第24話
一応少しずつ書いてます
俺は今自転車を全力でこいで朱美とニースパがいるだろう高級レストランに向かって爆走している。ヘッドフォンには青春ドラマでここ一番に流れるだろう挿入歌が大音量で響いていた。信じていた親友から恋人を奪われ、結婚式を開催しようとしているところを殴り込みにいこうと奔走しているときに流れていた挿入歌だ。
「御大も粋な選曲をしてくれるな」
今の俺にはこれ以上に無い程にどんぴしゃの曲だ。まるで青春ドラマの主人公にもでなったかのような錯覚に陥ってくるぜ。だが、すでに挿入歌は何度もリピートして、それそろ聞き飽きてきた。
「高級レストランとは何処だ!」
そういえば、ニースパから何処のレストランを取っているのかを聞いてなかった。ミートスパゲッティが大好きなニースパのことだ、イタリア料理が出るレストランを取っていることは少なくとも分かるのだが、高級レストランだからイタリア料理ぐらいは常備しているのだろうから的を絞れんな。
「ちっ」
俺は思わず舌打ちする。やはり三次元は二次元のように劇的に展開が運ばないらしい。軽い失望感を覚える。所詮はニート、ここで絶妙なタイミングで奇抜なアイディアが湧くわけでもないか。ただ全力で自転車を漕ぐのみだ。
あれから俺は何件もレストランを回る。ニートとは言え、上流家庭の嫡男である俺はカードの一枚を見せつければ、高級レストランに入ることは容易い。だが、一向に朱美とニースパがいるレストランにビンゴすることはなかった。そして…。
「申し訳有りません、そのお二方は既に出て行かれました」
「お忙しいところを済みません」
「いえ、貴方のお父上には世話になっています」
「よろしく伝えておきます。では…」
終わった。とうとう間に合わなかった。俺はレストランから出て、自転車を押してとぼとぼと歩道を歩く。ヘッドフォンには哀愁漂う挿入歌が流れてくる。これがリアルというものなのか、夕日が目に染みてくるぜ。もう夜なのだが…。
宛もなく歩いていたら公園へと辿り着く。子供が一人無邪気に球遊び、ではなく携帯ゲームで遊んでいた。真夜中なのに門限は大丈夫なのか?あるいは今の子供にはこれが普通なのか?俺もまたベンチに座って携帯ゲームを起動させる。ゲーム名は「妖怪狩人4」だ。舞台はなんちゃって平安時代で活躍する陰陽師が帝の命令で京に巣くう妖怪共を狩りまくるゲームである。
「はぁ、虚しいけど、楽しい」
俺はただ無心に妖怪をゲームの中で狩りまくっていく。これが俺の生き方だ。今頃、朱美とニースパはリアルでイチャラブしているのだろうか。だが、俺には愛すべき二次元がある。
「あっ、おじちゃん。それって妖怪狩人4だよね」
「あっ、そうだが…」
俺は声を掛けてきた子供に顔を向けることもなく返事する。もうどうにでもなれだ。
「凄い装備で戦ってるな。少し分けてくれよ」
初対面だというのに子供らしい図々しさだ。同じ趣味を持っているから同志であると思ってるのだろうな。顔を向けると如何にもガキ大将といった小生意気な顔つきの少年だった。
「これから大物妖怪を狩る。それに協力してくれたら分けてやるぞ」
「ほんとか!だったら手伝ってやるぞ!」
生意気なガキだが、嫌いではない。俺は朱美とニースパを忘れるように子供とゲームを楽しむことにした。




