第6話
『きゃああっ!エッチ!』
『ぶほおっ!な、何で…理不尽だ!』
主人公が事故でヒロインのパンツを見て、言い訳する暇もなくどつかれる。まさに王道だ。
「理由ぐらい聞いてやれよ。リアルだと暴力系ヒロインは傷害罪で逮捕だな」
俺はいつも通り更新されたアニメ動画を見ている。最近のアニメはやたらとパンツやオッパイの露出が激しいな。ああも露骨だと逆に萎えてしまうものだ。そういうのはAVだけにしておけ。民放で流すぐらいならエロよりも中身で勝負しろ。だから、最近のアニメは馬鹿にされてしまうんだ。
「ぼっちゃん、朱美ちゃんが来ましたよ」
「はい、わかりました」
ちっ、今良いところだったのに。俺は頭をかきながら朱美を出迎えるために部屋を出る。当然動画はいつでも見れるように一時停止にしてだ。玄関にはジーンズを着こなしたショートカットの長身女性が立って待っていた。むかつくことに俺よりも背が高い女だ。
「おひさっ。相変わらずニートやってるね。お兄ちゃん」
「お前はもう立派な社会人だな。朱美」
島原朱美。とある出版社では売れっ子になってる敏腕女編集者だ。三次元で言えばまあ美人と言える顔立ちをしている。ニュースキャスターでもなれば、確実に視聴率が取れるアイドルとして持て囃されることだろう。だが、俺の食指は一ミリたりとも動くことはない。俺の女神は飽くまで二次元オンリーだ。
「上がってもいい?」
「好きにしろ」
俺は朱美に背を向けて、自分の部屋に向かう。部屋はいつも通り、雑誌やゲームソフトが散らかっている。朱美は俺の部屋に入った途端に頬を膨らませる。
「もう!私が来るってことは予め分かってたでしょ!エロ本とかを堂々と晒してるなんてマジ有り得ないわよ」
「押し入れの中にはギャルゲーのパッケージが一杯になっていて隠す場所が無かったんだ。ギャルゲーのパッケージは無駄にでかいから片づける場所に困る。それに予約限定の抱き枕シーツが…」
「そんなアホな言い訳聞きたくないわ!ったく、普通の女性だったらこれで帰ってしまうところよ」
三次元の女に見栄を張るつもりは欠片も無い。どんなに見栄を張ろうとも俺がニートソースであることには変わりないんだ。
「汚いところだが、まあ座れ。あっ、そこにある雑誌には腰掛けるなよ。特典の箱が挟まれてるからな」
朱美はため息をついて、雑誌を退かし座る。
「本当に駄目ニートライフを突っ走ってるわね。私が良い仕事先を紹介するからいい加減に脱ニートしようよ、お兄ちゃん」
「御厚意はありがたいが、断る。俺のようなニートに紹介するぐらいなら就活で困ってる真面目な学生達を一人でも多く雇用しろ。それが世のため人のためだ」
俺がニートライフを満喫することで就活に励んでいる者達が一人でも多く報われるのなら本望というもの。これぞ正しいニートの在り方だ。
「正論だけど、お兄ちゃんにだけは言われたくないわ…」
朱美は再びため息をつく。とりあえず、御大に用意してもらったBL本でも渡すか。それで少しは機嫌を直してくれるだろう。