告黎
見上げれば木立、見下ろせば田園。それがここから見える景色の全てである。つまり木と田んぼ以外何もない。
時は夕暮れ。空は茜色に染まり、雲は紅く染められている。
鴉の鳴き声が遠くから聞こえてくる。
日が、山の向こうに消えた。
まだ空は黒に塗りつぶされてはいない。
人は今この時を逢魔が時と呼ぶ。
これで、私はこの地において百度目の逢魔が時を迎えた。
そう、時は、満ちたのだ。
これで私の時は閉ざされよう。
これで呪詛はこの地に満ちよう。
この命を対価に支払って、望むはただこの世の終焉。
すなわち今は、世界の黄昏。
嗚呼、ひたりひたりと足音が聞こえてきそうだ。
終極を告げる御使いの足音が。
ここに始めよう、絶望でも暗闇でも、はたまた希望ですらもないただの終焉を。
時は黎明。
世界終焉の黎明。