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第7話

 俺は朱美と一緒に対戦格闘ゲームをプレイしている。戦績は十敗零勝、つまり今の所は完全に負けている。何故だ?俺の方が確実にやる込んでいるのに何故負ける?


「お兄ちゃん、弱いわね。もう少し手加減してあげようか?」


「手加減無用!もう一回だ!」


 実に良い笑みを浮かべて勝ち誇る我が妹分。その微笑みを駆逐してやりたい。


「いいわよ。幾らでも掛かってきなさい」


「ほえ面かくなよ」


 そして、十一敗と負け越しになる。朱美の反射神経はどうやらゲームにも適応されるらしい。彼女はスポーツジムに通っており、しかも学生時代では空手三段の猛者だったそうだ。骨の髄までニートである俺では到底太刀打ちできない。


「お茶とお菓子です。朱美ちゃん、それにしてもよく坊ちゃんと付き合えますね。朱美ちゃんのような女性だったら外で色々としたいことがあるでしょう」


「有り難うございます、澄さん。お兄ちゃんのことは、もう慣れていますから…」


 部屋に尋ねてきた御大と朱美が世間話をする。彼女達の付き合いもまたもう随分と長い。何せBL本を愛する同好の士として絆が深いからだ。


「こんな駄目な坊ちゃんですけど、これからも宜しくお願いしますね」


「はい、どんと任せてください、澄さん」


 全く御大と若御大と言ったところだな。女二人揃うと男は肩身が狭いものである。


「では、失礼しますね。坊ちゃん、たまには朱美ちゃんを外でデートにでも誘ってくださいね」


「デートスポットをアニメイタとスイカブックスとするなら考えてもいいです」


「はいはい、坊ちゃんに期待した私が馬鹿でしたよ。ごゆっくりどうぞ」


 俺にドラマに出るような高尚なデートスポットを期待するのがそもそもの間違いだ。因みにデートの待ち合わせをするならば本屋と決めている。何故なら待ちぼうけになっても立ち読みをして時間が潰せるからだ。


 それからというもの、俺と朱美はテレビゲームをしたり、オセロや将棋などをして遊ぶ。客観的に大人の男女の付き合いではないな。いや、朱美が俺のレベルに合わせて付き合ってくれてるんだろう。


「朱美、無理して俺に付き合う必要は無いぞ。お前も年頃の女性として色々と付き合いがあるだろう」


「私は私のやりたいようにやってるだけよ。それに付き合い方云々でお兄ちゃんに説教される謂われは無いわ」


「それもそうだな。お前は俺とは違って立派に働いてるからな」


 彼女はきちんと働き、自分で稼いだ金で生活してるんだ。働かずに親の金を食いつぶしている俺とは訳が違う。それなのに彼女は親の金を食いつぶしてるだけの俺に付き合ってくれている。三次元の女の癖に有り得ない我慢強さだ。


 それから暫く、朱美と俺は無言でゲームをプレイする。特に気まずい訳でもない。彼女とは言葉を交わさずとも同じ空気を共有できるのだ。例え恋人や伴侶でなくとも。あるいは恋人や伴侶でないからこそなのか?まあ、どうでもいいがな。


「じゃあ、明日仕事があるからここで失礼するわ。またね、お兄ちゃん」


「ああ」


 「またね」か。イヤな期待をさせるような口振りだ。俺は朱美を見送りもせずに生返事をしたままゲームをプレイし続けた。

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