第4話
俺のニートライフを支える数ある趣味の一つ、それはインターネット通販サイト「ホリゾン」で発売されている商品のレビュー投稿である。
ホリゾンとは通販ができるだけでなく販売された商品について評価を1から5までの星で判定し、具体的に賞品の長所と短所、あるいは感想の文章を投稿し、ユーザー達に紹介することができるのだ。そして、ユーザーは投稿されたレビューを参考にして、ホリゾンで商品を買うか否かを決めていくが出来るのである。
「ぼっちゃん、またいつものが届きましたから部屋の前に置いときますね」
「ありがとう、澄さん」
俺はいつものように御大が部屋のドアの前に置いてくれた箱を破って品物を取り出す。取りだしたものはゲーム機種ブレイボーイ3のゲームソフトであり、ホリゾンでレビュー投稿千件を突破した注目作である。この作品のレビューでは星印が1から5と評価が割れており、糞ゲーだと罵る人がいれば良ゲーだと褒め称える人もいた。所謂賛否両論のゲームだ。
賛否両論のゲームはアクが強い問題作が多い。俺のもう一つの楽しみはそんな問題作のレビューを読み漁って吟味することである。酷評するレビュー、賞賛するレビュー、それらを読み漁り、その中から何が確かな情報であるのかを読みとるのが溜まらなく好きなんだ。それだけで俺のニートライフの一日の大半を潰すことが出来る。
だが、大抵真実を語っているのは酷評レビューの方が多い。というか具体的に語っているのが酷評レビューの方が圧倒的に多いのだ。賞賛レビューは「これぞ神ゲー」や「最高です」なんて安直な一言が多く、具体的に何が良かったのかを記していないから今一信用できない。
そんなギャンブル的要素が強い問題作だが、早速プレイ開始としよう。俺は新作をプレイするときは昼飯を抜きにすることにしている。もちろん御大にはその旨をきちんと伝えている。御大が呆れた目で俺を見て「ほどほどにしてくださいよ」と言ったが、勿論スルー。何故ならばゲームに熱中すると食欲が無くなってしまうからだ。そう、新作をプレイしている最中の俺は言わばラマダンの時期を迎えて修行しているイスラム教徒となるのだ。
昼飯抜きにして寝る時間を惜しんで約一週間プレイした結果、クリアできた。どうやら今回は当たりだった。思わず更新された動画を見忘れるぐらいだ。
だが、クリアした後はとても虚しい。その虚しさを振り切るために俺はシャドウボクシングをする。黙々と拳を振るうことで運動不足の解消にも繋げていく。暫くシャドウボクシングをした後、ホリゾンのサイトを開く。そして、プレイした新作のレビュー投稿だ。評価は5つ星で「これは神ゲーです!」の一言を投稿して終了。
さてと、新作ゲームをやり終えたことだし、見忘れた動画を見るとしよう。俺のニートライフは変わらず平常運転だ。