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第5話

「ぼっちゃん、朝ご飯出来ましたよ。起きて下さい」


 御大の心地よい濁声が目覚まし時計となって、俺を夢の世界から現実世界へと誘われる。起き上がった俺は部屋に設置されているコンポでオープニングアニメの主題歌と言わんばかりに大音量でアニソンを流す。勿論完全防音設備が整っているから近所にご迷惑をかけることはない。俺はテンポの良いアニソンのリズムに乗って服を着替える。今日も一日まったりとしたニートライフの始まりだ。


 服を着替えて、朝飯が用意されているキッチンへと向かう。おっと、その前に顔を洗ってうがいをしなければ。御大にまた怒られてしまう。


「今日はご飯とお味噌汁とほうれん草です。どうぞ召し上がれ」

 

「いただきます」


 朝の献立は実にヘルシーだ。ご飯は炊き立てだし、味噌汁は煮干しのダシが利いていて風味がある。まさに御大様々である。


「目にクマができていますよ。睡眠時間はどれくらい取っているのですか?」


「二時間です」


 学校に行ってた頃は7時間も8時間も取っていたのにニートになってからは寝る時間が勿体ないと言わんばかりに短縮されてしまった。働くのが負けどころか寝たら負けだと思ってしまうこの頃である。


「あまり羽目を外しすぎると白内障になって目が見えなくなってしまいますよ」


「余り恐いことを言わないでください」


 目の病気はニート、いや、娯楽を生き甲斐とする全て者にとって大敵だ。もし、失明してしまったら俺は間違いなく明日の新聞に首つり自殺の記事を載せてしまうことだろう。そして、神様に出逢って来世でも安心安全のニートライフが満喫できるようにお願いするんだ。


「それよりも十時頃ぐらいに朱美ちゃんが遊びに来るらしいですよ」


「朱美が来るんですか。澄さん、貸してもいいような手頃なBL本を幾つか用意していてください」


 島原朱美。俺の従姉妹の友人であり妹分に当たる女性だ。彼女はニート道を歩む俺とは違い、真っ当な出版社でさる漫画家の担当編集者を務めるやり手らしい。つまり俺よりも社会的地位が遙かに高い。


「朱美ちゃんは坊ちゃんのことを心配していましたよ」


「それは余計なお世話ですね。家族でも無い彼女に心配される謂われはありませんよ」


 家族か親族が心配するのであれば話だけは聞こう。だが、その親族の友人相手の話を聞くつもりは毛頭無い。


「それに朱美ちゃんは坊ちゃんに気があるかも知れませんし」


「澄さん。その話は止めてください。例え、朱美がその気でも俺がその気になることは二百パーセント有り得ませんから」


 ニートとは自己中心的で孤高な存在だ。愛や恋に囚われた瞬間に俺はニートソースでは無くなってしまう。俺のこの身は二次元の女神に捧げているんだ。


「ぼっちゃん、たまには現実に目を向けた方がいいですよ。二次元には無い良さがあると思いますし」


「それは現実世界に適応出来ている人だからこそ言える台詞ですよ。ご馳走様」


 俺はキッチンから去り、歯磨きをして自分の部屋に戻る。朱美が来るのであれば部屋の整理は、別にしなてくもいいな。彼女相手に見栄を張る必要は特に無い。さてと、彼女が来るまで更新された動画でも見るとするか。

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