第21話
俺ことニートソースと宿敵ニートスパゲッティーは朱美を賭けて勝負することになり、互いの健闘を祈って握手をする。勝っても負けても恨みっこ無しだ。
「ニートソース、最後に一つ言いたいことがある」
「何だ?今更やっぱり割り勘にしようと言いたいのか?生憎今は…」
「そんなケチなことを言うか!俺が言いたいことはな、朱美さんとの待ち合わせ場所は本屋以外にしろっってことだ!」
「何故だ?朱美から了解を得ているぞ。さすがにエロ本を置いている場所はNGなったがな」
「当たり前だ!デートの待ち合わせ場所をエロ本置き場にするなんて不謹慎にも程があるわ!」
結局ニースパから待ち合わせ場所は定番の公園とすることを無理矢理了承させられる羽目になってしまった。因縁の決着の場が本屋では余りにも締まらなさすぎるという理由でだ。その後、朱美とのデートコースを決めるために歩き回ったが、何故かやる気が出てこず、何の成果も無く帰宅した。
「澄さん、ただいま」
「お帰りなさい、坊ちゃん。朱美ちゃんとのデートコースは決まりましたか?」
御大はちゃぶ台に肘を付けてスルメを銜えながらサスペンスドラマの再放送を見ていた。サスペンスはちょうどクライマックスで犯人を崖に追い詰めているシーンだ。
「決まっていません。デートコースは朱美と話し合いながら決めようと思います」
俺の言葉に御大は顔をしかめ、スルメを噛みちぎる。これは説教の始まりだろうか。
「悪い言い方をすれば行き当たりばったりと言ったところですね」
「返す言葉もありません」
「けど、坊ちゃんには返ってそれがいいかもしれませんね。普段の話題がギャルゲーとアニメしか無いわけですし、何処で過ごすかを話し合えば良い雰囲気作りになるだろうと思います」
確かに無職で社会に揉まれていない俺では話題が少なく、アニメやゲームの話だけで終わってしまう。それではデートというよりはいつもの友達同士の世間話だ。デートの場所について話し合いをすれば良い雰囲気作りになるかもしれないだろう。
「そう言ってくれると助かります。それより夕食は何でしょうか?」
とりあえず飯でも食って気分転換しよう。考えるのはエネルギー補給をしてからでも遅くはない。
「坊ちゃんが以前言っていた二種類のインスタントラーメンのスープの素と麺を互い違いにすると言ったあれですよ」
そう言えば今晩の夕食は二種類のインスタントラーメンの麺とスープの素を入れ替えて食するということだった。
「そうでしたね」
俺は以前からインスタントラーメンに関してスープは美味しいのに麺が不味いことや麺が上手いのにスープが好みではない等と不満を持っていた。そんなとき俺は答を導き出した。だったらそれぞれの美味い物だけを取って自分好みに組み合わせればいい。美味い麺と美味いスープをそれぞれから取りだして組み合わせば俺好みのインスタントラーメンの完成だ。
「買ってきたインスタント麺は何ですか?」
「らーウメーとラーメンの豚です」
よし、俺の俺による俺のための最高のインスタント麺を仕上げてやる。残った素材はニートボールにご馳走してやるとしよう。そういうわけで早速実行だ。




