婚約者決めの最終段階じゃないの。

まさかここまで早く婚約者をお決めになるつもりだったなんて予想外だわ…。レオン様のご入学まではまだ半年程も猶予があるというのに…。


あぁ駄目よ。この段階まで進んだ時の策はまだ考えていないのに。

でも、今から新しく策を考える時間は無いわ...。

今までに考えてきた策を組み合わせてなんとか凌げるものかしら…。


そうだわ、幸にも不幸にもマリアンヌ様が居らっしゃるのであればあっちの策が使えるかもしれないわ。それからあの策も取り入れてそれから…)




アンもアンでただ引きこもっていたわけではない。


最初の数日こそ落ち込んでいたが、その後は必死に計画を練っていたのである。

脱婚約者計画である。



己の夢の為には王子との結婚は絶対に回避しなければならない

両親には悪いが利用できるものは利用し、捨てられるものはプライドでも何でも捨てさせてもらう。



(…よし!これなら)



少女はこれから起こるであろう出来事を想像し、ニンマリと黒い笑みを浮かべた。


お読み頂きましてありがとうございます。

感想、誤字脱字報告など頂けると嬉しいです。


以下、あとがき兼補足説明




【新規で名前が出た登場人物】

・リチャード

使用人の~と文中に記載しましたが実際には執事なので扱いは上級使用人となります。

・オスカー=ディヴッドソン伯爵

フルネーム出ました。アンの父親です。


父親に対しては二話の様子から三話であれ?と思う方も居られるかと思います。

二話はアン視点の物の捉え方、三話は主に父親視点寄りの物の捉え方をしております。

人に相談することをしない12歳の女の子と、広い視野を持った大人、の違いです。

今後もこのようにそれぞれの登場人物によっての物事の受け取り方の違いを出していこうと考えておりますのでどうぞよろしくお願い致します。



話が変わりますが三話時点ではまだプロローグとなっております。舞台が学園に移れば本編開始となりますのでもう少々お待ち頂ければと思います。

予定では次の次あたりから本編に突入出来る見通しです。


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