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第25話

『おのれ、尼居遁にいとん!』


 捨て台詞を吐いてやられる大物妖怪。俺は公園で出逢った子供と協力して、遂に大物妖怪を倒したのだ。


「やったっ!やったぜ!」


「やれやれだな」


 俺は互いに顔を向けて拳を合わせる。死線を潜り抜けたことで俺と名も知らぬ子供とはいつの間にか戦友になっていた。これがゲームを通してのコミュニケーションというやつだ。ゲームこそが世界共通語と言っても過言ではない。


「おじさん、つええな!学校でもおじさんほど強いプレイヤーはいなかったぜ」


「ふっ、それほどでもないさ」


 ゲームにおいて年齢なんぞ関係ない、俺と子供は今や対等だ。


「俺、橋本拓也。おじさんは?」


「ニートソースだ」


尼居斗にいと僧州そうす…変わった名前だな」


 子供改め拓也は疑いもなく俺のことをニートソースという名前だと思っているようだ。俺が余りにもナチュラルに名乗ったから嘘付いてないと思ったのだろう。


 それにしてももうすっかり真夜中だ。そんな中で俺は小学生と二人きり。これで巡回している警察に見つかったら連行されてしまうこと間違い無しだな。だから、そろそろ切り出すか。


「家には帰らないのか?」


 俺の質問に拓也の肩がびくっと震える。よほど触れられたくないことなんだろう。まあ、戦いの場に間に合わず、どの面下げて帰ったらいいのかと途方に暮れてる俺に言えたことではないのだがな。


「そういう僧州そうすこそ、家に帰らないのかよ?」


 やはりそう切り返すか。拓也は俺を“自分と同じ”だと直感で感じ取ったのだろう。俺は苦笑する。


「帰りたくないのさ」


「俺も同じだよ」


 しばらく気まずい沈黙が訪れる。くそっ、朱美とニースパを見つけられずに深夜の公園で子供と御見合うなんて誰得なんだ。まさか三次元でいきなりリアルBLゲーか。俺はホモでもショタコンでもねえぞ。誤解されるのはニートボールだけで間に合ってるんだよ。


「父ちゃんと母ちゃんが喧嘩してるんだ」


 不意打ち上等で切り出しやがった。まさか、この三次元でいきなりディープなイベントにエンカウントしてしまうとはな。三次元もなかなか侮り難しといったところか。


「そうか」


 同じニート仲間であるニートボール相手ならともかくいきなり出逢った赤の他人に適切なアドバイスなんか出来るはずもない。だから、俺はただ聞くだけだ。


「それで俺にいっつも言ってくるんだ。『拓也はお父さんとお母さん、どっちに付いていきたい?』って。そんなの分かるわけねえよ」


 おいおい、リアルな家庭事情だな。ここで俺が下手なアドバイスをしたら拓也の人生が決まってしまうかもしれん。さて、どうしたものか。

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